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シカゴ連銀景気指数と対中制裁

 また、米国経済の強さを示す経済指標を見つけました。シカゴ連銀景気指数は、85種類の月次指標の加重平均の指数で、全米活動指数(CFNAI)ともいわれます。経済活動全体と相関するインフレ圧力を測定するための月間指標であり、平均値が0,標準偏差が1になるように作成されています。
 データは「生産・所得」、「雇用・失業・労働時間」、「個人消費・住宅」、「販売・注文・在庫」の4カテゴリーで見ることができます。予想より高い数値は米ドルの買い材料であるとされますが、予想より低い数値は米ドルにとって売り材料と解釈されます。
 3月のシカゴ連銀景気指数は0.15と予想(0.07)以上に改善し昨年11月以来で最高となりました。2か月連続のプラスと潜在的水準を上回りました。2月は+0.09でした。生産関連は+0.11プラスに寄与しましたが、2月の+0.13からは低下しました。雇用関連は+0.04と2月の-0.01から増加しました。個人消費・住宅は-0.01と2月の+0.02からは低下しました。販売・注文・在庫は0.00と2月の-0.05から増加しました。
 予想以上の押上は、米国経済の堅調さとドル高材料となります。特に雇用での高い値はサービス部門での消費者物価指数について注目すべきです。インフレ圧力の高まりからFRBの利下げ期待がさらに後退する恐れもあるからです。
 米国は高金利であるにも関わらず、経済が堅調です。経済が軟調になれば利下げの動機が働きますが、この状況で、原油高による高まるインフレ圧力でインフレ抑制が緩慢になるようであれば、利下げ判断は後退すると思われます。
 個人消費に陰りがみえてくるとシカゴ連銀景気指数は再び悪化に向かうでしょう。地政学リスクからインフレ懸念が再燃してくると消費が抑制されてくるからです。利下げ後退が利上げという可能性すら示唆されてくると株価が低迷、企業の業績にも影響が出てくると米国経済は正念場を迎えることになります。
 シカゴ連銀景気指数は、インフレ圧力をみる指標ですから、この動きは注目してみる必要がありそうです。
 一方、米国政府の中国への経済制裁が目立ってきました。中国国内は消費低迷のため、特定のセクターが過剰生産、過剰供給で世界へ影響を及ぼしています。党派を超えて中国への制裁案件は議会を通りやすいことも要因としてあります。
 米国製造業を守る姿勢が鮮明となっており、今年は大統領選も控えているので支持者を増やすことに躍起になっています。中国の過剰生産の象徴である太陽光パネルは、米国にも影響を及ぼしています。
 バイデン政権は、太陽光パネル設置に1兆円の補助金を出すことを決めました。約90万世帯が対象となりますが、これも若年層の支持を得たい考えとつながりがありそうです。また、米国の太陽光パネル業界に恩恵をもたらします。
 金融制裁も予定しているのは、中国がロシアへ軍事支援をしている疑いがあるからです。米国の閣僚が相次いで中国を訪問しているのは対話の継続、チャンネルを維持したい思惑もありますが、政治的に中国政府をけん制しているのでしょう。
 中国も米国内のTikTok禁止法案に対抗する動きに反応し、アップル社にメタのアプリWhat’s upを中国国内に流通するiPhone向けに削除するよう命じたのは、中国も製造業を強化の柱としているからです。
 両国の製造業をめぐる国内産業保護政策は、当面、続くと思います。これによる分断は金融システムでも起きています。インフレ圧力の警戒と、中国製造業の台頭は米国にとって頭の痛い問題と考えているようです。

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