死にたいなんて思わない

だけどもっと最悪なのは、”生まれたくなかった”という思いだけは確かな手応えと共にあることだ。

例えば駅には、無数の矢印がある。無意識レベルで刷り込まれたそれの圧倒的な導きによって私は最短距離で電車の乗り換えが出来る。

私は顔中の筋肉を目と眉の間に集めては矢印に眼を飛ばし、知りうる限りの悪態を吐きながら矢印に従わざるを得ないのだ。

矢印が死ぬほど憎いが、それからは逃れられない。まさに現代人の人生そのもので笑えてくる。

気色悪い

何故ここを歩かなきゃならない?

何故皆は迷いなく歩ける?

手の中の小さな画面に魂を捧げながら、まるで自らの意志で選んでいるというような雰囲気で迷いなく、無意識に矢印に導かれる。

何が個性だ。

何が自由だ。


気持ち悪い。

ここに書くしかない自分が一番、気持ち悪い。