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水曜日の本棚#24 あのこは貴族

「パリ行ったことないの」や「ここは退屈迎えに来て」の山内マリコさん。この本はcakesに連載されていたときにひろい読みをして、うわ...と思って、そのまま少し距離を置いていた。手に取ったのは、文庫本になってから。

少し距離を置いていた、といったのは、おもしろかったからだ。それと、なんだかヒリヒリしたから。おそらく当時、たまたま−本当になぜかたまたま−この本に出てくる「東京の貴族」の世界を垣間見る機会があったわたしは、読み進めることで自分がさらに傷つく気がした。

わかっているんですよ、自分とは違う世界に住むひとたちがいること。でも、「わかっている」のと「実際に垣間見る」のとではダメージが違う。はっきり言って、傷つく。実体験でその種のダメージをくらっていたわたしだが、それをすっかり忘れるくらいに立ち直ったいま、ただ単純に物語の世界を楽しめた。

東京の「貴族」華子と、地方出身で自分の才覚で生き抜いてきた美紀。ある男を巡って交差する2人なのだけど、女同士の対立にしないのがさすがの山内さん。最後のほう、登場人物たちが語る「分断させられている」女の話はフェミニズムそのままだなぁと納得しながら読んだ。

いまは、家を掃除していたらたまたま買って忘れていた山内さんの他の本(「選んだ孤独はいい孤独」)を読み始めたところ。外出を控えているいま、おもしろい本が身の回りのあるって本当にしあわせ!

#読書 #本 #書評 #山内マリコ  


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