くれなずんだっていいじゃないか | 映画『くれなずめ』
先日、松井大吾監督の『ちょっと思い出しただけ』を鑑賞した繋がりで今回は2021年公開の『くれなずめ』の感想を綴っていきます。
作品紹介
松井大吾監督が自身の体験を基に描かれたオリジナルの舞台を映画化した青春映画。
あらすじ
変わんねえなって思いたいだけなのかもしれない
先日、高校時代からの友人の結婚することになり、結婚式にて友人たちと約2年ぶりくらいに再会する機会がありました。
いつもつるんでいた4人組。
4人集まったら話すなんていつもだいたい決まっていて、昔のバカやってたときの話や寒いノリをしながら「こいつら変わんねえな」と思うわけです。
でも本当に変わってないかと言われたらそんなことはないんですよね。
あれからもう10年弱時が過ぎていて、環境も変われば、価値観も変わっている。
ただ、久々に会うとバカやってたあの頃に戻ってしまうんです。
一人ひとりはもちろん変わっているけど4人の関係はずっとあの頃のままなのです。
本作は5年前に亡くなっているはずの吉尾がなぜか一緒にいる世界、それが現実なのか虚構なのか本人たちにもわかっていない。
でも彼らの関係は高校時代の帰宅部で、スクールカーストも下の方で、でも6人でバカやってるのが楽しかったあの頃のままなのです。
生きてたらだいたいのことは変化していくし、仕事でもなんでも変化を求められていく。現状維持は退化しているのと一緒だなんて考え方もある。
ただ、そんな世の中で生きているからこそ「こいつら変わんねえな」と思える空間があることが心地よくて、幸せなんだなと思います。
くれなずんだっていいじゃないか
暮れなずむという言葉は、日が暮れそうでなかなか暮れない状態を表す言葉です。
6人が最後に会った5年前、吉尾は一人仙台に帰ろうとするが終電を逃し、飲みに行っている5人に連絡をするが彼らがそれに気づかず、それが吉尾との最後の思い出になってしまいました。
彼らにとって、吉尾との関係は5年前から暮れなずんでいる状態なのです。
本作の終盤、彼らは吉尾との関係を修正すべく、5年前のあの日に戻ります。仙台に帰るために駅に向かう吉尾に対して、涙を堪えながら彼らは「またね」と声を掛けます。
5年間暮れなずんでいた彼らが吉尾とちゃんと別れることができた瞬間だったんですね。
たぶん、彼らがこの答えを出すためには5年という歳月が必要だったのだろうと思います。
何かを乗り越えるのにかかる時間は人それぞれです。
別にすぐに明確な答えを出す必要なんてなくて、悩めばいいし、立ち止まったっていいと思うのです。
日が暮れるときは必ずくる。
ただ、それまではいくら暮れなずんでもいいんではないでしょうか。
立ち止まって、遠回りして、そうやってきづけばちゃんと次に進めるようになっていくはずです。
バカバカしくて、でもどこか前向きにしてくれる映画でした。
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