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1958年東京都中央区築地生まれ。大学卒業後は32年間会社員。脱サラして2014年6月…

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1958年東京都中央区築地生まれ。大学卒業後は32年間会社員。脱サラして2014年6月より杉並区高円寺でオールジャンルの音楽ライブ、映画会、トークイベントなどの店を自営。2020年10月に新型コロナ感染拡大で継続断念し閉店して現在に至る。

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123天文台通りの下町翁 雑記帳    奈倉 有里 著「夕暮れに夜明けの歌を~文学を探しにロシアに行く~」

気鋭のロシア文学翻訳家のペテルブルグ、モスクワ留学時代の濃密に文学、詩、教師、学生たちにどっぷりと浸った日々がつづられている。なんとも貧しくとも、濃密でみずみずしい学生生活だったかが浮かびあがる。 たった一人の東洋からの留学生としての経験が細部に渡り、書き留められている。きめ細やかな心模様、そして何よりもロシア文学や関連する資料を浴びている様子と情熱が全編に貫かれている。奈倉有里は、ロシア文学を読み込み、心に染み込ませ、発信するための申し子だと言って差し支えないだろう。 授業

    • 123天文台通りの下町翁 雑記帳~ 鶴見 済 著「人間関係を半分降りる」

      人間だれしも浅くも深くも落ち込む。不運や不幸は時には生まれた時から運命づけられてしまっていることもあるし、自分には無関係と思っていたら出くわしてしまうことがある。鶴見氏が書いているように、すべての悩みは人間関係につながっている。家族、友人、職場、学校、地域社会、あらゆる場所で、ありのままの自分でいられることは至難の技だ。 そうであるからこそ、人からどう思われるかを基準にせず、自分をからめとっている場所から少し離れてみる、ときには逃げるのもありとする気持ちを持とうと提案されて

      • 123天文台通りの下町翁 雑記帳~平野啓一郎「死刑について」を読む~

        元は死刑制度は積極的に必要とは思わないまでも、被害者とその家族の心情を思えばやむ無しと考えていた平野が、その後、小説家として作品を執筆すること、熟慮を重ねるうちに、死刑廃止派に至るようになる。そこに至る思考の過程が、大阪弁護士会主催の講演記録をもとに、日弁連「死刑廃止の実現を考える日2021」講演時のコメント等を加えて再構成した内容となってこの本では展開される。 被害者が尊重され、どう救済していけるか?人間に対する優しさという大切な価値観が社会に浸透していき、孤立、困窮した

        • 123 天文台通りの下町翁 雑記帳~ペルー映画 「マタインディオス、聖なる村」(2018年・作)~

          ペルーのシネ・レヒオナル(地域映画)と呼ばれる首都リマなどではなく、地方の町村を舞台にした映画作品。司祭役のプロ役者1名を除いて、監督2名のうちの一人の故郷、リマから南西に離れた山村のワンガスカル村に暮らす親族など村人たちが登場しているのだそうだ。 スペイン、ポルトガルによる先住民の植民地化の歴史や、それ以前の社会、文化に関心を持ち続けてきた小生でも理解が容易でない。さすがは寓話、暗喩、神話、宗教の混在、混沌世界が魅力であるラテン・アメリカ!と感じさせるモノクロがベースの一筋

        123天文台通りの下町翁 雑記帳    奈倉 有里 著「夕暮れに夜明けの歌を~文学を探しにロシアに行く~」

        • 123天文台通りの下町翁 雑記帳~ 鶴見 済 著「人間関係を半分降りる」

        • 123天文台通りの下町翁 雑記帳~平野啓一郎「死刑について」を読む~

        • 123 天文台通りの下町翁 雑記帳~ペルー映画 「マタインディオス、聖なる村」(2018年・作)~

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          123天文台通りの下町翁 雑記帳~映画「アンデス、ふたりぼっち(ペルー、オスカル・カタコラ監督、2017年作品)~

          アンデス山脈ペルー、ボリビアと境を接する5,000メートル級の山岳高地で暮らす二人の老いた夫婦の日常を撮り続けた劇映画。全編が千年言語と呼ばれるスペイン植民化前から生きる先住民の言葉アイマラ語でやりとりされる。主役の二人、夫役の老人が2021年11月に今回の作品につづく2作目の長編映画撮影中に34歳で夭逝してしまったオスカル・カタコラ監督の母方の祖父。妻役の老婆は友人の紹介で演じている。二人とも半年ほど演技指導を受けて撮影に入ったという。とても演技とは思えない自然な掛け合いと

          123天文台通りの下町翁 雑記帳~映画「アンデス、ふたりぼっち(ペルー、オスカル・カタコラ監督、2017年作品)~

          123天文台通りの下町翁 雑記帳 ~落合恵子・著「明るい覚悟 -こんな時代に-」

          文化放送の深夜放送「セイヤング」のパーソナリティだった落合恵子。当時は"レモンちゃん"と呼ばれ爽やかな声と容姿、落ち着いた話のお姉さんということで中高生時代、特に受験勉強に飽きて横になり、そのまま寝入ってしまう前に耳を傾けていた記憶が残っている。その後の彼女の作家としての執筆、絵本の店クレヨンハウス創業、実母の介護、そして反核や平和についての動きなどを横目にしつつも、日々の生活に追われて数十年。 会員になっている高麗博物館の設立40周年記念行事の講演で、じかにお話を聴き、サイ

          123天文台通りの下町翁 雑記帳 ~落合恵子・著「明るい覚悟 -こんな時代に-」

          123天文台通りの下町翁 雑記帳~ブレイディみかこ著「ヨーロッパ・コーリング・リターンズ 社会・政治時評クロニクル 2014-2021」~

          英国イングランドのブライトンという町に在住の保育士&ライター/コラムニストの英国社会、政治についての新型コロナ感染拡大した2021年までの自由で闊達な7年半に渡るコラムをまとめた一冊。文庫とは言え500ページ近い分量を読むのは一気にはできないが、一編ごとに、反緊縮・人々への積極財政の必要性、かつては"ゆりかごから墓場まで"と呼ばれた社会厚生システムが保守党、とりわけサッチャー以降の新自由主義政策で瓦解し貧富が拡大したか、Brexitに至る英国内の揺らぎ、移民政策、労働党の右往

          123天文台通りの下町翁 雑記帳~ブレイディみかこ著「ヨーロッパ・コーリング・リターンズ 社会・政治時評クロニクル 2014-2021」~

          123天文台通りの下町翁 雑記帳~ラナ・ゴゴベリゼ監督 映画「金の糸」(2019年)

          1968年に開館し、今年7月末には54年の幕を下ろし閉館となる神田神保町・岩波ホールでジョージアの女性映画監督の劇映画作品を鑑賞。ウクライナへのロシア軍侵攻、戦争をきっかけに、にわかに旧ソ連を構成していた国々の民族、歴史、文化に目が向き、カザフスタンが舞台の「スターリンへの贈り物」を江古田のギャラリー古藤で見た後、この作品を鑑賞。舞台はアジア、中近東、ヨーロッパをつなぎ交わる地域、ジョージアの首都トビリシ。町自体が、舞台劇のセットそのものと見紛うほどの重厚さだ。その町で暮らす

          123天文台通りの下町翁 雑記帳~ラナ・ゴゴベリゼ監督 映画「金の糸」(2019年)

          123天文台通りの下町翁 雑記帳~映画「白い牛のバラッド」(監督: ベタシュ・サナイハ&マリヤム・モガッダム)

          イランの首都テヘランが舞台。一度だけ、会社員時代、1989年の5月半ばから6月初めにかけてテヘランで医療機器関係展示会に出張に出かけたことがある。イスラム革命を指導したホメイニ師が6月3日に亡くなり、国挙げて喪に服すということで展示会が延期となって、宿泊していたホテル・アザディ(イスラム革命前のパフラヴィー皇帝時代は米資本ハイアットホテルだった)で待機の形となっていた。そんなホテルの外壁に”Down with USA" の大きなスローガンが掲げられているのが強い印象に残ってい

          123天文台通りの下町翁 雑記帳~映画「白い牛のバラッド」(監督: ベタシュ・サナイハ&マリヤム・モガッダム)

          123天文台通りの下町翁 雑記帳 長坂道子・著「難民と生きる」を読んで考える日本に暮らす私の道

          混雑した場でベビーカーを押す女性を「迷惑」と捉える社会=日本と、見ず知らずの難民を自宅に迎え入れることを厭わない社会=ドイツ、この大きな違いは何なのか?そんな素朴な疑問を考えるため、欧州在住の長い著者、長坂さんが2015年以降いっきょに中東での戦火から逃れて欧州に押し寄せた難民の大波などに、ドイツの市民が個々にどう応じ、何を考えたのか、具体的な聴き取りを紹介した一冊。連邦制をとるドイツゆえ、州や地域によって難民受け入れの制度が違ったり、個人個人の難民に対する思いや関わりかたも

          123天文台通りの下町翁 雑記帳 長坂道子・著「難民と生きる」を読んで考える日本に暮らす私の道

          123天文台通りの下町翁 雑記帳~大山勝男・著「さっちゃんの診察器       -医師・矢島祥子-」読後記

          大阪市西成区の診療所で釜ヶ崎で一貫して町に暮らす厳しい生活環境や健康状態にある人々のために、献身的に医療活動を続けていた”さっちゃん”先生こと矢島祥子医師。2009年11月19日の午前1時20分に木津川の千本松船場の水中で遺体となって発見されるまでのわずか34年の人生の濃くも短い軌跡を追った内容。と同時に、ご両親お二人とも医師、祥子さんの兄弟3人のご家族と他殺死としか思えない彼女の死の真相を現在も求め続けている。既に現時点で13年以上も経っているのに、当所は自殺と片付けていた

          123天文台通りの下町翁 雑記帳~大山勝男・著「さっちゃんの診察器       -医師・矢島祥子-」読後記

          123天文台通りの下町翁 雑記帳~ 俳優 瀧内公美の魅力~

          渋谷の映画館での春本雄二郎・監督「由宇子の天秤」予告編を見て、主役・瀧内公美の目力に惹かれ、公開後その本編も2度見た。それから彼女の主演、脇役含めて過去の出演作品を見漁る。見ていくうちに、ここまで表情が変えられるものか!とその役者魂というのか、演技力にたまげる。デビューした出演作「グレイトフル・デッド」(内田英治・監督)での孤独な人を観察することに悦びを感じる若い女性役、映画前半で見せた孤独っちを見つけた時の嬉しそうな表情は、相当に脚本を読み込んで役に成りきらないと作れないも

          123天文台通りの下町翁 雑記帳~ 俳優 瀧内公美の魅力~

          123天文台通りの下町翁 雑記帳 ~大墻敦・監督 ドキュメンタリー映画「スズさん~昭和の家事と家族の物語」

          大田区南久が原にある「昭和のくらし博物館」(http://www.showakurashi.com)は今や登録有形文化財になっていて公開されているが、ここの館長・小泉和子さんが家族で暮らした家であった。彼女のお母様、スズさん(1910年〈明治43年〉~2001年〈平成12年〉享年91歳)が一家を支えた家である。映画の軸になるのはスズさんと一家が太平洋戦争時の米軍による1945年5月29日の横浜大空襲で翻弄されながら生きていく姿と、東京市長後の東京都庁で建築技師だったスズさんの

          123天文台通りの下町翁 雑記帳 ~大墻敦・監督 ドキュメンタリー映画「スズさん~昭和の家事と家族の物語」

          123天文台通りの下町翁 雑記帳 ~平野啓一郎 小説「本心」~

          123天文台通りの下町翁 雑記帳 ~平野啓一郎 小説「本心」~

          123天文台通りの下町翁 雑記帳~納豆のたたり~

          いつから納豆をうまい❗と思って食べるようになっただろうか? 小学生低学年の日曜朝の食卓、卓袱台からが濃厚な線だ。まだ50年以上前の小学校には週休2日制は導入されておらず、のんびり寝坊して朝飯を食べられるのは日曜日の朝だけ。その朝食で出た納豆を、いきなりネバネバや匂いを厭わずに最初から抵抗感なく、ご飯にかけて食べて、旨いものと自然に受け入れてから一貫して食べ続けている気がする。 客人がいて、そのお裾分けで食べた出前の鰻重は今でこそ、たまにしか食べられないご馳走、好物だが、子ど

          123天文台通りの下町翁 雑記帳~納豆のたたり~

          123天文台通りの下町翁 雑記帳~美しい蛾の観賞~

          自宅近く最寄り駅に向かって歩いていたら、果樹園の近くを通りすがっと際に前を歩いていたご婦人二人が立ち止まって「あら見てご覧なさい。こんな綺麗な蛾がいるわよ」と熱心に見とれていた。 果樹園のネットに掴まって佇む緑色の蛾はSNSで友人に教えてもらったらヤママユガの一種、オオミズアオと呼ばれる蛾のようだ。成虫になったらわずか2週間の短命らしい。身近にこんな希少な昆虫を目にできるなんて、武蔵野に暮らす小さな喜びをまた感じた一時だった。

          123天文台通りの下町翁 雑記帳~美しい蛾の観賞~