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初夏を聴く、たった3時間の旅に出た

今日は早起きだった。5時台からウォーキングした。いつもの日曜日より時間がある。そして夫は配達に出かけてしまった。
そうだ、初夏を聴く旅に出るのは今日だ。
私は昨日行けなくなった旅行のために買ったワンピースを着た。電車に乗って一人で美術館へ行くのだ。そして帰りには海を見に寄ろう。
私のちいさな旅は滞りなく進む。今日が最終日の美術展にオープンと同時に入る。混んではいないが寂しくもない。そのくらいの人数の人々が展示に見入っている。ゆっくりと見終えてミュージアムショップをぐるぐる二周する。ボタニカルな香りのハンドクリームを手に塗ってみる。くんくん。ちょっと違う。やめよう。今日は何も買わなくていい。
駅ビルに戻り、パンをひとつ、コロッケをひとつ、常温のちいさな水のペットボトルを一つ買う。
夏用のバッグの中には折り畳みの日傘。これは海に寄る決心の証として持ってきた。
何十年ぶりだろう、海に近い駅に降り立つ。改札を出ると駅から伸びる道のつき当たりに、うっすらと海が見える。だれも歩いていない道を日傘をさして歩く。すぐに海についてしまう。松の匂いがする。
人気の少ない浜辺では女子高生が二人、敷き物を広げて座っている。それだけ。私はこっそりと日陰に座り、パンを食べる。チェリータルトパン。迷ったけれどコロッケも食べる。蟹クリームコロッケ。ワンピースにパン粉を落としてはいけない。注意深く食べ終え水を飲んで立ち上がる。
そんな短い時間の間に髪が海の匂いになったのを感じながら海を背に駅に向かう。駅に着くと同時に電車が行ってしまった。でもいい。今日は次の電車をホームでのんびりと待てる。
あっという間に終わった初夏を聴く旅。何か聴いただろうか。それより香りを感じる旅だったな、とゴロゴロしながら思う初夏の午後だ。



これに書いた旅へのチャレンジでした。
ちょっと違うけどちょっと実現できました。
noteって、書けば実現する魔法のノートかもしれないと思うこの頃…


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