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苦行の後に見えたもの-ルンビニのお寺修行で感じたこと②-

ルンビニお寺修行の二日目は朝3:30から始まった。

起きてすぐに本堂の掃除を行い、4:30~5:30までは夕方のお勤めと同様に「南無妙法蓮華経」を唱えながら大太鼓をたたく。その後30分間お経を詠んだ後、一番不安に感じていた、4時間の行脚が始まった。

6:00頃日本寺を出発。最初の目的地は大きな菩提樹のある聖園だ。うちわ太鼓を叩きながら僧侶のビシュヌさんと「南無妙法蓮華経」を交互に唱え続ける。

出発して1時間ほどたった頃、「みほさんはラッキーですね」とビシュヌさんが話しかけてきた。今日は曇りで、普段よりも暑さが無いという。確かにこの調子なら、あと3時間は歩くのも大丈夫かもしれないと安心し、聖園を後にした。

7時半頃村に入ると、外にはすでに人が歩いていて、道のわきには子どもたちが手を合わせて私たちを見つめていた。

「子どもたちは毎朝、太鼓をたたくのを楽しみにしているんです。」
説明をしてくれた後ビシュヌさんは子供たちの前に立ち、南無妙法蓮華経を唱えながら3回お辞儀をし、うちわ太鼓を子どもに持たせてあげた。

子どもたちはお経を大声で唱え、元気よく太鼓をたたく。
3回唱えた後、お辞儀をしてうちわ太鼓をビシュヌさんに戻した。

そうしてまた歩き出すと、すぐ先には別の子どもが手を合わせて待っている。

30人位と接しただろうか、村を出るころには朝9時近くなり、曇りがちだった空が嘘のように晴れてきた。

晴天のルンビニはまさに天然サウナだ。汗が絶え間なく流れだし、首に巻いてた手ぬぐいもびっしょりで使い物にならなくなってしまった。一歩足を踏みだすことに集中しないと、歩みを続けることさえもできない。

暑さと疲れのせいか、あんなに繰り返し言い続けたお経でさえ、「南無妙…の次はなんだっけ…。」なんてわからなくなってしまった程。あと少し、あと少しと言い聞かせ10時にお寺へ戻ってきた時は、本堂にあがる階段で思わず崩れ落ち、一歩も動けなくなった。

ビシュヌさんはというと、「この後はストゥーパを回ります。みほさんは無理しないで」と言って残りのお勤めに向かっていってしまった。目を閉じて階段に横たわっていると、小さくうちわ太鼓の音が聞こえる。本当に、信じるって偉大だ。

簡単な朝食をとった後、そのまま床で眠ってしまい、起こされた時はお昼ご飯の準備ができていた。

昼食後、ビシュヌさんは日本寺について書いたレポートを添削してもらいに、大学へ行くという。私はというと、暑さで出歩く気にもならず、お寺でゆっくりお留守番をすることにした。

井戸で布団のシーツや自分の洋服を洗っていると、たまに吹いてくる風や井戸水の冷たさが心地よく、妙な安心感があった。

このまま、ここを離れるのは寂しいな。
あんなに辛かったはずなのに、もう一泊してお勤めができたらと考えてしまう。

それは、お勤めの後に見える景色がなんだかとてもシンプルで、不思議と穏やかな気持ちが生まれて来たからだった。もちろん、見ている景色自体は一緒なのだけれど、そこから感じ取れるものが前とは少し違う。本当は見えなくても問題ないような、余計なものがなくなっているような気がした。

結局私は夕方のお勤めを30分程行った後、ゲストハウスの人に迎えに来てもらいお寺を後にした。

ストゥーパからみた夕焼け、夜のホタル、修行中の照りつける日差し、子どもたちの声、木陰に座って過ごした午後のひととき。日本の生活とは全く違った世界があって、今となっては夢の中の出来事のようになってしまったルンビニでのお寺修行。

またいつか、戻ってこよう。お寺で過ごした時間を振り返り、私はそう決意した。

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