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ROOM’s Circle Vol.23「株式会社仕立屋と職人 代表取締役の石井挙之さん」

ミラツクのメンバーシップ「ROOM」で展開する「ROOM’s Circle」。コミュニティ内外から素敵なゲストをお招きし、緩やかにお話を伺うオンラインの場です。人にフォーカスし、ゲストの魅力を通じて、ネットワークや繋がりを創造しています。

本日は2021年12月3日(金)にお招きした石井挙之さんの会をご紹介します。

本編

ゲスト:株式会社仕立屋と職人 代表取締役の石井挙之さん

武蔵野美術大学卒業後、都内の広告会社でグラフィックデザイナーとして勤務。大手メーカーのパッケージや広告デザインに従事。大量生産大量消費市場に疑問を抱きつつ同社退職後、渡英。University of the Arts London, Central St Martins, MA Narrative Environmentsで『ナラティブ』にまつわる研究で修士号取得後、帰国。地域各所でのデザインプロジェクト参画を経て、2017年、滋賀県長浜市へ起業型地域おこし協力隊として移住。全国津々浦々でアクションリサーチを行い、課題の発見から分析、長く使い続けられるデザインや仕組みをつくりながら、仕立屋と職人の代表として伝統工芸の職人をデザインを使い支援するしごとをしている。2020年夏に株式会社仕立屋と職人に法人化。2021年度より武蔵野美術大学造形構想学部クリエイティブイノベーション学科客員准教授に就任。

仕立屋と職人ウェブサイト

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お話を伺ってみて

今回のセッションテーマは「ローカルな現場でデザインの実践をする」。
「デザイン=何かの形をつくること」と捉えられがちですが、「デザインはあくまで手段」と語る石井さん。その例として、仕立屋が職人と一緒に「伝統を過去のものとせずアップデートしていくこと」や、長浜市で「デザインをみんなのものにするためのデザインセンター設立」のお話を伺いました。

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まずは株式会社仕立屋と職人の活動のお話。「職人と一緒にスパークする!」ということを大切にしているそうです。職人さんは独特で限られた世界にいらっしゃるという印象がありますが、深く入ってみると非常に面白いので、なるべく多くの人に知ってもらいたいと石井さんは語ります。一緒にお仕事をするときは、自分たちも作り手として作る側の目線を大事にしていることを伝えて、お互いがリスペクトし合えることを心掛けているといいます。

伝統や文化と聞くと保護しないといけいないと思いがち。

石井さんたちは、困っている職人さんを助けようとしてこの活動をしているのではないとのこと。むしろ伝統を継承しつつ、未来に向けて新しいことをしようと攻めの姿勢の職人たちに触発されて自分たちも一緒に良いものを創りたい!という想いだそうです。

確かに職人でもない私たちが、その伝統や文化を助けなきゃと思い込むのはおこがましいし、それがバイアスになっていると気がつきました。仕立屋と職人の活動をFacebookで見るたびに楽しそうだなと感じたのは、石井さんたちご自身が楽しんでものづくりをしているからだと思いました。

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石井さんは、仕立屋と職人の活動をアカデミックな視点でも捉えていて、「職人文化人類学」のアプローチを模索していらっしゃいます。文化人類学の手法で職人を理解するところが面白いですね。これからの研究がますます楽しみです。

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続けてお話は、「長浜カイコ―」というデザインセンターのお話へ。石井さんたちがプロジェクトを進めていく中で、まちのみんながクリエーションやデザインに関われる場所をつくろう!ということで設立されました。長浜市においてクリエイティブなチャレンジが多発する中心地として今後の活用が期待されます。

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目指したかたちは、「革新的で民主的な」場所。デザインというと、つい尖ったものを求めがちですが、そうすると市民がついてこれなくなってしまうことがあるとか。一方で、保守的で親しみやすいものを求めると丸くなってしまい、よくあるカタチや同じようなものになってしまう。そこで、尖っているけれども、市民が親しみやすい民主的な場所へ育てていくことにしたそうです。

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セッションの終わりは参加者とのディスカッション。アートとデザインの違いは何かや機能性を求めることとデザインの関係など、事例を交えていろいろとお話することができました。

デザインとアートの違いについて、イギリスに留学しているときに自分も色々な人に見解を聞いたが、明確な答えは出なかった。結局、アプローチの違いで同じクリエイティブ活動なんですよね。
機能性は大事だけれども、それに捉われすぎないようにしています。ニーズや課題から考えることもありますが、行きすぎると楽しさを忘れてしまうこともある。感覚を大切にしているんです。

石井さんたちが現場で試行錯誤しながら、デザインの実践を通して、感覚を研ぎ澄ましていく様子が伝わってきました。

今回のRoom Circleでは、伝統や文化を五感で捉えて、自分だったらどう楽しめるかを考えることが大切だと学びました。守らなきゃ、継承しなきゃ、だけではなく、楽しむことで自然と経済も回り、新しいものが生まれる活路を見出すのだと思います。

参加者の方々もそれぞれの地域で活動されているので、このセッションが新しいコミュニティの「仕立て」に繋がっていきますように。

インタビュアー・文責:ミラツク研究員 鈴木諒子

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