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生きていくために。

キャバクラでの仕事は思っていたよりも大変だった。

毎日の客への連絡や同伴出勤など、一日中接客のことを考えなくてはならない日が休みなく続いた。

それに、寝るのはいつも明け方になるので、起きるのはどうしても昼になる。

ダラダラと起きて、それからすぐに支度して同伴が始まるのだから、自由な時間などほとんどなかった。

時給が高くても、指名料をたくさん貰えても、これでは1日中仕事しているのと同じだ。

だんだんとストレスが溜まるようになり、私は都合の良い客にそのストレスをぶつけるようになった。

好きな時に同伴させ、好きなものを買ってもらい、常に本指名を強要した。

そのくせ体は絶対に許さなかった。

彼は人が良く私の言いなりで、あっという間に高級時計や家電まで私に貢いでくれた。

あまり夜のお店に通い慣れてなかった彼は、甘い言葉に騙され、私との将来をきっと夢見ていたのだと思う。

しかし、私は非情にもさっさと別の男を見つけて、ある日突然店を飛んだ。

後から来る何通ものメールを読みながら、私は自分が恐ろしくなった。

いつから自分はこんなに人のことを考えない人間になってしまったのだろう。

平気で人を騙し、後悔もしないうえ、さらにお金を持っていそうな男の元へ走るなんて、いったい私は何者なんだろうか。

そう考えて、自分の人生がとことん嫌になった。

ただ普通に生きたいだけ。

どうしてただ生きていくだけなのに、こんなに苦労しなくてはならないのだろう。

女一人で生きていくにはあまりに現実は厳しく、誰かを頼らなければならない状況が不甲斐なかった。


そしてついに行き場を失った私は、風俗へと足を突っ込むことになる。


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