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記者発表会の極意

地域が元気になるために「舞台をつくる」

地方のPRに注力して35年。これまで多くの自治体でシティプロモーションをお手伝いしてきました。
なかでも今、改めて「舞台をつくる」仕掛けが、地域活性化に欠かせないと感じています。

特に、都心で開催する記者発表会は効果的といえるでしょう。
この場にメディアだけでなく、流通大手のバイヤーや旅行社を招待すると、地域ビジネスに新たな販路を拓くことも可能です。

かつて人気だった「世界に輝く静岡市」東京記者発表会
100人を超えるメディアとバイヤーが集まり、東京に太い販路を拓いた事業者も現れた。

自治体主催の記者発表会は、2020年、突然のコロナ禍で中止を余儀なくされ、その後もしばらく開催されることはありませんでした。
しかし、コロナ禍が一段落した今、少しずつ復活しています。

ただ一方で、企業マーケティングに詳しい方々から「DX時代に記者発表会なんて古い」「ネットでリーズナブルに情報発信できるのだから、記者発表会など予算の無駄遣いだ」などと指摘されて、事業自体をスクラップする自治体も少なくありません。

しかし、地域が活性化するプロセスを分析する限り、都心での記者発表会は有効と考えざるを得ません。

今年度、東京で開催された「古都奈良の文化財」世界遺産登録25周年記念事業 記者発表会
歴史深い社寺のトップと奈良市長がみずから登壇し、100名を超えるメディアへ奈良をPRした。

なぜなら、地域の活性化には、多様な価値観を持つ地域の人々がそれぞれ、「みずから動く」「みずから頑張る」といったポジティヴな意識を持つことが欠かせないからです。
記者発表会は、そんな地域の人々に、最高の舞台を提供することができるのです。

企業マーケティングとシティプロモーションは異なる。

最近、企業マーケティングの考え方を取り入れる自治体が増えました。もちろん民間の考え方を生かすことはとても重要です。
しかし、シティプロモーションにおいては、根本的に異なる部分があることを認識しなければなりません。

特に、企業マーケティングに欠かせないビジョンとターゲットの考え方を地域にそのまま導入すると、少し困ったことになるかもしれません。

企業マーケティングでは、まずビジョンを社内で共有し、利益を最大化させる戦略をたてます。
そのためにターゲットを明確に定めて、いかにアプローチするかを具体化させ、PDCAを繰り返しながら実践していきます。

しかし、地域には多様な人々が共生しているので、どんなに首長が立派なビジョンを唱えても、全員がそれに向かって頑張ることは、現実的にあり得ません。

地域では人々がみずから「頑張ろう」と思えるための環境づくりと、みずから輝くチャンスが求められるのです。

よって、自治体が記者発表会でチャンスをつくることは、地域活性化を促すことに繋がるのです。

地方で頑張っている人々に光を当てる。

また、地方で頑張っている人々の大半は中小企業で働いていることも忘れてはなりません。

日本経済は常に大企業中心に語られますが、日本企業の99.7%は中小企業であり、地方は中小企業ばかりと言っても過言ではありません。

そして常に「注目されない」「頑張っていることに光が当たらない」と悩んでいます。
そんな中、都心の記者発表会に登壇できるチャンスをつくると、都心の大メディアに自分の仕事を発表する実感を得られるため、地域の人々にとって頑張る目標となり、地域経済が発展する布石にもなるのです。

考え方は、祭りと同じ

実は、このような地域活性化の手法は、古えの昔から行われてきました。
その代表が、地域の祭りです。
しかも災害など地域が疲弊することが起こると、祭りをつくって、人々がみずから動く機会をつくって地域全体を盛り上げることが常でした。

阪神淡路大震災からの復興のために始まった、兵庫県西宮市「門戸厄神」の「であい市」
地域に親しまれる門戸厄神の境内で、人々は笑顔を取り戻した。

頑張る目標ができると、人はみずから輝けるものです。地域活性化には、この視点が何より必要だと、私は思います。

「自治体が企業の支援をしてはならない」と考える人もいるでしょう。
しかし時代は変わりました。
今は、「新しい資本主義」に向けて、皆で日本経済を盛り上げなりません。
「貯蓄から投資へ」の流れを地域に向けることも必要になるでしょう。

地方PR機構主催の「ビジネス記者発表会」
地方で頑張る人々に光をあてる機会を、定期的につくっています。
地方PR機構 https://lpr-m.jp/

コロナ禍に社会は一変しました。
その変化を正確につかみ、タイミングを逃さず情報を伝える新しい手法は、必ず使えるようにならねば、取り残されてしまいます。

しかし、地域の主人公が人であることを忘れてはなりません。
また、人がみずから頑張ろうと思える環境づくりは、人の心を無視して語ることはできません。
いつの時代も温故知新は必要なのです。


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