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【日経新聞から学ぶ】英中銀、新政権と「逆行」量的引き締めで先陣~世界の金利はさらに上昇していくのか~

1.英中銀、量的引き締めで先陣

英中銀、新政権と「逆行」 量的引き締めで先陣
英国のイングランド銀行(中央銀行)が過去に買い入れた英国債の市場売却を早ければ9月中にも始める。インフレが想定を超すペースで進むなか、量的な金融引き締め(QT)とその加速でも主要中銀で先陣を切る。金融緩和の手じまいに向かうのに、トラス新政権は大規模な経済・物価高対策に動く。物価抑制をめざす金融引き締めと、インフレの種をまく財政拡張の「逆行」は市場混乱の芽となりかねない。

(出典:日経新聞2022年9月13日
(出典:日経新聞2022年9月13日

英国のCPI(消費者物価指数)の上昇率は7月に前年同月比10.1%と1982年以来約40年ぶりに2桁へ達しました。このインフレを抑えるために英国のイングランド銀行は量的引き締め(QT)へと舵を切ります。

2.量的引き締め(QT)とは

量的引き締めとはQTと呼ばれます。これは英語の「Quantitative Tightening」の頭文字をとった略称で、量的緩和「Quantitative Easing=QE」を解除することを意味します。

QT(量的引き締め)とは、中央銀行が経済におけるマネーサプライ(注:日銀はマネーストックと呼ぶ)、流動性、経済活動全般の水準を引き下げるために用いる収縮的な金融政策です。

中央銀行がなぜ経済活動を収縮するような手段をとるのでしょうか。それは、景気が過熱するとインフレを引き起こし、商品やサービスの価格が一般的に上昇してしまうため、それを抑えるために行うのです。

ほとんどの先進国とその中央銀行は2%前後の緩やかなインフレ目標を設定しています。これは、物価水準の緩やかな上昇が安定した経済成長には不可欠だからです。

しかし、現在、欧米をはじめ、世界で2%をはるかに超えるインフレが起きています。これは、QE(量的緩和)の副作用とも言えます。世界各国の中央銀行はコロナショックによって傷ついた経済を救済するために、QEで大規模な資産購入(国債、社債、さらには株式の購入のいくつかの組み合わせ)を実施しました。しかし、QEはインフレを引き起こすリスクを孕みます。インフレは過剰な景気刺激が引き金となって起こる可能性があるためです。そこで、QEの悪影響(インフレ率の上昇)を反転させるために量的引き締めが必要となるのです。

QTとは、中央銀行がこれまでに積み上げた保有資産(主に債券)を売却して、経済に流通するお金の供給量を減らすことです。これは、「バランスシートの正常化」とも呼ばれ、中央銀行が膨張したバランスシートを縮小させるプロセスです。

量的引き締めの目的は次の通りです。
・貨幣供給量を減少させる
・基準貸付金利の上昇に伴い借入コストを上昇させる
・金融市場を不安定にすることなく、過熱した景気を冷やす

QTは国債流通市場での債券売却によって実施され、債券の供給が大幅に増加すると、買い手を引き付けるために必要な利回りや金利が上昇する傾向にあります。利回りの上昇は、借入コストを上昇させ、これまで貸付条件が緩く金利がゼロに近い、あるいはゼロであった時にお金を借りていた企業や個人の購買意欲の減退につながります。借入が減ると支出が減り、経済活動が低下するため、理論的には資産価格の低下を招きます。さらに、債券の売却により金融システムから流動性が失われ、企業や家計は支出に慎重にならざるを得なくなります。

こうして、経済の過熱が抑えられ、インフレ率の上昇を抑えることができる金融政策がQTです。

3.米社債発行急増、利上げに備え

9月5日のレーバーデー明けから米大手企業の社債発行が相次いでいる。1日として過去最高の発行本数を記録するなど、米国債金利の上昇を見越して前倒しで発行しているとみられる。これらの社債は破綻リスクが低く、利率は米国債より高いため、米国債の需要が減る恐れがある。米連邦準備理事会(FRB)の量的引き締め(QT)の加速も重なり、長期金利上昇の勢いが強まる可能性がある。

(出典:日経新聞2022年9月13日

米国で社債発行が増えているようです。その背景にはFRBの金融引き締めがあります。通常、社債の利回りは国債の発行利回りを参考に、スプレッド(上乗せ金利)を決めて算出します。FRBの政策金利の引上げで国債利回りが上昇し、社債の発行利回りも連動して上昇します。米国の代表的な社債指標をみると、最終利回りは5%程度と年初の2.5%から大きく上昇しています。

(出典:日経新聞2022年9月13日

FRBがQTを実施しているため、国債の需給が緩んでいます。FRBは9月から保有国債の残高を減らすペースを8月までの最大300億ドルから600億ドルに増やします。9月7日時点の国債保有残高は5兆6900億ドルと6月初めの5兆7700億ドルから800億ドル近く減らしています。QTと社債発行の急増が重なることで、国債需給の悪化に拍車がかかりかねません。

QTと社債発行急増の二つの要因が重なった影響か、既に前週の米市場の長期金利の指標となる10年物国債利回りは3.1%から6月以来の高水準となる3.3%に上昇しました。

4.世界的な景気減速を引き起こすか


英国、米国のQTによって、金利が上昇すると、景気減速、景気後退のリスクが高まります。しかし、英国、米国、そしてEUも景気後退懸念よりもインフレ率上昇をストップすることに重きを置いた政策をとっています。

ということは、金利上昇は容認、そして、景気後退も容認となります。そのため、世界的に景気後退はやはり避けられないように思われます。その懸念が顕在化したのが、米国での社債発行の急増。

日本が金融緩和政策を継続し続ければ、世界との金利差は一段と開き、円安を促進する要因となります。

しかし、世界の景気が減速すれば、原油や天然ガスといったエネルギー価格が下落します。すると、日本の貿易収支の悪化に歯止めがかかり、円高要因になります。

もう少し、円安が続くかもしれませんが、本格的に世界の景気が減速すれば、日本の貿易収支が改善され、円高になってくるかもしれません。世界の景気減速が鮮明になった時、世界のお金は日本に流れてくるのではないでしょうか。

未来創造パートナー 宮野宏樹

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