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思いやりis伝わる文章力

ふだん文章を書くとき、「誰のために書くのか」考える習慣はありますか?書くプロであるライターは、依頼された内容を「文字にする」だけが仕事ではありません。

記事を届けたい相手の立場にたち、想像力を掻き立て、まるでラブレターを書くように相手を思いやりながら筆を進めるのがライターの仕事。

今回のnoteマガジンでは、著書「書いて生きていく プロ文章論」をご紹介。

知っているようで知らない、ライターの仕事内容をひとつひとつ紐解きながら、書くことが楽しくなるコツをご紹介します。


<書く編>
-どう書くか、より何を書くか


「よし! 書くぞ! 」と気合いを入れて筆を持ったのは良いものの、書いているうちに何を書いているのかわからなくなった......。なんこと、よくありますよね。自分には文章力がないんだとしょげてしまう前に、「何のために書くのか? 」を見直してみてください。

今書いている文章は、誰に宛てたメッセージですか?先生?上司?友達?恋人?

届けたい相手を具体的に想像してから書くことで、「書く目的」が定まります。上司へ企画を通すための文章が企画書なら、先生にレポート提出の報告をする文章がメールでしょうか。もちろん、具体的な相手ではなく広く一般的に発信する文章もあると思います。特定の相手がいない場合は、自分で「届ける相手」を設定しましょう。

例えば、この記事を届けたい相手を「ライター業に興味のある学生や20代前半」と設定したとします。さらに具体的にしていくと・・・

☑︎ 就活準備をする女子大学3年生
☑︎ ライターの仕事内容について調べている
☑︎ 休日は友達とカフェ巡りをするのが好き
☑︎ 都内ひとり暮らし
☑︎ 寝る前にnoteを読むのが日課
☑︎ 彼氏はゆるふわパーマをかけた年下のバンドマン

もはや妄想レベルですが、記事を届けたい人物像が、かなりはっきりしてきました。

あとは、この子が目の前にいると思って書くだけ。どのようなことに興味がるのか、何を知りたいと思っているのか。想像力だけでは不十分なら、SNSなどで検索をかけても良いでしょう。

スキルが身についても「書く目的」がブレていては、内容は相手に伝わりません。綺麗な文章を書くよりも、まずは「誰に、何を」伝えたいのかを明確にする必要があるのです。

-良い文章=理解しやすい文章

良い文章とは何でしょうか?

定義がなければ、どこに向かって練習や工夫を積み重ねれば良いかわからないですよね。正解はないですが、「伝えたい情報を相手へ届ける」役割を担う文章にとって、わかりにくさは致命的です。

読者は、知らないことを知るために記事や書類に目を通します。テキストに使い慣れていない漢字や専門用語が、散りばめられていたらどうでしょう。「よくわからないな......」と、読むのをやめてしまうかもしれません。

極端な例ですが、幼児向けの絵本に漢字を使いまくる作家はいませんよね。読者ターゲットが20代か50代かでも表現方法は異なるはず。読者ターゲットを見直せば、適切な言葉使いや言い回しが定まります。

難しい言葉を使ってかっこよく書くのがプロではありません。読者目線に立地、やさしい言葉でわかりやすい内容を書くこともライターの役割なのです。

-しゃべるように書く

面白かった映画の感想をnoteに投稿しようとするとき。

「やばい俳優の〇〇がイケメンすぎた」「待って、もう一回観たい」など心に浮かぶ溢れんばかりの興奮はあるものの、そのまま書くわけにもいかないし......。と、PCを前に手が止まってしまう。結局書くことを断念して眠りにつく、なんてこと、わたしも日常茶飯事です。

我ながら勿体ない...! 書きたい、伝えたい気持ちを文字にするにはどうしたらいいのでしょうか。

最初の一文字を打破するパンチ。それは「友達に話すなら? 」と想像してみることです。友達に映画の感想を話すときは、身構えることなく自然に話の順序を置き換え、強調する表現を使い、わかりづらい部分は補足説明をしているはず。

友達とカフェでおしゃべりをしている時と同じように、文章も書いてあげてください。文章にするからといって、かしこまる必要はありません。大事なのは、読者にとって「理解しやすい内容」であること。

友達を思い浮かべ、事実を並べるだけでOK。「へぇ〜! めっちゃ内容伝わった! 」と言ってもらえたら嬉しいですよね。話すように書くことが、書き始めのポイントです。

でも、ひとつだけ注意点!形容詞を使い過ぎは禁物です。「“すごく”寒そうだった」と書いてある文章と、「“北風が吹き荒れる中、半袖で歩く姿が”寒そうだった」と表現されている文章では、読者に伝わる情報の具体性やリアリティが異なりますよね。

すでにある情景や情報を、わかりやすく翻訳して文章にする。受け取り方は読者に委ねる。そのためにより具体的な言葉を遣うのもライターの腕の見せどころなのです。

<取材編>
-文章力より、取材力

続いて、ライターの仕事に欠かせない「取材」についてご紹介していきます。


「書く目的」を考えることが大事なら、「取材の目的」も必須。目的なしに、なんとなくこの人面白そうだからと取材に挑んでも、何をどのように、どこから質問したら良いか、わからなくなってしまいます。限られた取材時間、雑談だけで終わってしまってはもったいないですよね。

読者は、取材対象者である芸能人・起業家・アスリート・政治家などの考えが知りたくて、Webや雑誌のページを開きます。そこで、必要なのが事前準備。特に欠かせないのが、質問事項を考えることです。

「読者だったら何を聞きたいかな? 」と想像して質問事項を揃えましょう。学生向けの記事でJリーガーを取材するのであれば、サッカー少年の気持ちや視点に立って質問を考える必要があります。

読者になりきって取材に臨むことで、インタビュー中にさらに詳しく聞きたいポイントを見つけられたり、逆に記事にはならない部分の区別もできます。目的に沿った取材をおこなうことが、目的のある文章への一歩目なのです。

-インタビュイー(取材を受ける側)への配慮

執筆や取材では、読者目線に立つことが重要だとお伝えしてきました。もうひとつ大事な視点、それが「インタビュイー(取材を受ける側)」への配慮です。

取材を受けてくださる方は、仕事とはいえ、初対面の相手に自分の気持ちや、起きた出来事について根掘り葉掘り聞かれます。気持ちよく話せる内容ばかりではないことも十分にあり得ます。

相手への敬意や感謝を、挨拶や笑顔、相槌などの態度に現すのも取材時の大事なマナーのひとつ。とてもじゃないですが、機嫌の悪い相手から、読者が喜ぶエピソードが引き出せるとは思えません。ただ質問をするのではなく、会話を楽しみコニュニケーションを測りながら、取材を進めることが重要なのです。信頼関係を築けてこそ、読者にとって面白い話を聴くことができる。相手が話しやすい場づくりや工夫は怠らずにおこないましょう。

具体的な方法として、聞けたエピソードに対する「自分の感想を伝える」のもひとつの手。難しい場合は、「読者はこれを聞きたいと思っていると思うんです! 」など、第三者の視点を出してもOKです。直接的にならず、質問がしやすくなったり、相手も読者を想像して答えやすくなります。読者目線を忘れないことが、取材を成功させるコツなのです。

-まとめ

「書くこと」を通じてライターの仕事内容をご紹介してきました。


誰かに評価されたいとエゴが出ている文章や、自己満足な文章は、読み手に伝わります。文章が上手くなるテクニックは世にたくさん溢れていますが、「読者目線に立つ」ことが全ての基盤。

まるでラブレターを書くように読者を想像すること。筆者も、相手を思いやる書き手でありたいと改めて思いました。

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