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比例投票先の掲載開始について

 記事の掲載は7月8日ですが、最新のデータを反映して、23日に全てのグラフの差し替えをしました。


 今まで各社の世論調査をもとに「内閣支持率・不支持率」と「政党支持率」の平均のグラフを掲載してきましたが、これから当面の間は「比例投票先」もあわせた5枚の更新をおこないます。次の衆院選をみこした比例投票先の掲載は今回が初なので、あわせて簡単な解説をしていきます。

 ここに掲載するグラフは、いずれも左端が前回衆院選(第49回衆院選)の投票日(2021年10月31日)に設定されています。ですから次の衆院選を考える上では、直近の支持率の増減だけでなく、左端と比べて高いか低いかも重要です。その点にも注目してご覧ください。

内閣支持率・不支持率

 まずは内閣支持率と不支持率を見てみましょう。次の図1の太い曲線は、NHK、朝日新聞、読売新聞、共同通信などの各社が実施した世論調査をもとにして計算した、内閣支持率(赤)と不支持率(青)の平均です。

図1. 内閣支持率と不支持率の平均

 細かな点は割愛しますが、各社の世論調査には、調査の手法や質問のかけ方によって、高めの数字が出やすかったり低めの数字が出やすかったりする偏りがあります。そこで、図1ではそうした固有の偏りを打ち消す補正を行ったうえで、一定期間の移動平均をとっています。一つ一つの世論調査を補正した結果は、〇、□、△などの点で表示されています。

 図1の左端が前回衆院選にあたるといいましたが、2022年の7月にも、大きな国政選挙として、前回参院選が実施されています。岸田内閣の支持率はその後、2022年7月から9月にかけて旧統一協会(統一教会)問題や国葬をめぐって急落し、30%代前半となりました。

 2023年に入ると、3月から5月にかけて、予算の成立、大企業の賃上げ、日韓首脳会談、ウクライナ訪問、広島サミット等による持ち直しが見られました。そこからは秘書官問題やマイナンバー問題などによる信頼の低下が響き、一時は急落となります。直近では、内閣支持率は31.9%まで低下しているとみられます。


政党支持率

 次に政党支持率です。政党ごとの差が大きいため、2枚に分けて示しました。

図2. 政党支持率の平均(全政党を表示)

 自民党の支持率には、内閣支持率と連動した増減があることがうかがえます。特に、前回参院選(2022年7月)後の下落はいまだ回復できておらず、今年6月からの下落も続き、無党派層が自民党を大きく上回る状況となっています。

 図2の10%未満の領域を拡大したものを、図3に示します。

図3. 政党支持率の平均(10%未満を拡大表示)

 一般的にそれぞれの政党は、衆院選や参院選の際に支持を拡大し、選挙がない時は緩やかに支持を減らしていく傾向を持っています。左端が前回衆院選なので、そこから2022年5月ごろにかけて立憲や維新が支持を減らしていくのはそうした傾向のあらわれです。

 2022年6~7月には、参院選で各党は伸びました。こうした選挙時における支持率の上昇が「選挙ブースト」です。

選挙ブースト
 
定義は「国政選挙の公示から投開票に前後して政党支持率が急上昇する現象」です。これは、普段は無党派層である人たちが、選挙運動や報道をうけて各党の支持へと分解していくことを意味しています。ですから各党の選挙ブーストの大きさを合わせると、同期間の無党派層の減少幅に等しくなります。

 選挙ブーストは地方選挙ではほとんど見られない現象ですが、維新に関しては例外です。これは維新が地域的に見て、都市の無党派層をとりやすい政党であることや、統一地方選が大阪の四重選挙(府知事選、市長選、府議選、市議選)となる影響がありそうです。今年の統一地方選(2023年4月)でも、維新は大きく支持率を伸ばしました。国政選挙レベルの伸び方です。


比例投票先

 それでは、比例投票先を見ていきます。これも2枚に分けて示しました。

図4. 比例投票先の平均(全政党を表示)

 比例投票先は、政党支持率とはどのように違うのでしょうか。政党支持率は、毎月実施される各社の世論調査で必ず聞かれるため、時間的な細かい変化がとらえられるというメリットがあります。他方で政党支持率からは、支持政党を持たない「無党派層」の動向がわかりません。図2からは、現在の無党派層が自民党の支持率を上回るほど膨れ上がっていることがうかがえます。この層は次の選挙でどう振舞おうと考えているのでしょうか? 比例投票先はその点に踏み込める質問です。

 けれども比例投票先は大きな欠点も持っています。選挙が近そうな雰囲気にならないと調査項目に入らないため、欠落する時期が長いのです。前回参院選(2022年7月)が終わると、各社は相次いでこの質問を調査から外しました。しかし先月、衆院解散の可能性が浮上したこともあり、この質問は次第にかけられるようになっています。そこで今回、平均計算が実現することとなりました。

 図4では、調査が欠落している時期を点線で繋げました。なお、この期間であっても選挙ドットコム・JX通信の合同調査は踏みとどまって比例投票先を聞き続けているのですが、1社のみの調査しかない期間に関してはこちら側の処理に問題が生じるため(偏りが評価できなくなってしまいます)、反映できていません。その点はご了承ください。

 図4からは、自民が前回衆院選(2021年10月)、前回参院選(2022年7月)よりも落ちていることと、維新が伸びていることがうかがえます。立憲は前回衆院選から前回参院選にかけて落ち、その後は横ばいとなっています。

 以上から、内閣支持率、自民党の支持率、自民党の比例投票先はいずれも下落傾向であることが明らかなので、次期衆院選は野党にとって「ぬるい」選挙といえるわけですが、その中で野党第一党の立憲が存在感を示せない現状には憂慮を禁じえません。

 10%未満の拡大版も示します。

図5. 比例投票先の平均(10%未満を拡大表示)

 図5からは、共産が横ばいであることや、れいわと国民が伸びていることがうかがえます。特にれいわに関しては、前回衆参よりかなり高い水準となっているため、次期衆院選の選挙期間中の伸びも念頭に置いた候補者の擁立が求められることになりそうです。

 内閣支持率、政党支持率、比例投票先のグラフは、TwitterFacebookマストドンに投稿していきます。noteにも最新の状況を確認できるページがあったらいいなとは思っています。いろいろやるべきことも多いので、一つ一つ対応していきます。

 2023.07.08 三春充希