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#それでもスポーツで生きていく・#16

~各論【第1章】
スポーツの『存在目的』に耳を傾ける旅
塩尻編(スポーツ地方創生編)

こんにちは、スポーツエッセイスト・岡田浩志です。

青春18きっぷの旅。東京から中央東線を利用して、一路、長野県の塩尻駅に向かいました。

その目的は、8/18(日)松本市サンプロアルウィンで行われるJ1リーグ・松本山雅FCvs.名古屋グランパスの試合観戦だったのですが、塩尻駅に向かったのにはれっきとした理由があります。

このお話には発端があり、5月の出来事にまで遡ります。少々お話にお付き合いください。

名古屋市内で行われたワインパーティー

5月下旬のある日、名古屋グランパスのサポーターの友人から、「ユニフォームを着ていけば無料で飲み食いできるパーティーが名古屋であるけど来る?」というお誘いがあり、名古屋駅近くのホテルの宴会場に向かいました。

ホテルで行われたのは、「ワイン片手に応援しよう!名古屋グランパス×松本山雅FC」と題した、長野県塩尻市主催のワインパーティーでした。

翌日に豊田での試合を控えた両チームのユニフォーム着用者は、本当に無料で会場内の飲食を楽しむことができ、パーティーには塩尻市市長や商工会議所関係者、名古屋市長の河村たかし氏も列席されていました。

パーティーの仕切りは、地元のラジオ局が行い、両クラブ社長のトークショーや、サポーターによるエール交換などで、終始盛り上がりをみせていました。

塩尻市主催ワインパーティーということで、場内では、塩尻産の白、赤、ロゼ、スパークリングなど様々な種類のワインを試飲することも。

そして会合の終了後に出口で配られた配布物がこちら。

塩尻市の観光パンフレットやワイナリーガイドに交じって、8月に行われる松本山雅ホームゲームの名古屋グランパス戦で、塩尻駅からの無料シャトルバスが運行される旨と、その場でワイン1杯無料の引き換えができるクーポンがついていたのでした。

このワインパーティー、塩尻市による「スポーツ資源を活用した地方創生」案件なのだ、と気づくことになり、僕はこの時点で、8月は塩尻へ行こう、と意思を固めました。

塩尻駅東口シャトルバス乗場へ

塩尻市の販促策に乗っかり、実際に塩尻駅東口ロータリーに降り立ちました。

これまで松本市のスタジアム、アルウィンを訪れる際は、塩尻駅より北方にある松本駅からシャトルバスを利用することが主でした。しかし、名古屋から来る場合は、塩尻駅で降りた方が、移動効率はよくなる位置関係です。

そしてシャトルバスは、試合開始5時間半前から、だいたい1時間に1本のペースで運行している様子でした。

バスの発車待ち時間がけっこうあるのですが、列の脇に塩尻市の名の入ったテントがひと張り立ててあり、ここで自分はワインを1杯引き換えしました。

ちなみに販売のほうはワイン1杯が200円ジュース1杯が100円となっていて、バスを待ちがてら、購入して飲む方々も散見されました。

観光の現場に市の職員が立つ

引換券を渡した際には、「あ、名古屋のサポーターの方ですね、有り難うございます」と職員の方からお声かけも頂きましたし、ほかのサッカーファンの方が、ブースの職員の方々とコミュニケーションを取られている姿も見られました。

実際のバスの利用者は、名古屋からのサポーターよりは、南信地域から訪れる松本山雅サポーターのほうが多いのかな、という印象もありました。

5月からの一連の塩尻市の取り組みが観光客の誘致、という目的から想定すると、願った通りの反応ではないのかもしれません。しかしながら、そうした反響の度合いを実際に現場で掴みとり、今後にアジャストしていくことこそが何よりも一番大事なこと。

少なくとも僕は宿泊を塩尻で取り、家族へのお土産を松本ではなく塩尻で購入しました。微々たる貢献ではありますが、塩尻市にお金を落とすことになりました。そして何より「ワインのまち、塩尻」というイメージは、すでに強く焼き付けられています。

スポーツの力を地方創生に活用する

今回の塩尻市の取り組みは、5月の名古屋でのイベント、8月のホームゲームでの活動と、時間的にも空間的にも、大きなスパンをもった仕掛けでした。

地元ワインをPRする商圏として名古屋でのイベントを設定し、名古屋の人々が長野に来るタイミングでは、観光PRとして、シャトルバス乗り場にブースを設置するという試み。

ホームゲームを通じてPR展開する例は、Jリーグ界に限らずよく見られる販促形態ですが、アウェイの試合も活用して、というのはとても珍しいケースだと思います。

その仕掛けを作った塩尻市、それに協力した松本山雅FCと名古屋グランパス両クラブ、スポーツの力を社会に有効活用する実例として、たいへん価値ある取り組みを体感することができました。

今後日本のあらゆる地方で、同様の取り組みが広がりを見せてゆくのではないか、とも思ったのでした。

スポーツエッセイスト
岡田浩志

『みるスポーツ研究所』では、「それでも、スポーツで生きていく」皆さまの取り組みにもっと寄り添っていけるよう、随時サポートを受け付けております!