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ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(1)

はじめに

フロレンス・ナイチンゲールの生誕200年にあたる2020年の世界は、新型コロナウイルス感染症によって社会が大きな困難を抱えています。未知の感染症が世界中に広がり、経済や社会の活動が停滞し、人々の仕事の方法や生活のあり方に変化が求められています。

ナイチンゲールが生きた19世紀から20世紀初頭の英国は産業革命がもたらした社会構造の大きな変化に直面していました。都市に人口が集中し、貧富の差が生まれ、不衛生な環境から、赤痢やコレラなどの疫病が蔓延していました。都市部で働く労働者家族の死亡平均年齢は15歳から17歳というデータも残っています。中流階級男性の平均寿命とされる45歳の半分以下でした。

当時といまを一概に比べることはできませんが、社会に蔓延する病気によって人々の健康や生命が脅かされている事実は共通しています。感染症という見えない敵に、どう立ち向かい、叡智を結集してそれを乗り越えていくのか。それまでにない発想と方法、実践力で困難な局面を切り開いていったナイチンゲールに学ぶことは何でしょうか。

—ナイチンゲールの足場から〝いま〟のわたしたちを見たら—

ナイチンゲールは看護という新たな領域の礎を築きました。看護という方法を生み出し、看護という方法で社会を良くしようとしました。では、同じように看護という方法でいまのわたしたちを見たときにどんな光景が見えるでしょうか。そこからなにを観察し、なにを考え、なにを実践できるでしょうか。

ナイチンゲールは「女性は誰もが看護師なのである」と言います。その言葉を「人は誰もが看護師である」と言い換えて、考えていきます。

ひとりでも多くの人にナイチンゲールが言う「生活を整える」ことの大切さを伝えたい…、そんな願いからnoteで発表することにしました。本記事は一般社団法人チーム医療フォーラムの季刊誌『ツ・ナ・ガ・ル』35号(2020年6月発行)の特集記事を転載したものです。ほぼ毎日「1章」か「1節」ずつ記事を掲載していきます(下記の目次をご参照ください)。

※本記事は以下に記載した文献を出典とし、参考にしています。 看護覚え書 フロレンス ナイチンゲール (著) 現代社、新版 ナイチンゲール看護論・入門 金井一薫(著) 現代社 白鳳選書、ナイチンゲール言葉集 現代社 白鳳選書、ナイチンゲールの『看護覚え書』金井一薫(著) 西東社、看護覚え書きフロレンス ナイティンゲール (著) 日本看護協会出版会、フロレンス・ナイチンゲールの生涯 宮本百合子 (著) Kindle版、他。 
・記事監修:秋山和宏(医学博士、東葛クリニックみらい院長)

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