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シネマ/まちづくり


1 まちづくり助成の成果報告会

2024年4月13日、名古屋都市センターにて、まちづくり助成金の活動成果報告会&交流会が開催された。2023年の助成を受けたまちづくり団体は合計12団体であった(注1)。筆者・三矢は助成金事業の審査委員長として、ここに参加した。交流会の終わりの挨拶で述べたお話が、今後の参考になる話をまとめたものなので、ここに紙上再現しておく。

2 シェアリング・エコノミーを育もう

活動報告を伺っていると、様々な支援や協力を得て、まちづくり活動が発展的に展開していったことがわかった。お金は出せないけど物を提供してくれる人、自社の敷地をイベント会場として提供いただいた会社、チラシの印刷や配布を協力してくれた事業者、あるいはイベントに協賛金を出してくれた個人・団体などが見受けられた。
まちづくりを展開するには様々な資源(人、もの、場所、お金など)が必要である。その一助になればという意味で、今回のようなまちづくり助成金制度があるが、これはあくまでも一助でしかない。この助成金を梃子にして活動を起こし、人々の信頼関係、コミュニティを形成し、活動仲間や活動に必要な物や場所、あるいはお金を調達して、まちづくりは形になっていく。むしろ、お金(助成金など)で調達することに加えて、つながった人や会社から余っている物や場所やお金を分けてもらう、こちらの資源も分かち合う、言うなればシェアリング・エコノミーを起動することこそが重要である。

3 眠っている心に問いかける

スタートアップ助成は、残念ながら3回までしか受けることができない。その3回の助成を受けて、晴れて卒業する団体が一つある。ニシヤマ・イバショラボである。ニシヤマの報告には、3ヵ年の成長や発展、市民が参加しやすいまちづくり手法に満たされていたので、ここで確認しておきたい。
第一に「妄想ラボ」である。これは、心の中にモヤモヤと溜まっている個人的な思い、まちに対する不満や期待を自由気ままに吐き出してみよう、という企画である。毎月開催され、様々な人が出入りし、好き勝手なことを呟いていく。しかしこれは、眠っている心に問いかける行為であり、まちづくりの種が撒かれる貴重な機会だ。次に「ラボ祭り」。マルシェを開催して、自分で一通りやれ、と言われてもできないけど、未完成だけどやってみる、試しにお店を開いてみる、という柔らかな起業支援プログラムが差し込まれ、人々の「本当はやってみたかった」を形にする勇気を引き出した。さらに「部活動」。一人一人の思いが形になり、そこに集う仲間同士の「私はこれが好き」「こんなことが得意」が共有されていく。すると「一緒にやろうよ」というテーマコミュニティが形成されていく。ニシヤマでは、これを「部活」として継続させる仕組みを作り出した。今では13の部活があるという。そして「実現した人の話を聞く会」である。先行例を学習交流する機会を仕組み化することで、先行者は自分がやっていることの価値づけが明確となり、それを聞いている聴衆は「私にもできるかも」という夢を膨らませていく。この「ニシヤマ方式」とも言うべき、まちづくりの展開手法は、残る助成団体の皆さんにとっても大いに参考になるものだ。

3 「まちづくり」と言わない

数々のまちづくりイベントをされてきた方からの話を聞いていると「やっていることはほぼ一緒なのに、防災と名前をつけただけで参加者が激減する」「まちづくりと名打つと、人来ないよね」とのことであった。上志段味の経験では「ハロウィンまち歩き」と称して、子ども100当番の家を訪ね、さらに防災上知っておいてほしい場所を巡るなど、実は災害時に役立つ情報満載の企画を設定したところ、頼んでもいないのに地域の子供達は仮装をし、大挙して参加してくれたという報告があった。防災はやった方がいいけど、やりたくはない、という人間心理を自覚した方が良さそうだ。まちづくりを企画運営する側としては、見せ方や伝え方を工夫して、まずは人が来る状況を優先すべきなのかもしれない。用意周到に、地域の方々に伝えたい防災やまちづくりのコンテンツを準備しつつ、チラシなどの表現上は、誰もがワクワクして参加したくなるイベント名をデザインすることが肝要である。

4 まとめ

僕の恩師である、故・延藤安弘氏によると「大事なキーワードの頭文字を束ねると新しい学びが得られる」との指摘がある。これに倣い、上記3点の重要な学びを振り返っておこう。「シェアリングのシ」「眠っているのネ」「まちづくりのマ」、なんと「シ・ネ・マ」という新しいキーワードが表れた!
確かに、まちづくりを展開するためには、脚本を描く人、演じる人、撮影する人、伝える人、様々なプレイヤーが活躍してこそ、イキイキと展開することができる。まちづくりはシネマのように進めると上手くいく!そんな予感漂う機会となったことを確認して、本稿のまとめとさせていただきます。

注1:名古屋のまちづくり助成制度は、大きく分けて二つある。一つは「スタートアップ助成」である。これはどちらかというと、設立間もない、設立から3年以内のまちづくり団体向けの活動助成制度である。もう一つは「成長支援・実践活動助成」である。こちらは活動実績がある程度あり、すでに名古屋市の地域まちづくり活動団体として登録を終えた団体向けの活動助成制度である。今回のコラムは、前者の助成成果報告会に関するもの。

※冒頭の写真は、UnsplashJakob Owensが撮影した写真です。

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