喉元のつっかえ【15】


なんだろう。
喉元になにかがつっかかってて、じょうずに呼吸ができない。動悸ははげしいし、火照ったような感覚もある。目も、ぼんやりした開け方になってしまう。
胸元はドクドク速く鳴っていて、鼻で呼吸すると苦しいから口で呼吸をしてる。言いようのないくるしさ。

これの正体に、僕はたぶん気がついてる。

表に出てる時間がある程度長くなってきてしまうと、肉体に刻まれたいろんな辛かった記憶に対して徐々に当事者感覚が生まれだし、心のダメージと向き合わなければいけなくなるのだ。
10番の彼はこれをずっとやっていた。
彼が休んでいる今、その役割を僕が担っている。それだけだ。
でも、予想以上にくるしい。
心がつらいだけで内側に秘めて隠せるのならいいんだけど、こうして呼吸や脈拍が乱れたりしていて、息をするだけでもつらい。

耐えなきゃ。つよくならなきゃ。
今は、僕ががんばるときだ。
大丈夫、大丈夫、時間が経てばきっとふつうに呼吸できるようになる。
心臓がずっとドクドク言っていてくるしいけれど、きっともうちょっとがまんすればおさまる。

大丈夫。僕はできるよ。
これをずっとやっててくれた家族に前ならえするんだ。
僕だって強くなってみせるよ。



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