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僕の好きなアジア映画57: モガディシュ 脱出までの14日間

『モガディシュ 脱出までの14日間』
2021年/韓国/原題:모가디슈
監督:リュ・スンワン(류승완)
出演:キム・ユンソク(김윤석)、ホ・ジュノ(허준호)、チョ・インソン(조인성)、ク・ギョファン(구교환)、キム・ソジン(김소진)、チョン・マンシク(정만식)


韓国で大ヒットした、ハラハラしっぱなしの傑作パニックエンターテインメント。普段僕が観る映画のタイプではないけれど、これは面白かった。そして驚くことにこの物語、ほとんど実話だというではありませんか。そしてここには分断国家としての韓国ならではの問題が描かれており、しかしそれ故にストーリーとしてはさらに複雑でスリリングな展開に至るのです。

舞台は1990年のソマリア。首都のモガディシュには、国連への加盟を実現するために、韓国と北朝鮮の双方がロビー活動を行っている。そこでソマリアの反体制派による武装蜂起が起こる。ソマリアは内戦状態に陥り、外国人は外交官も含めて脱出をせざるを得ない状況に追いやられる。もちろん反乱軍にとっては北も南も区別などありません。

ソマリアで対峙する北と南の外交官

そんな中でひょんなことから北と南が、経緯から行けば「仕方なく」協力し脱出を計画することになる。もちろん簡単にお互いを信頼することはできず、衝突を繰り返し紆余曲折を経て、徐々に信頼関係を築くに至る。

南の大使にキム・ユンソク。渋い!
北の大使にホ・ジュノ。今回は悪役ではない。

敵対していた彼らが、少しずつ信頼を構築していく過程を二人の名優が重厚に演じている。そこにチョ・インソン、ク・ギョファンなどが曲者的な役柄でアクセントを与えている。

最後の脱出のためのカーチェイスはもはやジェットコースターである。

銃弾を避けるため車に本を縛り付けている。

結局力を合わることで無事に脱出できたのだが、その過程で南北が協力していたことは長年知られていなかったそうだ。後年南の外交官が職を退いてから小説家となり、この事実を公表したらしい。

こういう映画をあまり観ない僕も、緊張の連続ではあるが十分に楽しんだ。しかし韓国のパニック・ムービーの素晴らしさは、驚くべきレベルである。それは潤沢な資金と、練り上げられたプロット、そして実力のある俳優たちの実にプロフェッショナルな演技の賜物である。もうこのレベルの映画を、果たして今の日本映画界が作り上げることができるだろうか、と少し悲観的な気分にもなってしまう。


百想芸術大賞映画部門大賞、百想芸術大賞映画部門作品賞、Blue Dragon Film Award for Best Directorなど。


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