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1000円の使い道

※こちらは続きものです。
前の話はこちら

次の日。
財布に入った1000円札は使えずにいた。
大学の職員さんに事の経緯を説明した。
何か“いわく付きの1000円”に見えてきて、使えそうもない!と。
どうしようかなと一緒に考えてくれた。

「じゃあさ、自分のことじゃなくて、“誰かのため”に使うのはどう?」
そうアドバイスがあった。
なるほど。それなら使えるかも。

1000円で社会貢献……?
それにしては額が少なすぎる。
誰かのためにか。
そんな時に母方の祖母を思い出した。

少し前に祖父が亡くなり、老健施設に入ったばかりだった。
「いつでも遊びに来ていいからね」
そういう祖母は少しさみしそうだった。
そうだ!
祖母に会いに行く交通費と祖母と一緒に食べるおやつのお金にしよう!

そうと決まれば行動に移すのみだ!
私は早速計画した。
2時間目終わり、お昼は食べずに電車に飛び乗った。
祖母がいる老健施設は駅から7分ほどということはリサーチ済だ。
知っている電車なので今回は迷わない。

乗換案内で時間を確認し、乗換時間が長い時間帯の時に途中下車。祖母と一緒に食べるおやつを考えた。
おばあちゃん甘いの好きだけど、いい感じの和菓子売ってないな……。あっ、これにしよう!
スプーンで食べるフルーツ入りゼリーを購入した。

2両編成の電車に乗り、ドキドキワクワク。
おばあちゃんビックリするかな。
母には行くことを告げたが、祖母には内緒にしていた。

到着し、迷いなく祖母の部屋に入る。
「おばあちゃ〜ん。」と顔をのぞかせると、祖母が「あぁ、来たの?」と少しうれしそうに答えた。

「うん、会いたくなっちゃって。
ゼリー買ったから食べよ!」と私は言い、たくさんおしゃべりをした。
後日祖母は、自分の娘である母に
「妹の方がおしゃべりと見せかけて、ミンチョンの方がよっぽとおしゃべりやで〜!」
と言っていたらしい。

何の話をしたのかは忘れちゃったけど、私にとってかけがえのない思い出になったことは間違いない。
母方の祖母は亡くなってしまったが、「一番の思い出は?」と聞かれると、このことを最初に思い出す。

1000円を自分のことに使うのではなく、祖母の為に使った。
その交通費で祖母との時間を楽しみにする。そのおやつ代でどれならおばあちゃん喜ぶかな?と考える。1000円以上の価値があったのではないかなと私は思った。

急に手に入った1000円札。
あなたなら何に使う??

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