隙あらば、ペトロのツムジを撫ぜていた

これは私が高校生の時の話だ!

その頃の私は思春期MAXで当時流行ったエッグポーズを常時かましながら街を闊歩していた!
当時は私のような若者が多く、私たちエッガーは常に腕に溜まる乳酸とお洒落の狭間で苦労していた!
あの頃は兎にも角にも角煮にも、モテたい一心で生活していた!
そのおかげか他校の女子から、
「あのエッグポーズかましてるメンズイケてねぇ?!」
「是非、お近づきになりたくねぇ?!」などと逆ナンをされたものだ。
今思えば恥ずかしくて顔からファイヤーどころかマグマが吹き出しそうなエピソードだが、青春ってやつを謳歌していた若気のイタリアンということで勘弁してほしい。
そんな思春期MAXをかましていたある日のこと、学校帰り地元のコンビニで実話ナックルズを手に取ろうとた。すると同じようにナックルズを取ろうとしたであろう人の手とぶつかった。漫画とかでよくある同時に本を取ろうとして恋が始まるあれだ。
ぶつかった手の人を見ると同じクラスメイトの篠塚モナミだった。篠塚モナミ通称ペトロは、真面目なヤツらが多いウチのクラスでもトップ5に入るほどの真面目女子だった。髪なんてもうそりゃ三つ編み満載で、スカートの丈は脛下(すねした)5センチ程のロング、黒縁のメガネで休み時間はシャー芯の入れ替えを怠らないような絵に描いた真面目女子だった。何故、彼女がペトロと呼ばれているのかははっきりとは分からなかったが、おそらく女子の中では高身長の167センチという身長と少し日本人離れしたくっきりとした目鼻立ちがどことなく外国人みたいだからであろう。高校生の考えるあだ名なんて本当に適当だ。
しかし、あの真面目女子ペトロが実話ナックルズを?
「あれ?ペト、あっ、じゃなくて篠塚さん?
篠塚さんみたいなしっかりした頭もいい女子がなんでこんなアウトローな雑誌を?」
「今〇〇君、ペトロって言おうとしてたでしょ。
フフッ!いいのよ!ペトロで!みんなが私のことペトロって言ってるの知ってるんだから。
私ね、今まで16年間、ずっと親の言うこと聞いて真面目に生きてきてあんまりハメを外したことないのよ。
だから少しだけ悪そうなことをやりたくて、でも悪そうなこととかわからないでしょ、それで実話ナックルズってわけ!笑」
そう言って少しイタズラっぽく笑ったペトロは、何故かセクシーで俺は不覚にもドキッとした。
(あれ、ペトロってこんな可愛かったっけ?)
まぁ、お洒落とは無縁なだけで元々の顔立ちやスタイルは良かったからよく考えれば笑顔がセクシーなのも納得だ。しかし、ペトロ、色々考えた挙句、実話ナックルズの熟読から始めようなんて、発想が頭一つ抜けてるぜ。
「だったらさ、少し悪いことしたけりゃ、俺がプロデュースしてやるよ!いや、プロデュースなんて言うと大袈裟だけどさ、俺一応年相応のヤンチャはしてきたつもりだからさ、色々と教えられそうなことあると思うよ。」
「本当?んー、でも確かに〇〇くんて少しアウトローな雰囲気あるよね。わかったわ!それじゃこの実話ナックルズが教科書で〇〇くんが先生として、私にちょい悪アウトローを教えて」
随分とパンチのきいた教科書だが、ペトロの目の奥の真剣な輝きを見ると、自分を変えたい女子の純粋な想いがビシバシ伝わった。
「OK!それじゃとりあえずこの雑誌買って近くの公園で読もうぜ!」
こうして俺とペトロの奇妙な課外授業がスタートした!
俺はまだこの時知るよしもなかった。
これが地元を揺るがす独裁者の誕生に繋がることになるなんて

続く

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