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ラーメンを 食べる年末 何するの 紅プール トーナメントは

「年末だというのに、会社の幹部は何を考えているんだ」お昼休み会社の近くに新しく誕生したラーメン屋に入った。通行量の多い国道バイパス沿いに誕生したとあって、トラックなどが止まっている駐車場の中に入ると、案の定満席に近い状況である。「カウンターどうぞ」運よく、待たずに入れたようだ。

普段は朝にスーパーの弁当買ってお昼を済ませるのに今日は外食をしたのには訳があった。忘年会とは別に、年末の納会でイベントが、通称「紅プール」で行われるというのだ。工場の敷地内にある福利厚生用の25メートルプールだが、紅(くれない)と名のつくのには理由がある。それは会社のコーポレートカラーが紅色ということで、プールの底が紅色なのだ。

業界では5本の指に入る大手企業に正社員として入った事までは良かったが、工場でたまに行うよくわからないイベントにはいつも戸惑う。昨年はプールの水を凍らせてスケートなどをして遊べるという企画だったが、今年は水を抜いており、違うことをする。それが言論大会のようなもので、自分の意見を述べて、その内容の良しあしをトーナメント形式て争わせるのだという。
「優勝者や準優勝には賞金があるらしいが、ふう」部署内で参加者がひとり選ばれるのだが、運悪く選ばれてしまった。その瞬間から最終日までの間はただ憂鬱だ。だから外食に来た。

注文後、ラーメンを待つ。混んでいるために時間がかかっているようだ。「だんじり盛りだからな」などと思いながらスマホをいじっていると、
あなたがパートナーよりも先に亡くなったとしたら、残されたパートナーに、あなたに代わるパートナーと出会い、幸せになることを望みますか?
それとも、ずっと自分がパートナーにとっての最後の人であることを望みますか?」
と、出口付近で大声が聞こえる。

声のするほうを見れば同じ会社の違う部署の人間だ。あまり面識はないが、着ている作業服でわかった。当然、声が出たから周りの注目の的となっている。発言した人物は無意識に出たのか?それともは??全くわからないが、気が付いたらもう店を出て行った。

「しかし、難しい質問だな。パートナーいないからそんなのわからないや」そう思っていたら、ちょうどラーメンが来た。「すごい野菜の量だ」と思いながらさっそく食べ始める。黒コショウのあっさりスープの太麺ラーメンは、空腹を満たすのにはぴったりだ。

すると突発的な発言のためか、回りの客が反応し、自分たちの考えを話し出した。それは注文後に入れ替わりで入ってきた右隣に座ったカウンター席3人で来た男女だ。「あの質問さ、俺は、パートナーは最後の人がいいかな」「僕は違うぞ、パートナーにはその後も幸せになってほしい」「私はぁ、うーんどっちかなぁ」

「すごいな、これは!」ラーメンをすすりながら、インパクトある言葉に周りがまじめに反応している。あの人、今度の言論大会の出場者だろうか?
「もしあの人がトーナメントの相手なら、絶対勝ち目無いな。だったらウケを狙うか」と思いながら、ラーメンのスープを飲む。そして短歌でも詠もうと頭に浮かぶ。

 ラーメンを 食べる年末 何するの 紅プール トーナメントは
(らーめんを たべるねんまつ なにするの くれないぷーる とーなめんとは)

今回は趣向を変えて、毎週ショートショートnoteの企画に参加して短編小説を書きました。(お題:プールの紅トーナメント)

さらに年末ということで、山根あきらさん「あなたへの5つの質問」のQ.1も同時参加しました。

ちなみに今日はこちらの記事「富田林に新しく誕生した男のラーメン富田林わっしょい」をモチーフにしています。

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