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雨の日に娘と歩いた日の思い出は、いつかわたしを喜ばせるだろう

わたしは、車がないと移動ができない地域に住んでいる。
わが家は、大人ひとりに一台車を持っている。

車社会で生活していると、
ほんのちょっと歩くのが面倒に感じる。
雨なんか降ってようものなら、
車を使う以外にあり得ない。

保育園までは徒歩5分。
そうなんだけど、
朝、往復10分している時間もないので、
車でたったの1分で保育園に行く。
そしてそのまま出勤。

どんな荷物が多かろうが、雨が降っていようが、
快適に移動できるのはありがたい。

きょうは、行事の練習があるので、
お母さんはお休みだけど、娘は登園する。

ゆっくり歩いて行ける機会は少ないから、
きょうは、歩いて登園することにした。

外に出ると雨が降っていた。
子どもたちが、「あめなのに、あるいていくの?」と聞く。
「そう、きょうは雨だけど、傘をさして行こうか。」

娘にとっては、傘をさして歩くというのが
今、格別に楽しいらしい。

水たまりに入るとどうなるのか知らないから、
水たまりにジャンプして、
靴がびしょ濡れになってしまった。

「くつがびしょぬれになってしまったの。」
と教えてくれる。
「そう、靴がびしょ濡れになってしまったね。」
「みずたまりにじゃんぷしたら、
びしょびしょになってしまったの。」
「そうだね、みずたまりにジャンプすると
靴がびしょ濡れになるよね。」

「ねえ、きょうはどうして
こっちからほいくえんにいくの?」
「きょうはゆっくりだからね、
お母さんはきょうはお昼に迎えに来るよ。」
「えー、おひるかー。」
「お昼じゃない方がいいの?」
「・・・。」

他愛のない、
だけど、
今にしかできないやりとりをしながら、
あっという間に保育園に着いて、
娘は、ご機嫌で先生と門の中に入っていった。

もうあと、数年もしたら、
水たまりにジャンプして
靴をびしょ濡れにすることもなくなるだろう。
いや、お兄ちゃんの靴はいつも泥だらけだ。
今でも、水たまりにジャンプしてるんだろう。
だけど、びしょ濡れになった靴のことを
知らせてくれることはもうなくなった。
雨が降っても、傘をさして歩くことを喜びはしない。

靴がびしょ濡れになったことに
心が動く時期って
ほんの今だけのことだ。
傘をさして歩くことが
特別に嬉しいことも
今だけ。

わたしは、まだよく理解できていないけど、
大変だと思っている一つ一つのことは、
もう一度体験したいと願っても、
もう2度と来ないかもしれないのだ。

子育ての先輩が、
みな口を揃えて言うから、
大体の母は、
そういう寂しさを抱えているんだろう。

そうならば、
ちょっと大変だったり、
面倒くさいことも、
後になれば、
もう手に入らない宝物のようなものになるのかしら。

もう、手には入らないけど、
そのキラキラした宝物は、
わたしをもう一度喜ばせてくれるだろう。

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