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言葉は魔法のように

褒められたことがある最初の記憶は?と聞かれたとき、何て答えるだろうか。

薄暗いイタリアンで、友人の1人がそんな話を始めた。はて、褒められたことなんてあっただろうかと思いを巡らす。もう1人の友人がスラスラ答え、順番は私に回ってきた。とくに悪ガキだったわけでもないけれど、褒められた最初の記憶になかなかたどり着けないものだ。寂しかったり、悲しかったりした思い出がつい浮かんでしまう。


遡ってようやくたどり着いた回答は、「押し入れに入れられても泣かずに笑ってる」だった。

兄がふざけて私を押し入れに入れても、暗闇を怖がることなくにこにこしていたらしい。それは褒められていたのか、驚かれていたのか、なんだか少しあいまいだけれど、"感心してくれた"ことに対してはそれが一番古い記憶のような気がする。

褒められた思い出を聞いた理由は、それが今の自分にとって、芯となるものになっているという話を聞いたからだそう。私のエピソードを聞いた2人は「当たっていると思う」なんて同意をしていた。しかしぽつりと友人が言った言葉に、しばらく考え込んでしまった。

「笑っていたのは本心なのか、それとも泣かずに頑張っていたのか、どっちなんだろうね」

褒められた思い出なのか、それとも「泣いてはいけない」と頑張ることを決めた思い出なのか、もう思い出せない。けれどその思い出が、確かに今の自分を作っている気がする。泣かなくてえらい、にこにこしてえらい。

言葉は、魔法のように私たちを変える。


去年の毎日note


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