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読書メモ|ワークマンは 商品を変えずに売り方を変えただけで なぜ2倍売れたのか

 全国のSV(スーパーバイザー)を束ねるSV部長は、数字に圧倒的に強くて、自動発注のアルゴリズムまで作ったひと。やっぱり、在庫を数字で掴める人が部長だろうと、推される形で部長に上がった。社内の価値観が変わったので、分析ができるひとがかなりいいポジションにいくようになった今まではコミュニケーションが得意な人が部長になっていた

 ワークマンには根っからのエンジニアはいないが、データ分析講習などを通じて営業担当を随分鍛えた。最終的に仕様書だけ書いて、超丸投げするにしても、やっぱり自分で原理がわかっていないといけない。何を作りたいかだけははっきり言えるようにと指示している。自分で模擬環境をつくって実験してみて、うまくいったら初めてシステム化している
 
 機能が100個あるとしてまずは10個くらいでつくってみる。足りなかったらさらに機能を10個追加する。10個でつくって20個に増やせば、この20個の機能は完全につかう。ところが最初から100個でつくっちゃうと使わない機能が80個もある。メーカーさんは会社の業務がわかってないので結構でたらめにつくる。
 残業させないために、業態変更はすべてマニュアル化し、外部の業者に託した。そうすることで社員は開業前日に顔を出すだけでいいようにした。お金はかかったが、お金で済むぐらいなら別にいい。1号店をつくるまでは大変だったが、あとはほぼ何もしないで広げられた。
 必死で頑張っているのに、立地が悪いといった理由で売り上げが伸びない店はどうしてもあった。そういう店ほどお詫びの意味も込めて優先的に改装したかった。改装費用はすべて本部が持つ。だから、店長からすごく感謝されたという。ビジネス的にはうまみが少ないかもしれないが、店の売上が上がれば店長もうれしいし。SVも会社も気持ちがいい
 日本初、善意型SCM(サプライチェーンマネジメント)とは、納品数をメーカーに委ねているのが特徴だ。判断材料として社内のデータをすべてメーカーに開示している。納品を全部任せて、全部引き取って、一切文句を言わない。無条件で買い取るからこそ、メーカー担当者は責任を感じてワークマンの立場にたって最善の納品をしてくれるのだという。返品リスクがないため、メーカーも安定した売上を確保できる。コンビニのようにムチのSCMではなく、お互いにウィンウィンになれるサプライチェーンをつくりたい、そう考えて生まれたのが善意型SMCという仕組みだった
 メーカー向けの発注システムは「需要予測アルゴリズム研究会」という名の勉強会から生まれた。グループ3社の3年分のPOSデータや、倉庫からの出荷データを持ち寄り、2年分のデータを見て、3年目の出荷を当てるというのを繰り返した。予測が実際とどれだけ乖離したかがわかる。この結果を元に三井情報がアルゴリズムを組み立てた。目指したのは誤差±20%。ワークマンは年に4回、季節毎にしか商品が変わらないため、十分だと判断した。回転が遅いので高い精度は必要ない。全量買取のため、ざっくりと需要を予測できればいいと割り切った。
 三井物産の経営企画室はかなり忙しかったため、通勤の行き帰りを利用して専門書を読み耽った。サプライチェーンの勉強は副業のつもりだった。年間364日働いていたが、人間、忙しいときのほうが勉強するんですよ
 よく中国のメーカーはドライだと思われがちだが、10年近くも付き合っていると、こちらのことを結構考えてくれる。例えば、中国の工場に行った時ワークマン向けの商品が工場の2階に積んであった。一瞬、どこかに横流ししているんじゃないかと思った。怒りそうになったが、うちのために1ヶ月分は作り置きしているとのことだった。今はなにが起きるかわからない。こっちがお願いしなくてもやってくれるのは本当にありがたい。

第2章 大躍進の裏にデータ経営あり

 「目指すは減価率65%」同質な競争をしちゃだめだ。消耗戦になって残業が増えてつまらない世界に入る。うちはAmazonに定価で勝てる。価格コムで1番になるモノづくりしかしない。 
 一回オーダーをもらうと、来年もリピートしてくれるだとうという安心感が生まれてしまう。あえて翌年の契約を保証しないことで、真剣に生産と向き合い工場そのものが毎年パワーアップする。それに増産で報いればウィンウィンの関係が築ける。

第3章 ものづくりは売価から決める

目標は販促費を使わなくても商品を売り切ること。なぜなら、ゆくゆくはAmazonしか残らない時代が来ると本気で考えているからだ。販促費をつかっているようじゃAmazonには到底勝てない

第4章 ファン辛辣な文句は全部のむ

迎え撃つ、先手必勝、包囲網、西宮戦争・・・社内向けの文章ならいざ知らず、プレスリリースとしては前代未聞の刺激的な言葉を並べたのは土屋氏だ。HPから何から何まで、対外的に発表する文章は全部私が書いている。プロみたいな文章は書けないので、これも毎朝、通勤時間に見直し。10日間くらい練り直したという

第5章 変幻自在の広報戦略

 日本みたいに狭い国では、通販よりも店舗受け取りでいいんじゃないか。たとえばセブンイレブンが通販を怖がっているかというとそんなことはない。むしろセブンの方が通販より便利だ。飲み物は冷やしてあるし、食べ物は温めてくれる。事実、英国ではクリック&コレクトが主流で店舗受け取りを選ぶ客が7割以上を占めている。店頭で受け取ってもらうようにすれば、配送料が不要になるし、来店客も増える、オンラインストアで在庫を公開しているため電話の問い合わせも減り、店側の負担軽減にもつながる。大半がフランチャイズのため、通販よりも店舗受け取りの方が店の売上が上がってオーナーが喜ぶ。ワークマン、利用者、加盟店オーナーの「三方よし」につながる。そもそも配送費を負担しているようではAmazonに勝てない
 ワークマンはPBの2/3を中国で生産しており、武漢の工場にも発注していた。コロナで万事休すとなるところが、もともと1円でも安くするため、閑散期に1年分製造してもらう形をとっていたため、武漢でコロナが蔓延したときには、すでに20年3月期分の縫製を終えていた。

第6章 店作りは壮大な実験

 ステークホルダーは長期固定。人間関係を大切にする姿勢も昔から変わらない。国内メーカーとは30年以上にわたって取引を続け、加盟店のオーナーは99%が再契約し半数は子供に引き継いでいる。業績があがれば賃上げを約束することで社員も長く定着するようになった。ワークマンプラスがヒットしても職人客の期待は裏切らない。変えるべきところは大胆に変える、しかし、変えなくていいことまで変える必要はない

第8章 「変えたこと」「変えなかったこと」

この本がでたのは2020年6月です。2019年末には10,000円を超えた株価も、現在は4,000円くらい。とはいえ「データ主導の経営判断」や「近江商人的三方よし」などには共感できてモチベーションになりました。
ただ「家賃は3%におさえなきゃダメだ、銀座に出したら6割くらいになってしまう」というのには衝撃を受けました。3%って、例えば家賃30万円で月商1千万です。このあたりでも6坪です。6坪で1億2千万は無理なので、やはり郊外型のビジネスモデルではあります。

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