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「タイタンの妖女」感想と太田光の解説とファミコンMOTHERと

爆笑問題の太田光が愛し、奥さんが社長をしている社名の由来になったSF小説を読みました。

太田光は不思議な人だ、ファンでもあの人のすべては受け入れられない。
しょうもないギャグもセクハラも問題発言も、台本通りじゃなくて人間として考えていたことが間欠泉みたいに制御できず口から出てしまう感じだ。で、「ちゃんと」問題発言をする。毎回たたかれて、しっかりダメージ受けてるようなのに、また人を怒らせる。

冷静なときの太田光には興味をひかれなくても、テンションがおかしくなっている時の語りには胸をぐっとつかまれる。

お金がないときに結婚して、ファミコンのMOTHERというRPGを新婚旅行のように遊んで、さいごにラスボスの倒し方を見つけたエピソードなんて、最高にうらやましいゲーム体験だ。(どこで読んだんだっけ。イトイ新聞かな)

「タイタンの妖女」は解説が太田光だ。
脳になんらかのアンテナを埋められて、都合がわるくなったら記憶を消されたり思考を操作されていた主人公。
火星と地球で戦争をするために送り出されたはずが、水星に飛ばされて奇妙な仲間とともに生活することになり、地球に戻ってきたときにはなぜか救世主扱いされる。
最後は家族とともに土星の衛星タイタンで余生をすごす。
作者が戦争で人生を狂わされた影響なのか、主人公は滑稽な権力者に振り回されて人生めちゃくちゃにされて、それでも皮肉をつぶやいて自分なりに楽しみを見つける。

時系列も視点も人物の呼ばれ方も独特で、話の筋が追いづらくて自分の理解力と集中力不足だと思ったけど、太田光解説が助けてくれた。

小説というのは、読んでいる時は連なった時間として順を追って読んでいるが、読み終わって過去の記憶になった時から、徐々にまとまった一つのイメージとして、同時に全ての物語を思い出すようになる。小説全体が、一つの思い出になる。

「読みにくいのはあまり気にしないでほしい」そうだ

「タイタンの妖女」と「マザー」は似ている気がする。
ストーリーが緻密に計算されたものではなく、面白かったり悲しかったり、作者の浮かんだイメージを次々に投げつけられて、完全に「これはこういうことで、こういう意味だな」と理解できなくても、とにかく最後まで進めてクリアしてちょっと頭の中で寝かせておくと、

「こんな感じの話だった気がするなあ」
と、プレイヤーの頭の中で完成するのだ。


読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。