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バスの中 苦しむ人に 助け骨 まさかの魔法 貸し出しの技

バスに乗っている。乗っているバスは町の中心の駅から隣の市の駅まで結んでいて、電車の乗り継ぎだと遠回りをしないといけない分、ショートカットができる路線だ。

ところでこのバスには、途中に大きな大学系の病院があった。そのため病院に向かう患者やその付き添いの人、あるいは病院に勤務している人がバスに乗り、バスが病院の前に到着するとみんな降りていくのだ。

「じ、じょこつ」突然通路を挟んだ横の人が苦しそうに何か言っている。「助骨」と聞こえたような気がした。その人が気になって見る。その人は胸を押さえて苦しそうだ。

「助骨が折れているのかヒビが入っているのかもな」見た目から辛そうな人を見ながら、ふとスマホを見ると、偶然に魔法使いの画面が出てきた。
「魔法使いねえ」非現実の存在だが、苦しそうにしている横の人を見ると、助骨を治すような魔法なんてあったらと考えてしまう。

「能力があればね」と言いながらその人に助骨が助かるように念じると、突然その人の表情が和らいだ。「あれ、痛くない、じ、助骨が痛くない!」と喜んでいるではないか。
「え、まさか、あ!」驚きと同時に今度は自らの胸のあたり、助骨のあたりが痛み出した。「まさか魔法であの人に助骨を貸し出した?ええ、あ、イタ!」と思いつつ、とにかく呼吸の度に胸が痛いのだ。
「あ、あいた、か、返して」と叫ぼうとしたら、バスが病院の前に到着。その人は、とても病人とは思えない笑顔でバスを降りて行った。
「え、お、おい!イテテテ」正常な助骨が取られた気がして慌てるが、苦しくてまともな声にもならない。

そのときだ、なぜか頭に浮かんだ57577の短歌を心の中で詠む。

バスの中 苦しむ人に 助け骨 まさかの魔法 貸し出しの技
(ばすのなか くるしむひとに たすけほね まさかのまほう かしだしのわざ)

「あ!あ、あ~あ」その瞬間に気づいた。いつの間にかバスの中で寝ていて変な夢を見ていたことに。もちろん助骨のあたりは痛くない。ふと車窓をながめると、ちょうど市の境を表示する看板が見えるのだった。

今回は趣向を変えて、毎週ショートショートnoteの企画に参加して短編小説を書きました。(お題:肋骨貸す魔法)

今日はこちらの記事「泉北からバスに乗って河内長野駅を目指してみた」をモチーフにしています。

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