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空にこんなにも言葉が溢れてくるのだから

ふわり、と起きれた。
こんな日は誰かに手紙を書きたくなる。

昔のことを思い出す。淡々と流れる時間をなぞったかと思ったら、心臓がどきりと沈む言葉を投げかけたり。昔を思い出すとはなかなか重い。どうしてふわりとした気持ちは風といっしょに空気へ浮かんでいってしまうのか。暗い気持ちほど重く胸に残るのか。

そんな思いがさらりと香る、朝の電車に木漏れ日がきらり。吸い込まれるようにずんずんと進む綺麗なガタンゴトンと、音。

このままずっと乗っていたい気もする心地よさ。会社に向かうだけなのに駅に着くとずいぶん遠くまで来た気持ちになった。新幹線や飛行機に乗って田舎に行くよりも、もっと遠くに来たような、東京。なぜだろう。ここでは誰もが透明人間になりやすいからかな。


一度壊れたものは元には戻らないかもしれない。けれど、そこからまた足を生やして、手を生やし気持ちを燃やしていければいい。


とにかく、今を書いて、未来を描いて。

***

夕方。

びゅんびゅん過ぎ去るビルの間から見えたのはムーミンのお腹の色みたいなやぼったく、どこまでもやさしい水色だった。

「あ!これ!そう!!これ!」こころのなかで空を指差してはしゃぐ。まるでずっと前から探していた探しモノをやっと見つけたと言わんばかりに。


空は移ろいやすいから、今見ないと。


本当に早いのは空ではなく沈む瞬間の太陽。
どうして沈むときはあんなに早いの?そんなに急いで夜の支度をしなくても。もしかしたら月が急かしてるのかな、もうぼくの出番だよ。みんなを包むように照らすぼくの光の番だよ、なんて囁き声で芯のある月。

当たり前だけれど、ホームに着くと空は見えない。東京だから。都会だから。人が多いから。物が多いから。建物が多いから。情報が多いから。見えなくなるものがあるなんて、不思議なような当たり前の矛盾。

わたしはそのすぐ側に生まれ、生きていくことを選んでいるんだな。

ほらほら、そんなことをしているうちに空が遠慮がちに薄くなる。車窓に映る反対の空は夕日でいっぱいになっていた。元気いっぱい、というよりも"時がきたから"という感じで。だから夕日は素直なんだ。そこが好き。


わたしが目を瞑るその最後の日の空は、どんな色なのだろう。風は、夕日は、木漏れ日は。あと何回空が見れるだろう。生きているから、明日を信じているから思うこと。それが心底切ないときも。

夜風が気持ちいい。白くてほんのりした、月 。

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