数十年の懲罰

「何十年かの懲罰。檻の中に入れられて刑務作業に当てられる懲役刑と感覚は同じだよ。男性脳と男体と一定量のテストステロンを生まれ持って、「男はみんなバカだもんな!」とか、野郎共の友だちと笑い合ってみたかった。FtM解離の人間は理解者になってくれたりするが、その中から気の合う人間を探さなきゃいけない。ごく少数だ。正直なところ、何十年かの時間ではそんな人に出会えることは無いのであろう、と、半ば諦めている。
解離者は共有する身体に複数の人格を宿すからか、賑やかそうに見えるからか、「孤独を感じなさそうで、楽しそうで羨ましい」とたまに言われる。
他者から見たらそう見えるのか、と感じると同時に、十数人を統率する重役が背負うものには気付いてもらえないのだな。と、毎回肩を落とす。
内的家族とは切っても切れない縁なので共存する方法をどうにか考えるしかないのだが、切れる縁なのであれば即座に切りたくなることもある。
十数人もいれば問題を起こす人間がどうしても現れてしまうし、耐え難い現実を突きつけられることもある。
それが他人による行動なのだと他者に真から理解してもらえることはないし、同一人物の引き起こした行動なのだと、結果的に自分が責められる。
意識のない間に同じ肉体を扱うだけの他人が引き起こしたことで俺は何度苦しめられただろうか。
責任者の立場なんて本当はやりたくない。誰も汚れ役を買って出ようとしないから仕方なく自分が手を挙げただけだ。
それだけだ。
そんなんだよ。俺の人生。全然羨ましくないでしょ。」

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