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こんなにも美しい海が日本にあったなんて

山に囲まれて育ってきたわたしにとって、美しい海は永遠の憧れだ。はじめて広い海を間近で見たのは大学生になってからだった。「青い海」ではなかったけれど、はじめて海を眺めることができて、それだけで嬉しかった。

高校の仲良しメンバーと大学の夏休みに訪れた沖縄。そこで見た海の青さが大阪湾と違いすぎていて、感動したことを覚えている。

世界一周中、ロマンチックな場所にはいつも輝く海がセットだった。ギリシャのサントリーニ島、イタリアのベネチア、クロアチアのドブロブニク。ひとり旅の自分には寂しくなるんじゃないかと構えていたけれど、全くそんなことなかった。海は、わたしの心をいつも幸せでみたしてくれていたのだ。

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これまでに見た中で、いちばん大好きになった海がクロアチアで出会ったアドリア海だった。太陽の日差しにこれでもか!と答えているかのようにきらめくアドリア海は、私の大好きな海ランキング一位になった。あれ以上の感動的な海にはまだ出会えていなかった。

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9月に訪れた石垣島や竹富島で見た海も、エメラルドグリーンの色をしていて、それはもう美しかった。けれど、先日旅した沖縄の離島で、アドリア海を上回ってしまうんじゃないかと感じるほどの海を知ってしまった。それが慶良間諸島のひとつ、阿嘉島。


前日、離島行きのフェリーが台風の影響で欠航になっていて、当日の朝までひやひやしたけれど無事に運航。成田からの飛行機といい今回の船といい、ドキドキするタイミングはこの旅で二度目だ。

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泊港から座間味島行きの「フェリーざまみ」に乗って約1時間半。まもなく港に到着するその時、船の甲板からのぞいた海はもう青く、期待に心がおどった。

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阿嘉島は、慶留間島と外地島3つの島に橋がかかって結ばれており、慶良間諸島国立公園として認定されている。

バイクをレンタルして、まずは阿嘉大橋の下へ。その透明度の高さに「すごい!」「綺麗!」の言葉しか出てこなかった。やっぱり、相変わらずウユニ塩湖に行ったときと同じで、最高の景色を見た時に出てくる言葉は、いつもありきたりな言葉だ。

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この美しさを例えることができる言葉は一体どれだというのだろう。教えて欲しい。こんなきれいな海、見たことない!アドリア海の美しさに心奪われていたけれど、揺らいでしまいそうなぐらいに美しく、透明で、青かったのだ。エメラルドグリーンではなく、コバルトブルーに近い。

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今度は阿嘉大橋の上から海を見下ろす。これがまた目が覚めるほど青い色をしていた。これがケラマブルーなのか……!ウミガメは見えなかったけれど、夕暮れ時には泳いでいるエイが橋の上から見えた。

こんなにも美しい海が日本で見れるなんて。

嬉しい驚きだった。一緒に島に行った人が言うには、鹿児島県・与論島の美しさも素晴らしいらしい。海だけではなく、人も、雰囲気も。

またこうやって行きたい場所が増えていくんだ。

慶留間島の小・中学校のそばにも、美しいポイントがあった。こんなきれいな海を眺めながら勉強できるなんて、なんて羨ましい環境なんだろう……。生まれた頃からこの美しさがデフォルトだったら東京湾や大阪湾を見たら驚くだろうな。

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島の人々は、他の場所に憧れるのだろか。都会で生活をしていたら、こんな風に海を眺められる場所で生活ができたら……と考えてしまうけれどコンビニだって近くにないし、Amazonもすぐには届かない。でも「便利」なことは、大抵なくたって生きてはいける。

小さい頃は都会に憧れがちだけど、島の人たちはどうなのかな。三重の田舎で育ってきた私は、小さい頃はずっと都会に憧れていた。けれど大人になってから気がつく、田舎の良さがあるんだよな。ふとそんなことを考えてしまった。

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まだ夏を体感できていたあのとき、海の水はひんやりと気持ちよく、透明度の高い海を見ながら深呼吸した。竹富島の西桟橋でしたように。

午後からは土砂降りの雨になってしまったけれど、晴れている時にあの光景を見ることができて本当に良かった。関東に帰ってきて、すぐさまパソコンのスクリーン画面を、阿嘉島で見た海の写真に設定した。いつでも夏を感じてあの景色を思い出すことができる。

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阿嘉島から小型の船「みつしま」にのって座間味島へ。一人300円という破格だった。座間味島と阿嘉島の有名な話がある。座間味島にいた雌犬「マリリン」に会うために、阿嘉島から雄犬「シロ」が泳ぎながら会いに行っていたという実話だ。

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マリリンとシロは恋人同士だったそう。なんて健気な話……。映画『マリリンに逢いたい』でその様子が描かれている。調べると、当時シロ役で出ていたのは本物のシロだったとか。マリリンはすでに事故で亡くなっていたらしい……。(動物が出てくる映画は絶対に泣いてしまうタイプ)

座間味島は展望台が多く、こちらもバイクをレンタルして島を走る。走るといってもわたしはずっと後ろに乗っているだけだった。終始運転ありがとう。

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一つの島でも、東尋坊のような荒れた日本海を思い出させる断崖絶壁の海岸もあったし、波の音がしないビーチもあった。いちばん有名な古座間味ビーチはパラソルがいくつか並んでいて、思い思いの形で気持ちよさそうにくつろいでいる人が多数。繁忙期はもっと多いのだろうか。眺めているだけで心地よい。

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どんな海でも眺めているだけで癒やされる。ますます海が見える場所で住みたくなった。これまでは関東で働くことしか考えていなかったけれど、2020年に世界がこんな状態になってしまい、住む場所・働く場所は関東にこだわる必要がなくなってしまった。引越したばかりなのに、私の心は揺れている。出社をしなくても仕事ができることがわかってしまったから。年末年始にでもゆっくり考えることにしよう。

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座間味島を出発する時、港にいる人、船に乗っている人が見えなくなるまでお互いに手を振っていたのが印象的で、とてもあたたかかった。自然とコブクロの『ここにしか咲かない花』が頭に流れてきた。

何もない場所だけれど ここにしか咲かない花がある
心にくくりつけた荷物を 静かにおろせる場所
瑠璃色の海はるかから聞こえるあなたの笑い声は よく聴けば波の音でした

どんな関係なのかはわからないけれど、島の人たちとの絆があり、また帰って来る、行ってくるよと手を振りながらメッセージを力強く伝えていた。この場所の存在は、ずっと変わらない、ずっと待っていてくれる。

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この島だけの話じゃないけれど、船がやって来る度、出ていく度にいくつものドラマがあるんだと思うと、もうすぐ旅が終わるんだという寂しさも重なってなんだか胸が熱くなった。こうして二日間の島旅が終わった。

最終日の夜、ベランダから静かな夜の海を眺めながら考えていた。わたしのいまの居場所は、関東。その場所に明日帰る。沖縄をはなれたくなくて、離れたくなくて、最終日の夜にこのnoteの下書きを書きはじめながら涙が溢れてきて止まらなかった。自分でもびっくりするんだけど本当に。かけがえのない時間をすごせた沖縄滞在だった。

時間が止まって欲しい。そう思っていたのはきっと私だけで。言葉はまた胸の奥底に隠れていってしまった。

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成田空港は肌寒く、裸足にサンダル姿は少し浮いていた。出発前には香っていた金木犀も散ってしまい、すっかり秋が深まった気温になっていた。数時間前までは夏の世界で生きていたというのに。

眩しい太陽も、ビーチではしゃぐ子供の声が聞こえることも、日焼けを気にすることも、しばらくない。

夏が終わる前に、あの景色に出会えてよかった。

ついに、楽しかった夏が終わってしまった。

ありがとうございます!これからも旅先や日常で感じたことを綴っていきたいと思います。旅で世界を、もっと素敵に。