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不完全な音楽

いつもいいセンスだなぁと思う音楽を、ちょっとした動画の後ろに流している友人がいる。 その日も彼女の動画にはいい感じの曲が流れていた。
思いがけなく指が動いて、「あなたの曲はいつも素敵。どこで見つけるのかな」と聞いてみたら、彼女がいつも曲を探しているアプリケーションを教えてくれた。

彼女の選曲は、なんだかわたしの心の琴線に触れる。
聴きながらそれはなぜなのか、わたしは何が好きなのか、そんなことを考えた。
どの曲も誰かに聞いてもらおうとか、有名になろうとか、
そういうふうに作られたものではない気がした。
それぞれの内側にある創造のカケラのようなもの。
湧き出るなにかを必死で集めたような不完全な曲たち。
だからこそ独特の美しさが宿っていた。
そこには苦しみも悲しみもある。
わからない何かに、そんなスパイスをまぶしながら壊れないように。
それは彼女の作るアートの中にも見えるし、わたしの中にもある。
わたし達はこういう曲から同じ何かを感じていると思った。

前に進むしかないね。そこからしか生まれない。
何も話してないのに、わたし達は短いテキストで頷きあった。

完璧ではない空間。
不完全ななにか。
わたし達が深呼吸できるのはそんな場所だ。
見えない、言葉にできないものが、確かにグリットを作っている。

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