私の変態の父#1 ー性的虐待と1年生存率30~40%の原発不明がん

最近、1年生存率30~40%の原発不明がんと診断を受けた。

生存期間中央値は、7.1ヶ月だ。

それまでは、多くの人がそうであるように、私はまさか自分ががんになるとは夢にも思っていなかった。その上、一年間生きられる確率がこんなに低い、『極めて予後が不良ながん』になるなんて。

私はまだ50代。

性的虐待による精神的な落ち込みや嵐のような怒りをやっとコントロールできるようになり、悪いのは私ではなく加害者である父なのだ、と腑に落ちたのは、つい最近のことだ。

2ヶ月前、特に問題ないはずだと思っていた人間ドックで、医師から「卵巣に腫瘍がある」「まあ悪いものだと思ってください」と指摘されたとき、私はとても冷静だった。これはとてもまずいことになったと思った。それが2023年10月25日だった。

それから紹介状を書いてもらい、11月6日に大きながんの専門病院で初診受けた。その同じ日、診察とがんセンターでの相談を終えた私は、その足で既知の弁護士事務所を訪れた。

遺言公正証書と死後事務委任契約公正証書を作成するためだ。

私が選んだ弁護士はとても信頼できる方で、誠実かつ確実に、その日からわずか5週間で役場の立会人のものもとに公正証書を作成してくれた。私は運がよかった。

私は父から受けた性的虐待が原因で家族・親族と完全に断絶しているが、都合が悪いことに、直系親族である父が存命で、姉・妹も他県にいる。

もし私が死んだら、私がいままで必死で働いてためた私のお金が、加害者である父と父をかばっている姉・妹に、自動的に渡ることになる。いつも高慢な姉の高笑いが聞こえる気がした。それだけは絶対に嫌だった。

私は、がんが指摘されてから5週間、フルタイムの仕事をこなしつつ、夜と土日で遺言書と死後事務委任契約の内容をまとめ、弁護士と何度もやりとりして内容を推敲した。人生で一番忙しく、嵐のような5週間だった。

5週間後に公正証書ができあがったら、やっと張り詰めていた気持ちがゆるんだ。これで、父たちに私のお金が渡ることはなく、社会の役に立てる。するとあらためて、自分がほんとうにがんで死ぬんだなという実感がわいた。

一般的に、がんと診断された人間は、しばらく診断を受け入れることができず怒りがわき、その後悲しみにくれ、多くの場合はやっと2週間程度で状況を受け入れることができるという。

しかし私の場合は、がんの可能性を指摘された段階から、フルスロットル全開で終活をはじめ、5週間で終わらせたことになる。これには、病院の看護師や会社の産業医などが驚いたようだった。

しかも、この終活、つまり遺言書と死後事務委任契約の作成には、さまざまな事情があり、父から受けた性的虐待の具体的な状況や、その後家族・親族から受けた父を擁護する言葉を、詳細に文書化する必要があった。

私は、死亡率が高いがんの恐怖を味わいつつ、過去の性的虐待のトラウマを詳細に思い出す作業を、フルタイムで仕事をしながら並行していたのだ。

遺言書等のことについて、看護師には、「あまり悪い将来ばかり考えて行動しないで、いまは身体をいたわることが大事な時期ですよ。。。」などど甘っちょろいことを言われたが、私は天涯孤独なのだ。家族に甘えられる立場ではないのだ。こんなに気を引き締めたことはなかった。自分の身体のことなんか、考える時間も気持ちの余裕もなかった。

しかし5週間で契約が成立したからこそ、その後、確定診断がでるまでの2ヶ月間のさまざまな葛藤を乗り越えることができたのだった。

確定診断ができるまでの精神的な乱高下と遺言書などを作成するために性的虐待の詳細を思い出し文章にする作業をもし同時にやっていたら、さすがの私も精神が持たなかっただろう。

これを書いている時点ですでに確定診断が出たので治療を開始するところだが、私は予後不良がんになったことに対する怒りや悲しみはあまりわいてこない。

いままで40年くらい、家族・親族とのやりとりで精神的にひどい状態を過ごしてきたため、「がんで近いうちに死ぬ」とわかっても、わりあいそのまま受容している。

もっというと、正直言って、もう死んでもいいんですか?と神様に聞きたいくらいだ。

自殺するとしたら痛いしおおごとだし、睡眠薬を大量に飲んでも死にそうにもなかったし、また中学生のころの性的虐待で40年たってから自殺なんかしたら、周りにいつのことで死んだんだよ、とまた馬鹿にされそうと思っていた。自分で死ぬのってめんどくさい。

だから、がんだと聞いて、えっ、もう死んでいいんですか?と思ったのだ。

性的虐待のトラウマと、死亡率の高いがん。それを同時に課せられる人は、少ないけどいるのだ。

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