MIKOSHIGUY_春日48

レビュー:柳瀬博一さん(編集者、教員)

日経BP社で編集者を務め、現在東京工業大学で、メディア論を教えていらっしゃる.柳瀬博一さんからレビューを頂戴しました!

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街のどこかでお神輿をかついでいる声がする。おそらくあなたは、つい振り向いてしまう。そして足を向けてしまう。さらには列に混じってしまう。しまいには一緒にかついでしまう。 

日本人だけではない。どうやら、世界中どこに行っても、お神輿は人を集めてしまうようなのだ。 

映画は2016年のドイツ・ベルリンで開かれているカーニバルから始まる。「さあ、ついにベルリンに来ました」とカメラに向かってにっこり笑う、ナイスガイ。主人公の宮田宣也氏だ。 「ジイさんのお神輿、ベルリンでしっかりあげてこようと思います」 

つくば市。山梨県笛吹市。小田原市。宮田氏は、様々な街でお神輿を担ぐ。神輿職人の祖父を持つ彼は、若くして、「お神輿という仕事」につく。寂れた祭の片隅で埃をかぶったお神輿に魂を吹き込み直し、祭そのものを再興する。全ての場所が最初は外様。祭は時として排他的だ。でも宮田氏のお神輿に対する揺るぎない想いは、あらゆる壁をぶち壊し、その地域にぽっかり空いていた穴に、祭の賑わいをもたらす。 素敵な仕事、素敵な映画。 

柳瀬博一(編集者、教員)