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デザイン思考はデザイナーのためのものだと思われがちだけど、デザイン以外のもっと様々な現場で活用されて欲しい

アンカーデザイン代表の木浦です。

弊社ではデザインに関する様々な研修(デザイン思考、デザインリサーチ、サービスデザインなど)を提供させて頂いています。私たちが実施するデザイン研修は「デザイン」と名前がついているものの、いわゆるデザイナーの方のみを対象にしたものではなく、むしろそれ以外の職種の方が参加されることも多くあります。

しかしながら研修を企画してくださった人事担当者や、研修を受講してくださっている方とお話しさせていただくと、どうやら世の中のかなり多くの人に「デザイン思考っていわゆるデザイナーのためのものでしょ?」と思われているようです。

あるいは「デザイン思考がデザイナー以外のためのものである」とは知っていても「デザイン思考って新規事業や新規プロダクト/サービスのためのものでしょ?僕ら人事部/営業部/法務部/etcの人間には関係ないね」などと思われていることもあるようです。

なお、ここでいう「いわゆるデザイナー」とは物事の見た目を魅力的なものにすることが仕事だと思われがちなデザイナーさんのこと、つまり建築物の外装や内装を手掛けていらっしゃるデザイナーさんや、ファッションデザイナー、グラフィックデザイナー、プロダクトデザイナーさんなどのことです。

そこで、本記事では少しばかりデザイン思考について書いてみようかなと思います。

世間におけるデザイン思考に対する認識とは?

そもそも世の中の多くの方は、デザイン思考をどのように捉えているのでしょうか。

私の(特にオンラインの)研修ではMiroと呼ばれるオンラインツールを利用したワークショップを実施していますが、研修に参加される方はMiroの操作に慣れている方ばかりではありません。むしろ初めて名前を聞くという方も多いです。そこで私は(時間的な余裕がある時限定にはなりますが)研修開始前に、Miroの操作に慣れていただくためのウォームアップとして参加者の方に下記のような項目について書き出していただくことがあります。

- デザイン思考に対するイメージ
- この研修に期待していること
- 現時点での疑問質問

本記事では最近実施した研修時のmiroからキャプチャしたものをご紹介します。ちなみにこの研修は「デザイン思考そのものに興味がある人」や「デザイン思考そのものを学びたい人」を対象にしたものではなく、新規事業創出を目的とした一連のプログラムの中の一部という位置付けで、かつ参加者は様々な企業から派遣されてくる形でしたので、一般的な企業の中で実施される社員研修よりも参加者属性のバラツキが大きいかも知れません。

そのためデザイン思考を知っている人もいれば、知らない人もいらっしゃいますし、年齢や性別、業界もバラバラです。とはいえ、研修参加者の属性によって多少のバラつきはあるものの、他の研修で同様のワークを実施してもおおよそ似た傾向が見られる印象があります。

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これを見ると、デザイン思考という言葉自体が初耳の人もいらっしゃる一方で、過去に研修を受けたことがある方もいらっしゃるようです。いわゆる見た目を作るデザインと、デザイン思考との違いがいまいちわからないという方もいらっしゃいますし、見た目のためのデザインで使用するなんらかのテクニックのことだと考えている人も珍しくありません。デザイン思考=Apple(iPhoneやMacなど)のイメージを持ってらっしゃる方も多いです。

これらのことは「研修に期待していること」や「現時点で気になっていること/疑問に思っていること」を書き出してもらったものからも見てとれます。

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私は、なんだかんだ長い時間デザイン業界にいるので、デザイン思考なんて既に多くの人が知っているだろう、なんて思ってしまいがちなのですが、こうして書き出して頂いたものを見ると、なかなか意外とデザイン思考に対する認知度ってまだまだ低いんだなぁとも気づかされます。

デザイン思考は人々を理解することによって解くべき問題を定義し、解決するためのフレームワークです

そもそもデザイン思考とは何なのでしょうか。私はさまざまな場面でデザイン思考について聞かれます。教科書通りに答えるのであれば下記のツイートで呟いているような内容になるのでしょうが、果たしてこの解答は本当の意味で正解なのでしょうか。

私たちの立場からすると、デザイン思考について正しく理解して欲しいという気持ちはもちろんあるものの、世の中の多くの人々にデザイン思考を活用して世の中にポジティブな影響を創出して頂きたいというところが本音です。

ですが、「デザイン思考はデザイナー的な物作りの方法をデザイナー以外が容易に利用可能にしたものです」のような回答では「良さそうだな、使ってみようかな」とはならないだろうなと思います。下記のツイートの例と同様に、です。

では、どのように説明すればいいのでしょうか。そもそもデザイン思考って世の中的にはどのように説明されているんだろうか?と思って少し調べてみると、下記のような図が頻繁に引用されていることがわかります。

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これはスタンフォード大学d.schoolが発祥の図を翻案させて頂いたものです。実際のところはこれらのプロセスを直線的に物事が進むわけではなく、行ったり来たりがあるわけですが、図で示す通り「理解共感」「定義明確化」「アイデア発想」「プロトタイピング」「テスト」の5つのステップから構成されています。

そしてこの5つのステップは、大きく2つに分けることができます。インタビューやリサーチなどを通して人々が持っている課題を見出して問題を定義するという「自分達が解くべき問題を定義するフェーズ」と、アイデア発想ワークショップなどでアイデアを広げ、コンセプトシートなどでアイデアを具体化していく「問題を解決する方法を考えるフェーズ」です。

つまり、デザイン思考とは「人々を理解することによって解くべき問題を定義し、解決するためのフレームワーク」だと説明できるのではないでしょうか。

デザイン思考は新規事業開発・新規商品開発だけではなく、さまざまな領域で活用することができます

デザイン思考に対して、新しいビジネスや、新しい商品を生み出すためのフレームワークという認識を持たれている方も多いのではないかと思います。

デザイン思考を活用することによって新しい事業や商品を生み出すことはできますし、実際によく利用されていますのでこれはある意味で正しいと思います。Appleの音楽プレーヤーであるiPodや任天堂のゲーム機Wiiなど、その他にもデザイン思考によって生み出されたとされる事例を挙げればキリがないでしょう。

ところが前述した通り、デザイン思考を「人々を理解することによって解くべき問題を定義し、解決するためのフレームワーク」として捉えるならば、新規事業や新規商品開発だけではなく様々な分野に活用することができます。

例えば営業部門であれば、販路開拓の手法や、営業部員を育成する方法についてデザイン思考で検討することもできるかもしれません。小売店で店舗販売員がなかなか自社製品を薦めてくれないがどうしたら良いか?のような問題を設定して解決を試みることもできるでしょう。

人事部門であれば従業員の育成方法や、人材採用についての新しい方法を検討することにデザイン思考を活用できるかもしれませんし、小売店や飲食店であれば、より良い接客の方法について検討したり、システム開発部門であれば開発プロセスそのものの改善にデザイン思考を活用することもできるかと思います。

上記は私たちが過去に実施させて頂いたプロジェクトや、研修のテーマとして設定させて頂いたものからの抜粋ですが、デザイン思考を「人々を理解することによって解くべき問題を定義し、解決するためのフレームワーク」として捉えることで、私たちの身の回りにある、人間が介在する様々なシーンにおいて活用が可能であることにお気づきいただけるのではないかと思います。

なお、これは少し余談になりますが、世の中の多くのデザイン思考研修や、デザイン思考の解説書で新しい事業や商品を作ることをテーマとして設定していることが多いように感じます。

これについては私も以前なぜだろう?と思っていた時期もあるのですが、自分が研修を企画して実施する立場になって初めて気がつきました。

様々な企業や部門に所属している参加者を集めて実施すると、テーマ設定が非常に難しいのです。参加者に共通するテーマのようなものもなかなか存在しないため、なるべく制約の少ないテーマということで安直ではあるものの新しいビジネスや新しい商品を考える、がテーマになってしまいがちです。

おわりに

デザイン思考については書籍も様々なものが出版されていますし、キーワードとしては耳にしたことがあるという方も増えてきているように感じます。

このことは大変ありがたいことである一方で、デザイン思考という文字列から「デザイナーの思考でしょ?デザイナーの話であって私たちには関係ないね」と誤解に基づく解釈をされてしまうことによってデザイン思考の中身に興味を持っていただく機会を逸してしまっているとしたら大変勿体無い話であるなとも思っています。

デザイン思考は、名前にデザインと入っているものの、デザイナーの思考法をデザイナー以外が活用できるようにパッケージングしたものであり、デザイナー以外が活用することで威力を発揮すると考えています。

おおよそ全ての職種にクリエイティブであることが求められつつある昨今、デザイン思考は、デザイナー以外の方がクリエイティビティを発揮するためのパワフルなツールになるはずです。

次回以降も、デザイン思考について少しばかりnoteを書いてみたいと思いますので、お付き合いいただけますと幸いです。


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弊社アンカーデザインではデザイン思考やデザインリサーチ、サービスデザインなどの研修を積極的に実施しています。ご興味がございましたら、弊社Webサイトよりお気軽にご連絡ください。


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