サムネ5

楽曲コンペ:勝てるコードの考え 〜その2〜

 経験、実績のあるクリエイターは楽曲制作において「どのセンス(コード、メロ)を選択するか、発注の意図は何か?」という部分のみのセレクションになるが 新人は制作するコードやメロがそもそもベーシックなラインに到達していない事が多々ある。

ここで言うベーシックなラインとは教則本やネット上によくある音楽理論的なものでなく感性、楽曲全体のストーリー構成というニュアンスが近い。

良くある5度の音がムーブしたAメロの展開で最初の4小節は5度の音だけムーブするのだけど、ここの違和感を完全に解消するための解決は残りの4小節は当然目一杯使う。残り2小節だけで解決させて、残りの2小節で別展開が入るのは少し違和感がある。

同じ様にサビ前のセットアップ、Bメロ後半あたまから転調させると更に上に転調させる等の場合を除いて元調にリマインドさせる必要があるがそうでない楽曲が多い。

全体のコード展開、ストーリーを大きく捉える事がとても大切である。

数多くの楽曲をなるべく若いうちに触れる事で楽曲とメロの関係性と感性を養う事が出来るのは言うまでもないが、この関係性、和音感やボイシングのイメージは純粋に気合で覚える、という領域で語るのはあまりに無責任な気もする。楽曲アレンジは対局な所にあるとは想うが、トップアレンジャーはやはり感性が鋭い。

また音(楽曲)をマスクして捉える事もとても重要である。(カクテルパーティー効果的なもの)例えば、DrumまわりやFXなどのピッチはディスコードしてる、といえば分かり易いイメージだろうか。楽曲の中には当然コード感を濁すサウンドが多数存在する。本番のmixではコード帯域をCutしてコード感を生かす方向のエンジニアリングがベーシックだが、元デモの段階でやはりこのコード感の帯域、ここでいうディスコードしているトラックをうまくマイナス処理し、きちんとコード感を聴かせたい。ディスコード感のあるトラックをマスキングする各トラックまたは全体のトリートメントがとても大切である。そしてマスクはEQのマイナス処理だけでなくKickのピッチをトランスポーズする、コンプのスレッショルドやアタックコントロール等、様々なアプローチがあり、それにより更に楽曲のレベルをインパクトの強く、勝てるフェーズにブラッシュアップしていく。

前回コラムでも述べた、制作の際はハモり(J-Popではほとんどの場合が3度下)をインサートすると、違和感、問題のあるコード展開、ボイシングやテンションは、聴覚上もDAWマトリクス上も、必ず違和感を感じるポイントがあるので是非試して貰いたい。

以前、自信作が出来たのにコンペ落選した事に落ち込むクリエイターがいたが「どのセンス(コード、メロ)を選択するか、発注の意図は何か?」というフェーズに到達するとコンペ落選の原因を自分の制作レベルの中に見出さなくなる点で精神衛生上とても気が楽であり、楽曲の利用開発もスムーズである。


P.S.写真は最新のカバー動画(ご視聴はこちら)最新曲のカバーを制作する事は最新のトレンドに触れる貴重な体験である。近年のドラマタイアップはテンポ感が落ち着いて緩めの楽曲が多く世相のテンションをとても良く反映している。しかしこのタイプのアイテムは割とクローズドしているプロダクトが多いので楽曲コンペに、あまり出回らない。コンペ発注のジャンル、需要と実際のマーケットのトレンドはあくまでも異なるという点をクリエイターは理解しておく必要がある。




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