日本でこれだけ「おひとり様文化」が充実すれば婚姻数が増えないのは当たり前という話

いつもは繊維・アパレル業界のことを書くようにしているが、気分転換に少し違うことを書いてみる。

結婚生活18年で、43歳の時に離婚してから10年半が経過した。離婚してから10年半特に異性と付き合うこともなく、可能性がゼロではなかったが、もう結婚したいとは思えなかったし、当時は仕事が無かったのでそんなことをやっている場合ではないということもあった。また、3人の子供を中高生まで育て終えた後だったので、もうこれ以上の子育てをする体力も根気もなかった。さらにいえば、カネを突っ込みたくもなかった。

で、バツイチ独身のまま10年半が過ぎたわけだが、性格や性質によって個人差は大いにあると思うが、私個人は1人で過ごすことが全く苦にならない。むしろ、他人と四六時中一緒にいることの方が苦痛を感じる。

で、改めて考えてみると、今の若い独身男性が結婚に踏み切らないという気持ちは結構理解できるようになった。

自分に最低限の家事スキルがあれば別に何の不足もない。あとは趣味なり仕事仲間との飲み会なりがあればさほど寂しくもない。またSNSが普及しているから暇だったらチャットで世間話でもしていればいい。

世間的に少子化対策が問題になっているが、そもそも婚姻数が年々減っている。もし自分が今の若い世代だったら、相手を妊娠させてしまったとか、死期が迫った親に結婚を報告したいとか、そういう差し迫った事情がなければ結婚する気が起きない。

よく「カネが無いから結婚できない」という話を聞くが、カネがあっても多分結婚する人は劇的には増えない。いくらかは増える程度だろう。

個人的には荒川和久さんの結婚に関する記事は賛同できる部分が多い。イシキタカイ系の奴らの言説に比べるとはるかに現実的である。

日本よりもはるかに手厚いサポートが充実していると言われているフィンランドの出生率は年々低下しており1・26で日本と同等にまで落ちている。

2018-19年には2年続けてフィンランドの出生率は日本より下だったこともある。

フィンランドには、子どもの成長・発達の支援および家族の心身の健康サポートを行う「ネウボラ」という制度があることで有名である。保育園にも待機することなく無償で通える。また、児童手当および就学前教育等が提供される「幼児教育とケア(ECEC)」制度が展開されるなど、子育て支援は充実していると言われている。が、そうした最高レベルの子育て支援が用意されていたとしても、それだけでは出生数の増加にならないばかりか、出生数の減少に拍車をかけることになる。

ジェンダー平等や育休で出生数は増えない

日本の出生率があがらないのは「ジェンダーギャップ指数が125位だから」「男性の育休が進まないから」などという声もあるが、ジェンダーギャップ指数でいえばフィンランドは2023年調査で世界3位である。男性の家事育児参加や育休取得レベルも北欧はいつも日本との比較で出
されるくらい多い。それでも出生は減るのである。

とまとめられている。
日本もフィンランドも金をばら撒いているが効果は出ない。ただ、独身生活10年半の自分からしてみれば「ナンボ金をもらったってまた結婚しようとは思わない」というのが本音である。すべてにおいてめんどくさい。それなら趣味か飲み会にでもその金を突っ込んだ方がマシだと感じる。

保育園を充実させようが、育休制度を充実させようが効果が無いのはフィンランドもそうだし日本も同様である。

要因はいくつかあるだろうが、日本の場合、「おひとり様文化の浸透」という要因も相当大きいのではないかと思っている。
SNSやウェブはもともと一人でも楽しめるものだったが、それ以外でも一人向けの商材・サービスが年々充実してきている。例えば、カラオケ。私が若い頃のカラオケといえば最低でも2~3人くらいの仲間と楽しむものだった。たまに歌の練習で一人カラオケしている人もいたがそう多くはなかった。だが、今では一人カラオケプランも料金表に正式に設定されている。だったら日時を合わせるという手間もなく自分の好きな時に一人でカラオケに行く方が気楽である。

焼肉も同様だ。焼肉も最低2~3人で楽しむものだったが、焼肉ライクに代表されるように一人焼肉ができる店が増えた。だったら、友達と予定を合わせるという面倒な作業をすることなく自分の食べたいときに行けばいい。

このほか、カフェやレストランなども一人で入店することが2000年代以降当たり前になっている。

年に1~2回しか利用しないが映画だってそうだ。いつも私は1人で映画を観に行く。友達と予定を合わせるわずらわしさがないし、友達と一緒に映画を観たところで観ている間は自分一人なわけで、隣の友達としゃべることもできない。なら、一人で観た方が気軽かつ身軽である。

こうした「おひとり様対応の商材・サービス」は年々拡充されるばかりである。私個人としては「暮らしやすい世の中になった」と感動するばかりだが、ハッキリ言うと、もう他人と知り合う機会は仕事上くらいでしか残っていない。そういうドライな関係の方が元々友達のいない自分にとってはありがたいが、これを結婚適齢期の男女として考えてみると、そりゃ出会いも無くなるし、ひいては婚姻数が下がり続けるのも当たり前である。

しかもそこそこ快適だから無理をして知り合いたいと思う人が増えないことも理解できる。荒川氏はよく「恋愛できる恋愛強者は30%程度しかいない」と唱えられているが、30%の強者はマッチングアプリで声をかけまくり、ナンパもやり(やられ)まくっているのでそちらはそちら同士でお楽しみになれば良いのだが、残り70%はそういう脳みそ性器みたいな積極性は持ち合わせていない。

欧米に比べて日本は「おひとり様文化」が浸透していると言われる。実際に欧米人からの意見を見ても「ここまで一人で楽しめる物が多く、差別されにくい日本はすごい」という驚きが多い。欧米は基本的に「カップル文化」だと言われていて、カップルでないと参加できないイベントや娯楽がほとんどなのだと言われている。

80年代ごろまでの日本だと「女の一人旅はいただけない」とか「結婚してこそ一人前」とかいう風潮が色濃かったが、現在はそんな風潮はほとんど無くなっている。そして焼肉、カラオケ、映画鑑賞、ライブ鑑賞、カフェ、居酒屋など「おひとり様プラン」が年々充実してゆくばかりである。

そんな場所で下手に異性に声を掛けたら、男は痴漢、女なら美人局を疑われてしまう。私も一人で居酒屋に小一時間ほど行くことがあるが、店員と少し会話する程度で他の一人客にはよほどのことが無い限り声をかけない。

先日、サイゼリヤで軽食を食ったのだが、隣のテーブルは20代と思しき若い男性一人だった。一人で結構な量を食って500mlのデキャンタワインを飲んでいた。一人で食事をしていた女性もいた。もくもくと食べながら時々スマホをいじっている。私も一人居酒屋の時はだいたいスマホをずっといじっている。

今後、日本の「おひとり様対応」はさらに拡充する可能性はあっても廃れる可能性は限りなく低い。この状態で出会って婚姻せよというのは実現性が乏しい。いくら金をばら撒こうがサポートを手厚くしようが婚姻数が大きく増えることはないだろう。

知っての通り、韓国は何年間も世界最低の出生率を爆走中で24年は0・7を割り込む。台湾の出生率も日本よりも前から1・1~1・2で推移している。一人っ子政策を廃止した中国だが何の効果もなく日本と同等の出生率にまで落ち込んでいる。東アジアはいずれも少子化になっており、少なからず「おひとり様文化」が濃淡はあれどある程度は浸透している。

まあ、今更「皆婚時代」に戻すことは日本も東アジア各国も不可能だから、減少させた人口で乗り切れる社会システムの構築を目指した方が効率的で有効といえる。

まあ、ざっとそんなところだ。「結婚はいいものだ」という人がいくら叫んでみても「おひとり様文化」がここまで浸透発達してしまえば何の効力もない。






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