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精進豚バラチャーシューの作り方

ベトナムの寺で、教わったレシピです。

右が尼さん、他二人が寺の台所を手伝う仏教徒の方々

こういうのを紹介すると、「坊さんでもやっぱり肉食べたいんじゃん」という話になりがちです。実は私も初めはそう思っていたのですが、行ってみて分かったのは、これは決して僧が自分たちで食べるものではないということ。笑って否定されました。だいたいこんなの手間がかかりすぎます。
僧たちの日常食は、至って普通の野菜炒めや野菜スープなど。こういう手のかかるもどき料理は、行事などで寺に来る人のために作っておどろかす、遊び心みたいなんですよね。制約を設けると創造的になれておもしろいなと思います。

材料(20cmパウンドケーキ型1個分)

赤身部分
・精進スペアリブ 5~6枚 *補足参照
・米粉 60g
・ココナッツミルク 150g
・水 50g
・うま味調味料 小さじ1/4 *補足参照
・精進だしの素 小さじ1/4 *補足参照
・塩 小さじ1/4
・砂糖 小さじ1/4

脂身部分
・タピオカ粉 150g
・水 180g
・うま味調味料 小さじ1/4 *補足参照
・精進だしの素 小さじ1/4 *補足参照
・塩 小さじ1/4
・砂糖 小さじ1/4


・バゲット 20cm分

たれ
醤油、砂糖 同量くらいずつ
五香粉 適量

揚げ油

こちらが設計図。

作り方

  1. [準備] 精進スペアリブを水(分量外)に30分ほど浸し、やわらかくする。

  2. [準備] バゲットを半分の厚さに切り、中身のパンを掻き出して、平たく押しつぶす。

  3. [準備] パウンドケーキ型にあわせてクッキングシートを切り、敷く。

  4. [準備] 蒸し器を用意する。

5. ボウルを二つ用意し、一つには赤身部分の精進スペアリブ以外すべて、もう一つには脂身部分の材料をそれぞれ入れてよく混ぜる。

6. 赤身部分の方のボウルに、しっかり水をしぼった精進スペアリブを入れて、よく染み渡らせる。

7. パウンドケーキ型に、つぶしたバゲットの一枚を、茶色い方が下になるようにして敷く。

8. 精進スペアリブを並べ、それが完全にかぶるくらいまで、浸していた液を注ぐ。蒸し器で5分ほど、固まるまで蒸す。

9. 脂身の液を厚さ1センチ分くらい注ぐ。蒸し器で5分ほど、固まるまで蒸す。

10. 8と9をもう一度ずつ繰り返す。

赤身と脂身を二回ずつ。液は余るかもしれませんが無問題。

11. 最後にバゲットの半身を、茶色い方が上になるようにのせて、手で押し付ける。おもしを乗せて冷蔵庫で一晩、しっかり冷やし固める。

12. 型から出して、1センチくらいの厚さにスライスする。

この状態だとまだ「?」な感じ。

13. 油で揚げて表面をカリッとさせる。

揚げると赤身部分が茶色くなってそれらしく…

14. フライパンにたれの材料を入れて煮詰め、軽くとろみがついたら13を加え、たれを絡める。

完成。

補足:食材について

  • 精進スペアリブは、ベトナム語でSườn non chay (ソンノンチャイ)と呼ばれる食材で、乾燥大豆ミートの一種。Sườn nonがスペアリブ、chayが精進料理という意味なので、これ単体ではスペアリブを真似たものという意味になる。単体で揚げたり炒めたりといった料理にも使う。ベトナムはこういった菜食料理を作るためのの"原料素材"が豊富にある。
    ベトナム現地でも、どこでもあるというものではなく専門店で買うものだったので、日本のベトナム食材店では残念ながら今のところ出会えていない。菜食者が人口比にしたらあまり多くないからか。オンラインではアジアスーパーさんが扱っているようです。

  • 精進だしの素は、顆粒鶏ガラスープの素のきのこ原料バージョンで、インスタントな顆粒状です。ベトナムの精進料理に頻出の材料。なければ割愛するか、または動物性を入れてもOKという方であれば鶏がらスープの素を入れて代用できます。これもアジアスーパーさんにありました。日本だったら昆布や椎茸だしをとるのでしょうね。

  • うま味調味料(味の素)は、なくても作れるのだと思いますが、やっぱり動物性たんぱくや脂身のうまみに近づけるためにはあった方がいいのだろうなと思って買いました。ベトナム料理の必須アイテム。

豚バラになったのか?

これはイベントのために作ったのですが、皿に盛ってだした瞬間「肉じゃん!」という声が聞かれてにやり。お坊さんの気持ちがちょっと分かった気がします。

食べながら面白かったのは「カリッとした皮の食感で一気にそれらしくなる」「脂身のくにゃっとした感じが肉!」という食感の話が多く出たこと。肉汁じゅわーがないねという話になるかと思っていたら、思いのほか食感の話ばかり。実際、濃いたれで味付けしているので、素材そのものの味はあまり重要でないのかもしれません。
また、人によって豚バラらしさを感じる食感のポイントが違うというのも発見でした。
そういえば、ベトナムの精進料理は「噛みごたえのあるもの」をうまく使っています。キノコ、干したけのこ、精進ハム、揚げ豆腐、などなど。 私たちが言う”肉っぽい”って、肉エキスの味以上に、あの動物性タンパクならではの噛みごたえが肝なのかもなあと思ったのでした。

最後に

肉に似せた代替肉に疑問を持ち、ベトナムの寺の台所に滞在して精進料理を教わった話は、こちらの本に書きました。「わざわざ肉に似せなくてよくない?」と思っている方にぜひ読んでみてほしいです!

精進鶏ハムを作った話はまた今度書きます。

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