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【ハラハラドキドキ冒険絵本】ジュマンジ

1995年に公開された映画『ジュマンジ』の原作絵本です。最近この本を手にした方は、発行年が2019年になっているので、あれ?と思うかもしれませんが、現在発行されているのは村上春樹さんの訳で復刊されたものです。(図書館などには1984年に発売された辺見まさなおさん訳の初代『ジュマンジ』があると思います。)
ちなみに、私は『ジュマンジ』というタイトルは聞いたことはあったのですが、映画は見ておらず、この絵本が原作になっていることも知らなかったので、大人になってこの本を読んだとき、≪なんか映画にでもなりそうなお話だな…≫と、思ってしまいました(笑)。

物語は子どもたちが公園でボードゲームを拾ったところから始まります。箱には「ジュマンジ ジャングルぼうけんゲーム」と書かれています。退屈しのぎにやることにしたこのゲーム。一見、普通のすごろくのように見え、子どもたちは全く期待せずに始めたのですが…。

「七」とジュディー。
ピーターは駒を七つまえにすすめます。
「〈ライオンがおそいかかる。ふたつうしろにもどる〉」とジュディーがよみあげます。
「ふうん、そいつはどきどきしちゃうね」とピーターはすごくつまらなそうに言います。そしてコマに手をのばすときに、ふとおねえさんの顔を見ました。その顔はきょうふのためにまっさおになっています。

「ジュマンジ」クリス・バン・オールスバーグ 村上春樹 訳

そうなんです。このあと部屋には本物のライオンがあらわれます。このあとも、ゲームに書かれていることが次々と現実に起こり、こどもたちはスリル満点のサバイバルをすることになります。

C.V.オールズバーグさんの絵本は、ストーリーも絵もリアル感があるので、ページをめくるにつれ、読者はぐんぐん物語の中に引き込まれていきます。大人でもドキドキしますよ。
この本の絵はモノクロ (セピア調)で描かれていますが、色がないことで読者の想像力を膨らませ、異様な雰囲気や不思議な世界観を表現しています。各ページの絵の構図も面白く、部屋を上から俯瞰的に描いたページ、床の上にしゃがみこんで下から見上げたようなローアングルで描いたページなど、どのページも視点が違うので、自分も部屋の中を動きまわり、登場人物と一緒に冒険をしている感覚になります。

映画になるくらいなので、長~いお話なのかなと思ったかもしれませんが、そんなことはありません。この絵本、字は多めですが32ページのごく普通の長さなんです。片側のページにしか文は書かれていないので、大人なら絵をじっくり見ながら読んでも15分くらいで読み終わります。お子さんでも20分くらいかければ読めるかな。小学生低学年であれば一人でも読めると思います。
読み聞かせにはもちろん、お子さんが一人で読む本としてもオススメしたいです。なかなか長い物語を読んでくれないお子さんでも、きっと夢中になって読んでくれるんじゃないかなと思います。読後は長い冒険小説を読み切った気分になり、読書楽しい!もっと長い本にも挑戦したい!と思うはず。

ちなみに「ジュマンジ」の最後のページを読むと、なんとなく続きがあるのを連想させるのですが、実際「ザスーラ」という続編もあります。こちらもさらに世界観がスケールアップしていて面白いのですが、残念ながら絶版みたいです。(図書館にはあると思います。)

最近、知識が身につく絵本や、教訓的なものが書かれている絵本、何かを考えさせる絵本…など、小学校の道徳に使われそうな絵本を手に取りがちでしたが、この本のように想像力を高めたり、感性を刺激したりする絵本もやっぱりいいですよね。
C.V.オールズバーグさんの絵本は、読者を物語の中に連れて行ってくれるし、純粋に『読書が楽しい!』と感じられるものが多く、面白い絵本が他にもあるのでまた紹介したいと思います。


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