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27歳で整形した話①

実は私、27歳の時に整形しているの。

目の下の脂肪取りと鼻。 

「整形は魔法じゃない」

You Tubeで整形アイドル轟ちゃんが言ってたけど、アレ本当だった。

スッポンが月になりたかったのに、亀になったくらいの微妙な変化。

保育園に通っていた時から、ずっと思っていたことがあった。

「なんで私の鼻は、鼻の穴が丸見えなんだろう」

「なんで皆普通の鼻なのに、私の鼻だけおかしいんだろう」

ちっちゃい時は遊んでいると忘れられた。

けれども、小学校に上がり自我が芽生えていくにつれ、自分のコンプレックスがどんどん肥大化していったんだ。

人と話す時、顔を見られるのが心底嫌だった。

ブスだと自覚してから、何をしていても顔のことが気になって気になって仕方がなかった。

大人になってから仕事に忙殺されるようになり、束の間、容姿の悩みを忘れることができた。

けれどもやっぱり、見た目のことで心ない言葉を浴びせられることが何度もあったんだ。

そんな中、世の中にパンデミックが起こった。

コロナが蔓延し、皆がマスク生活をするようになった。

マスクをしていると、自分のコンプレックスも見えなくなって、ちょっとだけ自信が付いた。

けれどもやっぱり、マスクを外した自分はブスだった。

周りから「詐欺だ!」って言われるんじゃないかと思って、またビクビクする生活が始まったんだ。

実際に思っていたことを他人から言われたし、職場でも気のある素振りだった異性が、マスクを外した瞬間逃げるように去っていった。

私だってこの顔にうんざりしてきた。

自分で言うのもなんだけど、私は目がパッチリしていて鼻梁が細いから、マスクをしているとメチャメチャ美人に見られる。

だからコロナになって、道行く人からナンパされまくった。

「Can I take your picture?」

『あなたは本当に美しい人ですね』

電車でそう、外国人男性から声をかけられ、スマホの翻訳画面を見せられたこともあった。

また、ロードバイクで擦れ違った人が、わざわざ道を引き返してまで連絡先の交換を迫ってきたこともあった。

更には対向車線から、ガードレールをハードル走みたいに飛び越えて、息を切らせてナンパしてくる人までいた。

あれは本当に驚いた。

まるで自分が少女漫画のヒロインにでもなったかのようだった。

そんなことが続いて、私はますます恐怖したんだ。

いつかコロナが収束して、またマスクのない生活を送ることに。

もうこの先、二度と素顔を晒して生きることはできないと思った。

だから整形した。

お金なんてなかったから、生まれて初めてローンを組んだ。

それも最大回数。

60回払い。

5年のローン。

一番コンプレックスだった鼻は、鼻中隔延長術という方法で手術することになった。

プロテーゼは「鼻を突き破った」とか、恐ろしい話がわんさか出できたから、私は耳介軟膏を使うことにした。

(耳の軟骨を切り取って、それを鼻中隔と鼻先に入れる手術。国内の美容整形外科で180万円くらい)

それにプロテーゼは「お直し」が必要だって聞く。

高卒で低収入の私が、機械の部品交換みたいに一生メンテナンスし続けるなんて無理だと思った。

また、アラサーの今からお金を貯めようとしたら、美容整形するまでに一体どれだけの時間がかかるだろう。

だからローンを組んで整形したんだ。

「そんな大金返せるわけ無い」

一度は冷静に考えた。

けれども、世の中には借金したけど完済した人の話もいっぱい聞いていたから、自分にも「出来る!」と、その時は思ったんだ。

毎月ちょっとの贅沢さえ我慢していれば、払えない金額ではないと思ったんだ。

でも甘かった。

借金を返すことがどんなに大変かってこと、その時は本当の意味を全然分かってなんかいなかったんだ。

もし、病気や怪我で働けなくなっても、毎月の支払いは待ってくれない。

手術をする前に、自分がどんな鼻になりたいのか、先生に写真を持ってくるように言われた。

私は当時、女優の満島ひかるさんのような鼻に憧れていたので、彼女の写真を持って行った。

先生とどんな鼻にするか、カウンセリングで話し合った。

「こんな感じでいかがですか?」

鼻の穴に綿棒を入れられ、変形した鼻を鏡を見せられながら聞かれた。

けれども鏡の位置が悪くて全く見えなかった。

それを「見えません」と言うのが恥ずかしくて、仕上がりのイメージをろくすっぽ確認せずに手術を受けることになったんだ。

手術前、クリニックの可愛い助手さんに理想の写真を突き出すようにして渡した。

鼻の整形は全身麻酔だった。

麻酔を打つ時、看護師さんから「ちょっと血管染みますよ~」って言われてから注射を打たれた。

瞬間、手首の静脈からサーッと、消毒液のマキロンを傷口につけた時みたいな感覚が腕いっぱいに広がっていった。

数秒で視界がぼやけ、瞼がどんどん重くなり、私は目を瞑った。

「○○さんっ!○○さんっ!!」

気づいたら、看護師さんに肩をグラグラ揺さぶられながらベッドの上で目覚めた。

めちゃめちゃ少ない確率で、麻酔から目が覚めずに死んじゃう人も世の中にいるらしい。

私の意識が戻ったことを確認してから、一度部屋から看護師さんが出ていった。

それからすぐに手術を担当してくれた先生がやってきた。

「○○ さん。あなたのお鼻、綺麗になったよ!」

そう言って、手渡された鏡を見た私は絶望したんだ。

手術をした鼻は赤くなってはいるけど、意外と痛々しい感じではなかった。

けれども、自分の思い描いていた理想の鼻とは遠くかけはなれていたんだ。

鼻先が短くて、正面から見える鼻の穴がずっとコンプレックスだった。

なのに、相変わらず鼻先は短く、鼻の穴もまる見えのままだった。

ただ、鼻が高くなっていただけだった。

発狂しそうになった。

先生は手術が上手くいったと思って満足げにニコニコ笑っていたけど、私は引きつった笑顔を見せることしか出来なかった。

「鼻に移植した軟骨がくっつくまでは、絶対に鼻をさわったり、ベッドでうつぶせで寝ないように気を付けてくださいね!」

そう看護師さんに言われて、着替えてクリニックを後にした。

手術はまる1日かかったようで、外に出るととっぷり日が暮れていた。

私は包帯でグルグル巻きになった顔のまま、コソコソと下を向いてマンションまで歩いて帰った。

私に気づいたほんの数人がギョッとした視線を向けてきたけど、痛みとショックでボーっとし、あまり気にならなかった。

手術から1週間はシャワーを浴びることを禁止されていた。

幸い冬だったから、蒸れて痒くなったり汗で体が臭うようなことはなかったけれども、痛くて痛くて眠れない夜を何日も過ごした。

抜糸をし、ようやくちょっとだけ鼻先に触れることが出来るようになった後も、感染症のリスクはしばらく続いた。

でも私は、手術した鼻が気に入らないから、その事実を曲げたくて鏡を見ては度々鼻を触っていた。

そしたら鼻が真っ赤になったんだ。

「感染症を起こしていますね。内服薬を出しますから飲んでください」

経過観察の為にクリニックへ行った時、先生からそう言われ、抗生剤を処方された。

『このままでは鼻が壊死してしまう!』

焦った私は、真面目に抗生剤を飲んだ。

鼻に触るのも出来るだけ我慢した。

無事、手術から3か月が経った。

「あと半年は、定期的に見せにきてくださいね」

先生から言われたけど、失敗した鼻なんかいちいち見せに行きたくなかったから、結局行かなかった。

1年経っても2年経っても鼻先はズクンズクンと痛んだ。

服を着替える時や、ちょっとした拍子に鼻先に触れる度に激痛が走った。

でも、整形してるって周りに悟られたくなかったから、どんなに激痛でも耐えた。

計らずしも他人の手が鼻に当たってしまった時でさえ、平静を装い、人知れず頭の中で『痛い!!』と叫んでいた。

ずっと仮装のデッカイつけ鼻をつけてるみたいな感覚だった。

自分の軟骨を使ったけど、鼻だけが異物な感覚だった。

それからローンを返すために頑張って働いた。

ドミトリーに住み、仕事は3つ掛け持ちしていた。

早い時は朝6時から、遅い時は23時過ぎまで。

週7日出勤で休みもなく、最長14時間働いた。

その間、転職活動をしたり、どうしてもお金が足りない時は周りの人の知恵を借りたりして、なんとかお金を工面していた。

そうして初めて、ボーナスのある正規の仕事に就いたんだ。

夜職もやったし、日陰産業と呼ばれる仕事もした。

でもとうとう体が壊れた。

ある日突然体が動かなくなり、会社には「すいません、体調が悪いので休みます」と何度も連絡を入れた。

そんなかんなで1か月近く仕事を休み、頑張って2日だけ復帰したけど、後はもう会社に行けなくなってしまった。

自分から連絡したのか、会社からかかってきたのかは覚えていない。

「ずいまぜんっ!!がいじゃにいぎだいのにっ!!ばだらぎだいのにっ!!もう、がらだがゆうごどをぎいでぐれないんでずっ!!!」

気づいたら電話で、総務課長に号泣しながら伝えていた。

「〇〇さん!あなた多分うつ病だから、ちゃんと病院の精神科にかかって診てもらってきて!」

そう言われ、今に至る。


あと整形依存症の話をよく聞くけど、一個なおすと別のところが気になってくるようになる。

私の場合、鼻さえ綺麗になったら美人になれると思っていた。

でも昔から八重歯で顎が小さく、口ゴボで人中も長いから、鼻を弄ったくらいじゃ美人になれないってようやく分かったんだ。

だから自分の気に入らないところ全部直すなんて無理。

超絶美形の人だって、どこか1つくらいはコンプレックスを持っているって聞く。

私からしたら「全然キレイじゃん!」って思うようなことでも、本人は気にしていたりする。

そんなの気休めだって最初は思ってたけど、誰にも他人のコンプレックスなんて預かり知らないことだから。

でもやっぱり他人から「ブス」って言われるのは辛い。

普通に傷つく。

悪口を言った人にとってはたった一言、たった1回だけのことと思うかもしれない。

けれど言われた人は、幾人もの人から心無い言葉を沢山浴びせられてきたから。

だから世の中の誹謗中傷って、たった一言だけで他人の人生を変えてしまうくらいの破壊力を持っているんだ。

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