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(読み切り小説)絆、キラリ

その昔、まだ人間が
獣の皮で作った粗末な衣類を身に付け
ようやく松明のようなモノに
あかりを灯せるようになった頃のお話。

あら、また火が消えた。

山肌に沿った洞穴は
夜になると強い風が絶えず吹き込み
何度灯しても火は消えてしまう。
当番を割り当てて誰かしらが毎日
朝まで寝ずに番をする日々。

他の生き物の侵入を防ごうと
知恵を絞り足元の悪い崖に居を構えても
屈強な身体を持つ獣たちが
夜な夜な恐ろしいうめき声で
か弱い人間を捕獲しようとしている現実。

山に入るのも川に降りるのも
なるべく昼間のうちに済ませ
それこそ沢山収穫して帰る、絶対に。

そんなある日。

サチ、お前それは、、何だ!?

両親に付いて歩き
木の実など集め喜ぶまだ幼いサチが
気付くと毛むくじゃらの生き物を
嬉しそうに抱えていた。

そ、それは獣じゃないのか?

うん、でもまだ小さいよ。
赤ちゃんかも。

確かに小さいサチにすっぽり収まるサイズ
何かの獣の子供なんだろうと思われる。

しかし獣は獣だ、小さくても危険だ。

両親はサチと謎の獣を引き離そうと
近付いてついで良く観察したが
全然検討も付かない生き物であった。

今まで見た事ないやつだ。
いったい何の獣の子供なんだろう?

いつの間にかサチ達の周りには
人だかりが出来、皆口々に
何だろう?早く他所へやらないと
危ないんじゃないか、、
困りはするが行動まで移せない。

騒ぎはどんどん大きくなり
とうとう誰かが長老を呼んだ。
こんな時は長老の助言が1番なのだ。

サチ、ちょっと見せなさい。
ああ大丈夫、そんなに近付けなくても
ふむ、ずいぶんと柔らかい毛並みで
こらこら顔を舐めるんじゃない!

クンクン、モフモフ
謎の獣はとても懐っこかった。

つぶらな黒い丸い瞳には
恐ろしい獣特有のギラ付きなど微塵も無く

サチを含め長老も
様子を観察していた皆も
いつの間にか謎の獣の虜になっていた♡

長老、この子連れて帰ろうよ。

いやしかし
親が近くに居るかも知れない。
取り戻しに来たらどうする?
大人は凶暴な獣だったら
最悪、わしらに危害が及ぶやも、、

ガサ、ガサッ。

話を全て聞き終え見計らったかのように
小さい獣の親兄弟みたいな生き物たちが
数匹、茂みから覗いた。

うわぁ、全部可愛い!!
大きいのも小さいのも皆モフモフだ。

獣たちはとても友好的だった。

憶測かもだけど、そこに居た全員が
この生き物は仲間になりうるであろう
そう確信し、日も暮れた山道を
謎の獣たちを連れ立ち歩き始めた。
何の迷いもなく。

その日から
謎の獣たちは人間にとても尽くしてくれた。

人間が不得手な火の番も
率先して行い、鼻がとても良いらしく
火が消えそうになる前に匂いで教えてくれる。

恐ろしい獣の匂いが風に乗り届くや否や
それも直ぐに教えてくれるので
お陰で危険を回避出来るようになった。

ワンワン、ワンワン!

可愛らしい見た目
頼もしい吠え声、全てが愛しい生き物は
洞穴にうずくまり恐ろしい獣に怯えた夜を
そっくり明るく変えてくれたのだ!

本当に可愛い、大好き!
ずっとずうっと一緒に居ようね!

サチに育てられた小さい獣は
大きくなったサチとずっと一緒に居た。

でも、ずっと一緒に居たかったけど
少しだけ人間より早く旅立った。

ずっと、ずうっと一緒に居ようね!
その約束だけをお互い携えて
サチと謎の獣は命を繋いだ。

進化という地球の営みの一部に
きちんと互いの思いを引き継いだ。

生まれ変わっても
新しい自分らになっても
必ず再会して、ほらまた
ずっとずうっと一緒に居れるよ。

人間と犬の絆の深さ
それは実は遥か昔
たったひとりの少女と一匹の出逢い。

刻まれたDNAにひとりと一匹の
必ずやまた一緒に、という刹那が
流れているからなのかも知れない。

また逢いたいな。

それだけで、時も駆ければ
空も飛べるような気持ち
抱えたサチと謎の獣のストーリー。

キラリと光る
絆のキラキラ、嬉し涙もキラリ。


犬と人間の説明不可能なぐらいの
謎の相性の良さに思いを馳せて
書いてみました。
犬好きによる犬好きの為のお話🐶

ここまで読んで頂き
ありがとうございます!










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