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トランスジェンダーの「リード」と「パス度」のこと

元夫が性別移行を始めてまだ間もない頃の話です。
元夫が自分と同じMtFの人たちとSNSでよくしていた話題に「女性装で外出した時にリードされないか、パス度は上がっているか」がありました。

(リード:元の性別がバレること。MtFの場合、第三者から女装をしている男性だと思われること。
パス度:MtFの場合、第三者から女性として認識されること

前回のnoteで元夫のことを「驚異の鈍感力の持ち主」と書きましたが、そんな元夫でも初めてフルメイクにスカート姿で外出した時は、ものすごく緊張したようです。周りの視線が怖くて、日傘を深くさして、顔を隠すようにして歩いたそう。

でもそんなビクビクした姿も最初の1、2回だけでした。その後は堂々としたもので、お店の店員さんにも化粧品カウンターのBAさんにもどんどん話しかけるほど。SNSにもよく「今日も女性装で出掛けたけど、特に誰にも見られなかった、リードされなかったよー」と報告していました。

私は「…ほんとに?」と思っていました。まだ性別移行を始めて間もない、ということは、どう見ても男性にしかまだ見えない時期です。メイクまでは百歩譲るとしても、スカート姿はかなり目立つのでは?でも私はこの頃、女性装の元夫と出掛けるのを避けていたため、実際のところが分かりません。

ですが、その後何回か女性装の元夫と一緒に出掛けなければならない用事があり、実態が分かることとなりました。
いやー、周りの人の視線を感じること感じること。結構な周りの人たちが元夫を見ています。その周りの人と私は目が合いますが、元夫は全然気にしていないようです。というか、本気でその視線に気づいていないようでした。

「そうなのよ、この人は以前からこうだったよな…」
元夫が男性だった時代から「知ってる人とすれ違っても全く気づかない」「私が道端で元夫を呼んでも気づかない。なので大声で何度も呼び、道行く人全員が振り向いてるのに本人だけ気づかない」
といったことは日常茶飯事でした。周りが見えてないのか、耳に入ってこないのか、ずっと謎でした。

ですが今思い返すと「驚異の鈍感力で周りがあまり見えていない」のも本人の中の一面、
同時に「つらい思いを自分の中で麻痺させて現実を見ないようにしているうちに、本人の中で現実が歪んでいってしまった」のも本人の中の一面。
人って単純ではないよなと今では感じています。

他のMtFさんの場合でも、私から見て「この人はもうかなり女性らしく見えるな」と感じる人が「お店に入ったら1人の人にジロジロ見られた、きっとリードされたんだ」と落ち込んでることもあれば、
「ちょっとまだまだ男性ぽいな」と感じる人が「自分はもう女性だから」と堂々と女性専用車両に乗っていたりもしていました。

なのでよくこのトランス界隈では「リードされる」や「パス度」といった言葉が使われることもあるようですが、これは主観的な視点と客観的な視点で見た実態は、必ずしも同じじゃないよなぁと思ってます。

このnoteは、トランスジェンダーを家族に持つ方とコンタクトが取れる場をつくりたくて始めました。
もしご縁があってこのnoteを見てくださり、悩んでいるけど周りに話せる人がいないよ、という方がいらっしゃいましたら、良かったらコメントください🥰
私の経験から、誰かに話を聞いてもらうだけでも、だいぶ気持ちが軽くなることもあります。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




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