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押し付けるのではなく、滲み出る。非営利団体のブランディング策定の伴走をして

彼らなら、彼らに関わる人たちなら、もしかしたら世界の教育を変えるかもしれない。日本、そして世界のソーシャルセクターに今はまだない轍をつくり、次世代を牽引するかもしれない。そう信じてやまない、非営利団体のリブランディングに、携わらせてもらった。

バングラデシュやフィリピンなど東南アジアを中心とした各国で、映像・アプリケーションを活用した教育支援を展開する非営利団体(よくイメージされる非営利団体の域を優に超えているが、わかりやすさのために「非営利団体」とここでは使います)。

設立から10年の歴史をもち、途上国とされる国の農村部からもその国の難関大学進学者を輩出するなど、多くの功績を残した。それが、e-Educationである。


私は、学生時代から彼らの活動を知っていた。

途上国で学生たちが現地課題を目で見て、心打たれ、どうにかできないかとがむしゃらに立ち向かい、その熱量そのままにwebメディアに描き殴り、それをみた学生もまた途上国に飛んでいく。あの頃、その拡大し続ける台風の目の中心にいたのがe-Educationだったとおもう。

そしてe-Education代表の三輪開人さんとは、偶然にも社会起業家をサポートする中間支援団体でよく出会い、共に法人格をどう取得するのか、どう非営利団体が資金調達をするのかなどを、渋谷の、今は無きコワーキングスペースで語り合った仲でもある。

そんな遠くから、近くから見ていたe-Educationが、2020年2月1日、設立から10周年を迎えた。

あの時のe-Educationから、もうすでに大きく、大きく変化している


このnoteでは、社会課題に特化した企画・PR会社である弊社 morning after cutting my hair, Inc が具体的にどのようにブランディング策定をしていったかは書きません。それはぜひ、弊社のnoteに事例をまとめているので、こちらからごらんください!


ではここでは何をまとめたかと言うと、なぜ最終的に「ロゴやブランドカラーやタグラインという目に見えるアウトプットを納品せず、"3日間のミーティング"を納品することしたか」についてお伝えできたらと思います。

そして全てコロナ禍でオンラインで完結させる必要があり、載せることができる写真がないため、ただただe-Educationと私の思い出の写真を、文章に関係なく載せていきます(なんでや


納品したのは、3日間のミーティング

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(e-Educationのプログラムに参加させてもらった時の写真)

なぜ「3日間のミーティング」を納品したのか。結論から言うならば、

すでに10年の歴史を持ち、多くのステークホルダーと丁寧に関係構築を行なってきたe-Educationは、ロゴやブランドカラーやタグラインを変えることで対外的な"意思表明"はできるものの、そこまで培ったコンテキストをがらっと大きく変えることは難しく、それだけでは「ブランディング」のわずか一部しか担えない、からである。

話始める前に、ここで私たちの考えるブランディングとはなにかという定義を言語化するならば、以下だと考えている。
(これはそれぞれ定義が異なるため、私たちの考えでしかありません!)

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営利企業・サービス事業者とは少し異なり、非営利団体の多くは多様な関係者と関係を持ち、接点や時期やその期間も異なるため、相手の心の中で形成されるイメージは、デザインや言葉だけでは伝わりきらない。そしてそこにはズレが生じる。

それゆえに、「どこを切り取ってもe-Educationらしさ(伝えたいイメージ)が伝わる」ためには、外部のデザイナーやコンサルティング会社が提案したものをそのまま受け入れるのではなく、代表がトップダウン的に決めるのでもなく、団体のブランドを構成する要素を関わる人全員で抽出し、まとめていく一連の作業を共に行うことが大切だと思った

そこで、私たちは、e-Educationの社員の皆さんと3日間(4時間×3回)の時間を共に過ごし、ブランディングとは何か、e-Educationとはなにかを問い直すミーティングを行いました。

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(3日間の流れと、頭の中の状態、みんなとやっていくことをまとめた図)


考えるスピードも捉え方も異なるからこそ、ブランディングを考えるワークも多様に

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(真面目に参加しているのにそうは見えないのが悲しい)

同じ時間を過ごしても、私たちはそれぞれ、視点・視野・視座が違えば物事の捉え方が異なるはあたりまえのことだとおもう。物事を"ストーリー"で捉える人もいれば、"要点"で捉える人も、"映像"で覚えている人もいれば、身体に起きる"変化"で感じとる人もいる。

みなさんも経験したことがあるとおもうけれど、やはり業務遂行におけるミーティングでは、声の大きな人(ボリュームもそうだけど、立場や意志の強さなど)の意見が通りやすかったり、「NO」と言うとみんなの足を止めてしまうのではないかと感じたり。そして、後からいいアイデアが出ても、一度決まったことを覆しにくかったり...。

目的達成や、意思決定をするためのミーティングではないからこそ、アウトプットに良し悪しはない。いつ覆してもいいし、むしろ日々アップデートしていくものであると考え、今回ブランディングを共に考える3日間のミーティングでは、様々な捉え方がしやすい仕組みを作らせていただきました。

例えば以下のようなもの↓

● 歴史と事実から紐解く
● 視覚表現から捉える
● 言語表現から捉える
● ステークホルダーからのメッセージから考える
● 寄付者・支援者がどう捉えているか見つめ直す 他


実際に、参加してくださった社員の方からは、以下のようなフィードバックをいただきました!(個人名が書かれているものなどは編集しています)

「2020年も3人新メンバーが加わり、仲間が少しずつ増えてきているe-Educationは、在職歴やそれぞれ担っている役割から自分たちがどうありたいのか、どうみせたいのか、の認識が多様になってきていると感じていた。

そんなタイミングで受けたこの3日間のミーティングでは、支援者や協働先など、これまで様々な関わりを持ってくれた仲間たちからe-Educationがどう見えているのか、自分たちの認識とどう違っているのかを紐解くことで、私たちが目指していきたい姿や共通認識を組織全体で持つことが出来た。

毎回の議論や宿題を通じてそれぞれのメンバーが感じていることを引き出してもらったからこそ、同じ目線で議論が出来るようになったことは、チームの在り方、ステークホルダーとの関わり方を今後考えて行く上でとても効果的だと感じています」

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(これはミャンマーでのミーティングの時の写真)


どこからともなく滲み出る。それがブランドなのだとおもう

最後に、私のブランドとの付き合い方と、考え方を、自戒を込めてまとめたいとおもう。

メッセージの文面、オンラインミーティングでの画面に出てくる表情、お礼の連絡、webサイトの色合い、よく使われる写真、プロフィール画像のポーズ、採用基準、掲載されるメディア...

本当に細かなことだけれど、私たちが普段つながるその一つ一つの接点から少しずつ印象が形成され、接点の量や頻度の積み重ねに合わせてその印象も変化していく。それがもちろん、ロゴやタグラインやブランドカラーもそうで、そうでないこともある。

そしてこれは企業や団体だけでなく、一人一人個人もおなじ。どんなに見た目がとても美しくなったとしても、そしてどこかに良い顔をしても、それに伴わないその他の接点と出会えば、瞬く間に印象は変わっていく。


例えば、色としてのティファニーブルーを見た時に、何が私たちの心の中に形成されているだろうか

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あの触り心地の良いティファニーのロゴや箱、思い出のオープンハートのネックレス、あの美しく凛としたロゴのフォント、店舗のファサード、「ティファニーで朝食を」のオードリーヘップバーンのあの愛らしい表情を思い浮かべ、スタッフの方のスーツの着こなしや商品を触れる時の白い手袋を、私は思い出す。

どれか一つ、そこからずれていたら違和感を覚えるし、そこからブランドへの信頼が崩れていく。小さなことの積み重ねだけれど、その小さなところからブランドとは滲み出ていくものなのだとおもう。おもいたいのかもしれない。

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TiffanyのSustainabilityページ


押し付けがましくないその滲み出るブランドの匂いは、徐々に期待につながり、その期待に答えられると信頼につながるのだとおもう。

e-Educationとの3日間は、さらにe-Educationという団体と、人をもっと好きになる3日間だったことは間違いがないとおもう。



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