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「丸亀製麺」ロンドン1号店に行って、ショックだったこと

あの「丸亀製麵」がロンドンにオープンするというニュースを見たのは昨年の7月。
安くて美味しいうどん... 日本にいた頃よく食べていた丸亀がやってくるということで、私もわくわく心待ちにしていました。

今週7月26日、ついに、丸亀製麺のロンドン1号店がオープン!日本のニュースで見た方も多いかもしれません。

うどん食べた〜い!と、私も早速行ってきました!オープン後最初の週末、7月31日。開店30分前にお店に到着しましたが、既に長蛇の列。入店まで90分くらい並びました。
(お腹をすかせて並んでいるお客さんに、お菓子を配っていたのがステキなサービスでした。私もチョコレートを美味しくいただきました!)

このオープニングの盛況は、徹底的だったマーケティングが成功したのだと思うのです。

オープン1週間ほど前から、ロンドンで人気のインスタグラマーが多数お店に招待され、美味しそうなうどんやビールの写真をPRしていました。

更には、最初の1週間限定で開催しているキャンペーンが太っ腹!
ロンドンの丸亀には「Marugame Club」というアプリがあり、来店時にポイントがたまるシステムなのですが、このアプリを事前にダウンロードした方は、最初のうどんが1杯無料になるとのこと!

私のレシートもほら、「かまあげ」が無料になっています!お得!うれしい!

このキャンペーン、まずはうどんの味を拡めたいとの意向で決断されたそう。キャンペーン終了後の客足次第だろうとは思いますが、成功を祈ります!ロンドンの店舗、長生きしてほしい!店舗数も計画通りにもっと増えてほしい!

それでは実食!
いつも必ず追加していた「かしわ天」が売り切れで残念でしたが、懐かしい釜揚げうどんは日本の味そのもの。
天かす、ネギ、生姜等もちゃんとありました!

お値段は

Kamaage £3.45 (釜揚げうどん 約¥580)
Chicken Tender Tempura £1.95 (かしわ天 約¥330)

イギリスで外食したら、ファストフード店でも1食 £7(約¥1200)くらいはするかなと感じるので、この価格帯は安い!ご近所にあったら、毎週通いたいレベルのお安さです。

通常の出汁を使ったメニューだけでなく、野菜の出汁を使ったベジタリアン用もあり、ベジタリアンが多いイギリスでもばっちり通用しそう。変わり種なメニューも豊富で、カレー丼、キムチ焼きうどん、豚骨ラーメン風うどんなどなど、この辺がこちらでは人気になりそうな予感です。私も、いつか挑戦してみたいですね。

と、ここでロンドンの丸亀体験レポートを終われれば良かったのですが... とてもショックな出来事がありました。せっかくのヨーロッパ進出に水を差すようなことを言うなと、思われる方も多いかもしれません。でも、勇気を出して書かせていただきます。

事件は、入店待ちの列にいる時に起きました。

開店時刻に合わせて、プロモーション用の着物(のようなコスチューム)を来た女性が、竹馬にのって登場、愛想良く手を振りながら、列の横を歩き回ってポージングしたのです。そしてそれを、企業側が起用したフォトグラファーが追いかけて写真を撮っている。きっとこの写真はまた今後の広告に使用されるのでしょう。

この着物、合わせは逆だし、襦袢なしで羽織っただけに、幅のおかしな帯を後ろでりぼん結びのようにした状態。どんどん着崩れしていってました。これは「着物」なのだろうか。

このパフォーマンス、イギリスにお住まいの日本人女性の方ならきっと共感いただけるかと思うのですが、アウト!です!

今回の着物のようなコスチューム、この「ような」の部分がポイント。
本格的な日本の味「authentic」であることを売りにしているレストランが、明らかに正しくない着方で着られた着物のようなコスチュームをマーケティングのイベント時に使用してしまった。
着物は日本の伝統衣装、民族衣装なのに、日本文化へのリスペクトは無いのでしょうか。
しかも女性たちの着物、かなりはだけそうな着方な上に、手をひらひらさせて踊るようなポーズ...これは西洋文化において「ゲイシャ」と呼ばれているイメージと重なります。

イギリスやアメリカ、フランス等、外国で「ゲイシャ」と言う言葉が使われる際、多くの場合が、芸者さんがどんなお仕事なのかを全くご存知ないまま、「オリエンタル」や「エキゾチック」なアジア人女性の性的なイメージと結びつけてこの言葉を使っています。

イギリスではもちろんのこと、世界中のいろんな国で、私自身耳を疑うような「ゲイシャ」ジョークを耳にしています。そのたびに(私はこういうの許せないので)毎度、丁寧に訂正するのですが...これがほんと根深くて。友人や知人なら「知らなかったごめん」と謝ってくれますが、セクシーゲイシャはありとあらゆるところに出現するんです。一番多いのが、バーやクラブ等のコンパニオン的なコスチューム!こぞって着物風の羽織りをはだけさせ、手をひらひらさせて、セクシーに誘惑する演技をしています。
女性への性差別、女性の商品化問題等にも関わるかと思います。そして、何より、本物の芸者さんに失礼ですよね。

そんな、「ゲイシャ」のイメージに見えかねないコスチュームを、日本企業が現地でのプロモーションに登場させるなんて、日本人女性への冒涜です。本当に。ショックでした。

文化の論点として、「文化の盗用」という考え方があります。これは、ある文化に関する物事や要素を、元の文脈から外れた形で他の文化で流用すること。これは絶対にしてはいけないことです。それは、本来その文化が意図したこととは違う内容に歪められて使われてしまう可能性があるから。そして、一度誤って形成されてしまったイメージや、誤解を解くのは本当に難しい。

文化の盗用は線引きが本当に難しく、今回の件が「文化の盗用」に当たるかは、新たに議論が必要ではあります。しかし、イギリスにおいて日本人は少数民族、マイノリティーです。マイノリティーの文化を扱うときには、間違いがないように慎重に扱うべきだと強く感じています。

外国で「着物のようなコスチュームを着た女性」が、ひらひら踊ったり、セクシーなポーズをとる...そんな「ゲイシャ」のイメージ、また、間違った文化を伝えてしまうようなことは避けるべきだと考えます。

今回、丸亀製麺ロンドン店で「着物のようなコスチュームを着た女性たち」が登場したことは、私にはまるで日本企業がこの女性たち、この着物が、「日本のイメージ」であると認めているかのように見えたのです。
「着物の合わせが逆で、はだけかけてて胸が見えそうで、帯がきちんと結ばれていなくて、傘を掲げて手をひらひらさせるエキゾチックなポーズで竹馬に乗る。これは日本の文化です!」と。

この女性たち、本物の日本の文化に見えなかったのは、私だけでしょうか。

同じ竹馬に乗るパフォーマンスでも、せめて、着物を正しく着ていたら...せめて、女性たちが派手派手なダンスポーズではなくて、もう少し違うポーズだったら...ゲイシャには見えなかったかも?いや、でもそもそも、どうして女性だけなんでしょう...?

外国で「日本企業」がどんな「日本」を使用してマーケティングをするのか。確かに難しいのはわかります。でも、既存の日本人女性が日頃問題視しているステレオタイプを支持するような内容は控えてほしかったし、せめて日本の民族衣装くらい正しく着てほしかった。

派手で目立つから、このパフォーマンスで盛り上げようと思ったのだとは思います。きっと、日本文化を貶すような意図も無く、ポジティブな理由で開催したはず。でも、これは本当に丸亀製麺のヨーロッパ進出に「相応しいパフォーマンス」だったのでしょうか。

私は見ていて恥ずかしく感じました。

丸亀製麺のうどんは大好きです。これだけ今回のパフォーマンスにがっかりしても、私はきっとまたうどんを食べにロンドンのお店に通うと思います。でも、また次に何かのパフォーマンスを企画する際、広告を打つ際、どうか内容を慎重に見直していただけたらと心から願います。

* 私の説明の仕方や言葉選び、考え方等、まだまだ未熟な点、至らない点あるかと思います。この記事が、皆さんと考えるきっかけになれば幸いですし、私にとって勉強の場になればと思っております。
* 掲載した写真は私自身が撮影したものです。また、女性たちは目隠しのようなものを着用していました。画像編集で目隠しをしたわけではございません。
(追記)
記事を読んでくださった方から、この「目隠し」も、セクシャルな意味合いやネガティブなイメージに見えるのではとご指摘が。何件もいただきました!私も同感です。
・顔が見えなくなることで、出演者がの人種が隠され、エキゾチックが増す
・顔が見えない=アジア人女性は顔がない、個性がない
・目を見えなくすることで、服從しているように見える
など。いろいろと考えるポイントがありますね。



* 記事修正 8月2日 19:30(GMT)
本記事を一部修正いたしました。
たくさん、貴重なご意見をいただき、元記事の「芸者さん」と「文化の盗用」に関する書き方には見直しが必要だと感じ、書き換えさせていただきました。
私がこの記事を書いたのは、問題提起はもちろんですが、自分の学びのためでもあったため、こうしてご意見頂戴できたことがとても嬉しく、また力強く思いました。

また、8月2日午前中に、この記事で書きました女性たちの写真が、イギリスの丸亀製麺さんのインスタグラムにて投稿されました。こちらに対してはコメント欄で私の想いをお伝えし、現在はこの写真の投稿はイギリスの丸亀製麺さんのアカウントからは削除されています。
このコメントにはイギリスの丸亀製麺さんからインスタグラムのDM経由でお返事をいただき、今回の意見を元に社内でも話し合いをしてくださるそうです。
私の記事やインスタグラムを見て、一緒にイギリスの丸亀製麺さんに連絡をしていただいた皆さま、どうもありがとうございました。

何が正しいのか、難しい問題ではありますが、こうして一緒に考えてくださる方がいることがとても心強いですし、また考えていくこと、発信していくことが大切だなと感じました。

(追記:2021年8月23日)
イギリス丸亀製麵の社員の方と実際に会ってお話しする機会をいただきましたので、そのご報告と、それをふまえて私が考えたことを新しい記事に書きました。
この記事を読んでくださった皆さまには、ぜひこちらも合わせて読んでいただけましたら幸いです。

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