見出し画像

おっさんだけど、仕事辞めてアジアでブラブラするよ\(^o^)/ Vol, 65 阿呆

キルギス 
2023.0917 Sun

雨が降る。
それは、ごく当たり前の自然現象です。
雨(雪も含めて)が降らない地域なんて、この世界に存在しません。砂漠にだって雨は降るのですから。
でも、ごく稀に雨の存在を忘れる人間がいます。残念ながら、その人間とは、そう、わたしです。

いくらエバってみても、人間様だって所詮は動物。飯を喰わなければ、充分な睡眠が得られなければ、そして互いに助け合わなければ、大したことなどできないのです。

今日も今日とてビシュケクへの道をチャリで走行中、なんだか雲行きが怪しくなってきました。
まだ夕方でもないのにあたりは薄暗くなり、なんなら遠くで雷鳴が轟いています。
「…雨? まあ涼しくなって助かるわ」
阿呆なわたしはこの期に及んでまだ暢気なことを考えていました。
そして…。
予想外に強く降り出したのです、雨が! あれよあれよという間に土砂降りの雨、そして吹き荒れる強風。近くこそありませんが、ときおり雷鳴も轟きます。紛れもない暴風雨です。
「こんなこともあるんやな…」
屋根と壁があるバス停に運良く避難できたおかげで、まったく濡れなかったわたし。おかげで、自然がわたしに与えてくれたせっかくの“気付き”のチャンスを無視してしまうのです。

こんな感じで天気とロケーションに恵まれると、キャンプはサイコーです。静かだし、星は降ってきそうなくらい鮮明に視えるし、トイレはその辺でやり放題だし…。


30分ほど荒れ狂った暴風雨、それが止むと同時にチャリでの走行を再開。
そして午後5時、河原にテントを設置します。そのとき、確かにわたしは空を見上げました。はたして、空は曇天でした。と言うよりも、今にも降り出しそうな空だったのです。
しかし、わたしはそれを無視し、夕食の買い出しに出掛けます。20分後、ちょうどわたしが食料品店を出てすぐに雨は降りだし、まもなく暴風雨へと化し…。
大木の陰に隠れてなんとか遣り過ごそうとすること30分、辛くもびしょ濡れを免れたわたし。急いでテントに戻ると、ペグを打たずにリュックで重しとしていたテントはひしゃげ、中には1ℓほどの雨水が溜まっていました。そう、わたしの愛用していた中華製激安テントは、防水性がほとんど無かったのです。
取り急ぎテント内に溜まった雨水をなんとか掻き出し、タオルを敷いた上で寝袋に包まりました。もちろん寝袋は湿っていますよ、そりゃ。
標高たった1000mに過ぎないこの地での雨に震えながら、パミールチャレンジを想い出してさらに震えました。
“パミールで雨降ってたら、マジで死んでたな…”

こんな場所で雨が降ったら死にます。マジで死にます。だって、どこにも隠れる場所なんてないんですから…。どこにも助けてくれる人なんていないんですから…。

8月9日に、ウズベクから始まった中央アジアの旅。5分以上続いた雨は、実は今日が初めてでした。
よく “勉強すればするほど自分の無知さに気付く” と言います。これは、僭越ながらわたしにも経験があります。わたしはキックボクシングジムに通っていたのですが、“練習すればするほど自分の弱さに気付く” のです。
そして、今回も思い知りました。“チャリで走れば走るほど、自分の無謀さに気付く” のです。
はっきり言って、『チャリで、サマルカンドからドゥシャンベを経て、そしてパミールを抜けてビシュケクまで走破した』とだけ言えば、チャリダーとしてなかなかのモンです。しかしその実、わたしは雨具さえ持っておらず、夏場/晴れ/3000m以下限定のテント&寝袋しか持たず、そして予備の食料と水もない。
“死ななくてよかった…”
本当にそう思います、心から…。

自然は美しく、そして厳しい。パミールを走ってみて、そのことが身に沁みました。

ビシュケクに到着した時点で、今回のチャリ旅は終了です。
あと2日。
なんとか無事に過ぎるよう、祈るばかりです。

平地って本当に有難い。自転車に乗っていると、そう思います。『文明のゆりかご』然り、平野部に人口が集中するのも納得できる話です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?