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【音楽】前略 中島みゆき様

『中島みゆき 夜会の軌跡 1989-2002劇場版』を鑑賞した。

中島みゆきの夜会とは何だろうか?

コンサートではなく、演劇でもなく、ミュージカルとも少し違った歌表現とでも称すべき会合と言うべきだろうか?言葉の実験劇場というコンセプトと聞いたが、自分の受け取りはそれともちょっと違っていて、歌の実験劇場が相応しいようにも思える。

中島みゆきの夜会は、表現者としての中島みゆきの思いが溢れ出した1つの形なのだろうと思う。今回劇場で映像を見て、これは徹頭徹尾、中島みゆきの我儘で形作られていると感じた。もちろん褒め言葉だ。

中島みゆきの夜会は、中島みゆきの我儘の発現なのだ。

遠い記憶を辿ってみると、中島みゆきの曲を初めて聴いたのは、浪人が決まって人生初の挫折を味わっていた高3の3月、M君の家でだったか。レコードから流れる『夏土産』の物悲しくも切ないメロディーと歌詞に心が激しく揺り動かされた。それは、恋に堕ちた瞬間だったのかもしれない。

アルバム『予感』は、LPレコードではなく、そのころ世の中に広まり始めていたCD版を購入して、『ファイト!』を聴きながら孤独な浪人時代を乗り切った。

CDは1stアルバム『私の声が聞こえますか』から始まり、追いかけたのは18thアルバム『夜を往け』くらいまでだっただろうか?もっとも『大吟醸』は持っていたな。

曲調だけではなく、歌詞に込められた深い意味に気付いたその頃の自分は『中島みゆきの全歌集』を読み込んでは、『世情』に代表されるような歌詞に仕組まれた幾重にも織りなす意味を紐解いたつもりになって悦に入っていた。

無論、中島みゆきの基本スタンスからしても歌の解釈は、聴く者に委ねられているのだから、そこに唯一の正解は無いわけで。事実、今回鑑賞した夜会でも中島みゆき自身から歌の新たな解釈が提供されているようにも感じた。

その意味では、自分の解釈などは人の数だけ存在する受け取り方の1つに過ぎない物なのかもしれないが、当時の自分は傲慢にも中島みゆきの意図が分かったような気になり満足していた。全くの独善である。

『時刻表』の世界観に共鳴を感じていた時代を経て、結婚し子供が生まれて仕事でも責任ある立場になるに従い、新しいアルバムを追いかける時間も余裕も無くなった。

街で『空と君のあいだに』『地上の星』『宙船』『糸』が流れても、口ずさむ歌は『時代』『歌姫』、『ホームにて』だった。

いつか行きたいと思っていたコンサートも忙しさにかまけて、結局40年間行けずじまいとなってしまった。

2020年やっとあなたに会おうと決心した矢先、新型コロナのパンデミックでそれが叶わなくなった。中止となったコンサートの名称がいみじくも『ラストツアー』であることに、もうあなたに会えないのではないかという絶望感に悶えていたが、やっと2024年あなたに会うことが叶いそうだ。

いちファンとして、40年越しのコンサートをとても楽しみにしている。
草々

P.S.
コンサートは、ここまでの人生を一緒に歩んでくれた伴侶と共に参加したいと思っている。

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