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映画「30S」考察 ラストかな

 もう考察はいいかなと思っていたけど、「約束の日」のイベントで監督のお話や真田くんの考察を直接聞いちゃったらもう一度振り返りたくなるよね、どうしても、やっぱり。ころころ変遷した私の考察もやっと完結かな。


■真田くんは言った。

 これまで、あまり考察を明かしてこなかった真田くんが、今回のイベントて初めて披露してくれた。

・「御手洗は死んでいると思う」
・「妹が居ると嘘をついたのが、御手洗の嘘つきの始まり」
・「3年前のレンカと別れる時の御手洗が、本来の御手洗の姿なんじゃないか」

 これを聞いて、御手洗甲という人間の生い立ちにもっとスポットを当てて考える必要があると思った。

1992年10月31日 
地動説を唱えたガリレオ・ガリレイは「教会の教えに背く」として長年にわたって破門されていたが、死後350年にあたる1992年のこの日に、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世は裁判誤っていた事を正式に認め、ガリレオの破門を解き謝罪した上でその名誉を回復させました。

「思い込みの強い男」
 施設育ちの御手洗は、出自に不明なことも多かったに違いない。自分の存在意義に自信が持てない。そんな不安を吹き飛ばす程の威力があったのが、この「誕生日がガリレオの唱えた地動説が正式に認められた記念日と同じ」だったのではないか。この日この世に生まれ落ちた俺最強!と思い込む。
 あの偉大なガリレオでさえ名誉回復に350年も要したのだから、思いが強ければやがてそれが叶う日があると信じ込むようになったのではないか。
 成長し、同じ誕生日の人間が3人集まったことにも運命を感じた。

「嘘つき」
 御手洗は、「俺は嘘ついたことないよ」と言いつつ過去には妹が居ると言っていたし、現在も詐欺を働いている。しかし、矢崎事務所の矢崎さん曰く「御手洗くんは嘘をついていたようには見えないんだよな。」矢崎事務所の謎の美女も言う「或いはそう思い込もうとしていたのか」。御手洗は「嘘つき」の自覚はあるものの、その思いが強ければやがて本当になると半ば本気で信じている。
 でも、カオルに「兄は嘘つきでしたか?」と聞かれたタケルは「御手洗は、俺たちの前では嘘は言っていなかったと思う」と答えた。同じ誕生日の二人の前では真っ当であろうとしたのかもしれない。だから、20才の誕生日、児童施設で育ったことを初めて打ち明けたのだ。

■太陽と地球と月

 最初は、御手洗は明るく太陽みたいと思っていた。しかし明るい面は仮の姿、精一杯そう演じて生きていた人だった。多くの人を夢中にさせるだけの魅力溢れる人だったんだろう。
 対してタケルは、嘘が付けない人。その真っ直ぐさが、眩しい。①の記事で「唯一誰にも依存していない人」と書いたけど、タケルはやっぱり太陽だったんだなぁ。

■監督は言わなかった。

 あまり言ってくれなかった。言いたくなさそうだった。ただ、「俺横顔ばっかりじゃない?」という真田くんに「御手洗はあえて横顔ばかりを映している」と言った。側面しか映さないことで、御手洗には別の顔もあることを表していたのでしょうか。

 そんな監督もこれだけは言った。「カオルと関わるものはなるべく「変に」なるように意識した」と。それで思った。映像にはカオルの空想も混ざってるのかもしれないと。

・興信所の方々に依頼したのは誰だったのか。そもそも現実なのか。
・文化祭の会場からの、カオルと御手洗の追いかけっこ
・矢崎事務所
・最初の御手洗からのメッセージは本人からだったのか

「どこまでが現実かわからない」
 そうなると、みさきも、現実に付き合わされてるのか、カオルの妄想に付き合ってあげているだけなのかわからなくなってくる。カオルは何のために行動していたんだろう。同じ境遇で育った御手洗の唯一の理解者でもあるカオルは、御手洗の嘘を本当にする辻褄合わせのために現れたのだろうか。そうすることで自分の生をも報われる気持ちだったのかな。

 新田桃子さんはクールにカオルを演じたけれど、野元空さんバージョンのカオルちゃんも見てみたかったなと思う。人情味溢れる、まったく異なったカオル像になったのではないだろうか。

 結果的に御手洗は、カオルの手を借りて30才になる二人の背中を押してあげた。ラストは讃美歌で、というのは監督の案。初見ではもっとポップな曲が良かったなと思ったけれど、やっぱりここは讃美歌で良かった。ラストで全てが綺麗に召されていく。タケルのモヤモヤも、レンカの未練も。20代の抵抗も、なかなかうまくいかない人生も。そして御手洗の存在も。

御手洗甲の人生も肯定したい
 やっと、私も真の御手洗に会えた気がしました。純粋で、明るく振舞い、嘘をつくしかなかった御手洗に。30才の誕生日を(たぶん)迎えられなかった御手洗を、これからも毎年祝ってあげたいな。

 美勇人くんと共に。

■フライヤーの裏面に寄せられた真田くんからの大切なメッセージを紹介します

30歳までに映画を作ろう。

僕がエンターテイメント業界に入ったのは12歳。 今年30歳。 昔から映画が好きだった。誰かの世界に 飛び込むことができて非日常を体験できる。 一つの世界しか知らない僕にとって映画は人生の教科書だっ た。 そんな想いを胸に大学は映像学科を選んだ。 映画に携わりたいという想いだけで志望をした。 役者 として映画に出たいとも思っていたが、30歳になった現在もチャンスを掴めず、出れない葛藤に嘆く毎 1日だった。 映画への拒絶もでた。 「自分は大器晩成だ!」 とか言って、 自分の感情に蓋をした。

そして僕は芸能界を一度去り、再び戻ってきた。
ある日、20歳の時に書いたであろう 「20代のうちにやりたい事リスト」を見つけた。大抵は叶っていな かったが 「映画に携わる」だけは諦めきれずにいた。 悩んだ結果、 出れないなら作ってしまえと思い行動 した。 大学時代の恩師と仲間に声をかけ、 貯金を引っ張り出して、今作品の映画 「30S」 を制作した。 潤沢な予算があるわけではないのに、 青春を一緒に追いかけてくれた皆に感謝している。 ありがとう。

エンタメ育ちの僕が映画を作る。
でも絶対に “エンタメ映画”ではなく“映画” を作りたかった。 題材は30歳をテーマにしたオムニバス作 品を選んだ。 様々な30歳が交錯する5日間の話だ。 一丁前にオーディションも開催した。 見られる立場 から見る立場になった。 すごい経験をさせてもらい本当に感謝している。

人生はいつまでも不安だ。
だけど生きてればいいことが絶対にある。 きっと大丈夫。僕も誰かの背中を押せる日が必ず来る。 だから、 自分の人生に抵抗して抗ってみようと 思う。 僕たちの作った映画 「30S」 が誰かの心を照らし救ってくれる日を楽しみにしてる。

映画館で待ってます。

原案・プロデューサー 真田佑馬

30S フライヤーより