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ゆびねこ

その日、とてもかなしいできごとがありました。
なっちゃんは、夜になってねむれません。
思いだすたびにかなしくなってしまいます。
なっちゃんはふとんの中でないていました。

とつぜん、なっちゃんのおなかの上に、ポトリとなにかがおちてきました。
びっくりしてみると、そこには小さな子ねこがいました。
なっちゃんのおなかの上で、ニャーニャーとかなしそうにないています。
「もうなかないで」
「だいじょうぶだから、こっちへおいで」
やさしい声がきこえてきました。
いつのまにかお母さんねこがそばにきて、子ねこをなぐさめています。
お母さんねこは、なっちゃんにも、はなしかけてきました。
「あんたもかなしいことがあったんだね」
「かわいそうに…でもだいじょうぶだからね」
「なにもしんぱいすることなんかないの…」
「ゆっくりおやすみ…だいじょうぶだから…」
「そばにいるからね…」
なっちゃんのおなかのあたりが、ほんのりあたたかくなりました。

気がつくと朝でした。
なっちゃんは、きのうの夜のことを思いだしました。
なっちゃんのおやゆびくらいのねこでした。
ゆびねこ… 
そう、ゆびねこだった…
なっちゃんのおなかのあたりはほんのりあたたかいままです。
ゆびねこが守ってくれているんだ…
なっちゃんはなんだかつよくなったような、
そんな気がしました。
だいじょうぶ…だね。

なっちゃんの一日がまた始まります。

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