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資本主義だけ残った

フランコ・ミラノヴィッチの新しい著作。Aloneのニュアンスが民主主義を語ったチャーチルの言葉を思わせるがまさに選択肢がない中で求めうる資本主義とはどういうものなのだろうかという考察。
著者はこの中で資本主義をリベラル能力資本主義と政治的資本主義とに分けて各々の特徴を詳らかにしながら議論を進めている。
リベラル資本主義については、リベラルな思考が持つ妥当性や蓋然性を許容せざるを得なさにより不平等が容認されてしまう事により社会的な課題を加速させてしまうと同時にコンセンサスが求められる為に成長は鈍化する。
一方で政治的資本主義は中国に代表される様に権威主義的な方法論であるが故に成長を加速させる。
この対立はまさしく民主主義と権威主義と同じ問題であり、その点は著者も指摘しているところである。
しかし、経済効果については環境問題が顕在化している中で成長ありきの資本主義が続かないことも事実である。
このままの状態が継続すれば政治的資本主義をとる国々はリベラルな資本主義を志向する国々と肩を並べる水準まで成長していくであろうし、中国が牽引する一帯一路構想によりアフリカ諸国も今のアジアの国々の様な成長を遂げるであろう。
この過程が政治的に何の軋轢もなく進むことはまずない事を考えたときにまさに権威主義的な成長がはらむ大きな課題であるその権威の主体であるリーダーの資質によっては世界情勢は非常に脆弱なものとなってしまうのはプーチンを引くまでもない。
こうした中での「資本主義だけ残った」という状況が持つ危うさを感じた。

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