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日本のジェンダー問題の根幹に巣食う癌と、その発癌物質

アメリカのレイプのように劇的ではないながら、「少しづつ毎日」の屈辱が女性を精神の死においやる様々な可能性を、こちらのマガジンでこれまで見てきました。

今日は当シリーズの締めくくりとして、(たぶん)世界的に珍しい日本のイケメン・コンプレックス男性についてを考えます。というのは、「醜形恐怖」という精神疾患があると習ったことがあるから。

経済学部卒ですが心理学に興味があり、アメリカのUniversity Of North Dakota で心理学専門科目の単位を取りました。醜形恐怖は「異常心理学」のクラスで習った概念。

ティナ・フェイという美人女優さんが実はこの疾患を患っているそう。スクリーンではセクシーないで立ちで惜しみなく美貌を晒す彼女が、プライベートでは悪趣味なキャラクターTシャツを愛用し、すっぴんボサボサ頭で過ごす様子が写真や動画で紹介されました。

つまり、自分の顔形を必要以上に気にするのは、正常ではないのです。下記の日本人イケメン・コンプレックスを「たぶん世界で珍しい」としたのは、学術的な理由からです。

上記では、私がもらったSNSの友人リクエストから、イケメン・コンプレックスの男性が女性を誘うことを「厚かましい」と感じる現象に着目。昔の日本のお見合い制度が、こうした男性の躊躇を踏まえての合理的なお節介であったと分析しました。

並んで日本男性の特徴として代表的なのは、世界の男性に大人気な「痴漢」。なんと、痴漢をしたいために日本に移住する「外人」もいるそうです。

私の中の「女」を殺した痴漢体験はこちらです。

痴漢は近年、ようやく犯罪と認定されるようになりました。にもかかわらず、相変わらず痴漢の被害が後を断ちません。窃盗や殺人のような犯罪が後を断たないのは、世界共通の人間の性でしょう。でも痴漢は日本特有。「それぐらいは許される」という日本のジェンダー問題の根幹に巣食う癌――そう定義したいです。

その癌の有力な発癌物質は、日本の戸籍〜家父長制。

例えば、日本の女性が結婚したら必ず直面する必要悪=数々の公的登録変更の煩わしさ。女性が自分のID証明を役所で取る度に、なぜか自分ではなく夫の名前がトップに書いてある不条理。

そのような手続き諸々は、遅効性の発癌物質のようなもの。2024年現在、セクシャル・ハラスメントのガイドラインがようやく普及し始めた日本でも、相変わらず「サブリミナル効果」として人々をじわじわと洗脳しています。

サブリミナル効果は、フランス大統領選挙に使われたことで一時期に社会問題になりました。当時よりはるかに動画が生活に浸透した現在。サブリミナル効果もどきが世の中を埋めつくしているために、逆に問題にはなり難くなっているかもしれません。

私はアメリカ在住の作曲ピアニスト。就労ビザ(O-1、EB-1)を取るために、アーティスト実績の証拠を提出する必要がありました。

結婚前のレコーディング・クレジットなどは全て旧姓。このままでは証拠になりません。自分が自分であることを証明する必要があるなんて、本来おかしな話なのです。

ところが日本国内では、「女三界に家なし」。女性に存在証明なんかなくて当たり前……が、全国民の無言の承知事項。会社などでは、全社員がこの前提なので、女子社員の姓が変わろうが何の問題もありません。

夫婦別姓の政府案が出た時分に私の娘が生まれた時に、私の母は「よかったわ。この子は結婚しても姓を変えなくていいのね!」と喜んでいたのです。

それがどうでしょう? 30年近くが経って娘が結婚しても、別姓なんて選べませんでした。職場では旧姓で通していて、最近は通り名にはどこでも対応している点は良かったとは思いますが……。

世界では、そんな話は通用しません。別姓が選べない国は日本だけ。私はアメリカ滞在のため、旧姓証明の戸籍謄本を取る度に、区役所で500円を支払ってきました。

政治の遅れは仕方ないとしても、どうして自分が自分であるために行政にお金を払わなくてはいけないのでしょう? 日本の戸籍のような家族単位登録は、世界で日本と中国だけだそうです。

こんなことを言うと、日本では「500円が払えないわけ? ケチるわけ? バカみたい」と言われます。戸籍とはそういうものなのに、と……。

で、戸籍筆頭者として(妻でもなれますがそんな例はほぼなし)男性は祭り上げられているだけに、あるはずの威厳と「イケメンではない」事実とのギャップが大きくなります。

カフェで人間観察していると、アメリカ人男性の「イケメンではない」率は日本と同じ。でもレディファーストの彼らが感じるコンプレックスと、日本の男性のそれを比べたら、その差は歴然。

偉いはずの戸籍筆頭者が「イケメンではない」。タイトルと現実のギャップを埋めるために、日本の夫は亭主関白に。かかあ天下の風土(上州)で育った私には、安いヤクザの「オラオラ」にしか見えませんが……。

また、日本の男性は現実が伴わない辛さを埋め合わせるために、「これぐらいいいよな」と痴漢を働きます。見て見ぬふりの社会に甘えて……。

500円をケチるのが「バカみたい」と言う人は、「痴漢ぐらいに目くじらたてて、バカみたい」と言うのでしょうね。痴漢に遭ったことを自慢話っぽくしている女性も、たまに見かけます。そういう人たちは、「ちょっとずつ毎日ずっと」のサブリミナルな怖さを知らないのです。

「ちょっとずつ毎日」の暴行で、精神は壊れます。

痴漢の場合は、「男性とのファンシーな触れ合いに一切夢を持てなくなる」ということ。自分の中の「女性」が死んでしまったのです。

これは殺人と同じです。どうか「ちょっとぐらいなら」と思う男性のみなさん、絶対にやめてください。そう思う人が満員電車の7割いたために、私の精神は壊れました。

「ちょっとずつ毎日」で精神が癌死するのは、「当マガジンで書いてきた全種のジェンダー問題についても同様」と改めて警鐘を鳴らして、この章を終わります。

次回からは、主に夫婦関係について考えていこうと思っています。お読みいただきありがとうございます。
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3/25補足:
戸籍謄本の発行手数料500円については、言葉が足りませんでした。この手数料には、条件付きで免除があります(たぶん身傷のかたなど)。「女性が旧姓を証明するために取る場合は、この免除条件に含めるべき」という意見です。

結婚前の自分が自分だと証明する手数料は、世界で例のない夫婦同姓を採用する社会全体が負担するべきだと思うから。

ケチと言われてもいいです。500円あれば豪華なランチにグレードアップできるし、カフェで好みのラテも楽しめますから!