山本竜也

1976年大阪生まれ。北海道で地方史や個人史を題材に文章を書き続けている。著書『地方史…

山本竜也

1976年大阪生まれ。北海道で地方史や個人史を題材に文章を書き続けている。著書『地方史のつむぎ方』(2024年)など。 これまでの著作物一覧→http://minami-siribesi.world.coocan.jp/contents/profile.htm

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  • 地方史をつむぐ

    北海道で地方史研究。

最近の記事

どこからこんなに人が

 『地方史のつむぎ方』刊行記念のトークイベントを計画したスタッフ一同には一抹の不安がありました。4月26日の前日打ち合わせでは、その話題が何度も登場しました。「お客さん、どのくらい来るんだろうね?」。  「チラシをメールや郵送で送って、15人ほどから行くと返信がありました」と私。「数人の知り合いは来てくれる」と司会の東田秀美さん。「両親と友達で3人は来ます」と尚学社社長の苧野圭太さん。合わせれば、最低でも20人くらいにはなるか。しかし、チラシやSNSなどで募集していた事前質

    • フィルム写真をデジタル化 江別にて

       ひと昔前はデジタルカメラなどなかった。写真はフィルムに記録された。その時代の写真を保存するにはどうしたらよいのか。フィルム自体を保存することも大事だろうが、フィルムは劣化するし、ポジフィルムならともかく、ネガフィルムの場合は何が写っているのかも分からない。  デジタルデータ化すれば、どちらの問題も解決する。ところが、この作業は労苦を伴う。フラットベッド型のフィルムスキャナーを使ってパソコン上でデジタル現像するには、解像度にもよるが、数分はかかる。そのあいだは、待っているし

      • 紀伊國屋書店札幌本店でトークイベント開催

         4月27日(土)14時から、紀伊國屋書店札幌本店で、「地方史のつむぎ方── 調べ、聞き、書き、出版する」と題して、話します。『地方史のつむぎ方 北海道を中心に』の刊行記念に、版元の尚学社と紀伊國屋書店が企画してくださいました。地方の歴史や個人の歴史を調べるにはどうしたらいいのか。資料を探し、人に話を聞き、文章にまとめて、発表してきた方法を紹介します。入場無料です。ぜひお越しください。 https://store.kinokuniya.co.jp/event/17116063

        • 会えなかった人たち

           『地方史のつむぎ方』には、はじめ、私の地方史調査の経験や知識を書いていた。しかし、書き進めるうち、自分の知ることはあまりに少ないと気が付いた。たとえば、古文書を読めない私が古文書を読む方法を書けるわけがない。そこで、各地で地方史に取り組んでいる人たちにインタビューすることにした。といっても、誰に会えばいいのか。すぐに顔が思い浮かぶ旧知の人たちもいるが、できるだけ多くの分野の人に話を聞きたい。図書館や書店に行き、北海道の本コーナーに並ぶ本を眺める。「これは」という本を見つける

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        • 地方史をつむぐ
          10本

        記事

          『地方史のつむぎ方』を発想する

           2018年7月、北海道科学大学に呼ばれて、『地方史をつむぐ 聞き取り取材から出版まで』という講演をすることになった。それまでも講演をしたことはあったが、大学生ではなく、年配の方々が相手である。私の話が若者の興味をひくだろうか。不安を抱きつつも、『南後志に生きる』のなかの一章について話した。幼い頃に父親を事故で亡くした女性から電話が入ったことをきっかけに、その事故を報じる新聞記事を見つけ、残された妻子のその後を尋ね、文章を書いて、自費出版に至るまでの顛末である。  1時間ほ

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          国会図書館デジタルコレクションで人探し

          1.インターネット以前の時代を検索できる  国会図書館が所蔵する書籍や雑誌をデジタル画像化して公開する「国会図書館デジタルコレクション」は、歴史を調べる者にとって欠かせない存在となっている。わざわざ東京に行かずとも、家で資料を見られるのだから、ありがたい。しかも、このサービスが始まった当初は、タイトルと目次をたよりにページをめくるしかなかったのに、2022年12月の大幅リニューアルによって約247万点の資料の全文検索が可能となった。  この全文検索のなにがすごいのか。一

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          明治以来の北海道新聞の検索法は?

          1.新聞は歴史資料の宝庫  日々の出来事を報道する新聞は、歴史資料の宝庫である。政治、経済、教育、社会、文化など、あらゆる情報が載っている。地方史を調べるのなら、これを使わない手はない。北海道の場合、1878年(明治11)1月7日に函館新聞、1887年(明治20)1月20日に現在の北海道新聞の前身にあたる北海新聞(のちに北海タイムス)が創刊された。それから現在に至るまで、約140年分の報道の蓄積がある。  ところが、それらを調べるのは一筋縄ではいかない。現在の記者は、パソ

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          北海道の市町村別人口を調べる

           北海道の市町村別人口は何年から残っているのか。また、現在まで途切れなく手に入れられるのか。  私が寿都(すっつ)町の歴史に興味を持ったとき、「今は3600人しか住んでいないけれど、明治時代には3万人も住んでいたんだよ」と聞くことがあった。本当なのか気になった。だが、町役場に尋ねても、1920年(大正9)の第1回国勢調査以前の人口はまったく分からないという。そこで、自分で資料を探すことにした。調べるうち、『自明治元年至明治十四年 松前寿都島牧歌棄磯谷村別戸口表』や『北海道庁統

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          「歴史を調べてレポートを書け」と言われた高校生はどうしたか

           1992年の春、高校に入学したばかりの生徒たちに、大学を出たばかりの男性教員が問うた。「なんで歴史の勉強をせなあかんと思いますか?」。  生徒たちは顔を見合わせるだけで、なにも言わない。  「君たちはやらされるからしょうがないと思うだけかもしれない。でも、歴史というのはじつは面白い。それが証拠に、これから君たちが高校を卒業し、大学を卒業し、社会に出たときに、かならず歴史好きのおじさんに出会うことになります。そんな人と話をあわせるために、歴史を勉強する。といったら、しょうもな

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          プロフィール・著書

          山本 竜也(やまもと たつや) 1976年、大阪府に生まれる。北海道大学大学院地球環境科学研究科修士課程修了(雪氷学)。2003年に気象庁に入庁後、東北・北海道各地を移り住む。仕事のかたわら、地方史や個人史を題材に文章を書き続けている。札幌市在住。連絡先:minamisiribesi@hotmail.co.jp 【著書】 『地方史のつむぎ方 北海道を中心に』(尚学社、2024年):販売中 地方史を調べ、聞き、書き、出版する方法は? 炭鉱・鉄道・古地図・女性・先住民族・空

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