ウェイクフィールド論文を精読する

私の提供するものはどちらかである。
知的好奇心を刺激する有益なものかもしれない。一方で私自身の全存在理由が無駄なだけかもしれない。大半には何の関心も引き寄せないが、極一部に熱狂される。多分そんな人間で、従ってマーケティングとは全く以て無縁な人間である。

例えば今回紹介する話は、現在抱える悩みの原因を知って納得がしたい人間からすればシナプスが繋がる極上の快楽が得られるかもしれないが、その端的な対策が知りたい人間からすればただ人生を絶望に落とし込むだけの余計な情報でしかない。

私は医師ではない。従って医学的なアドバイスはできない。ただ私は論証をするのみである。私はただ敵を捕捉し、引き吊りだし、全ての根源たる迷信を詳らかにするのみである。

その第一歩となる重要な文献がある。ネット上で簡単に発見でき、誰でも参照できるのだが、RETRACTEDの文字がデカデカと書いてあって読み辛いったらありゃしない。しかし、きちんと精読したらなかなか面白いことが書いてある論文である。タイトルにある通りの二つ名で有名な文献なのだが、「なんやそれ」と思う方々のために軽く説明しておく。

一言でいうと、反ワクチン叩きが目的化している「標準医療の信奉者と狂信者(by A.R. Hale)」が鬼の首を取ったように取り上げる論文で、「反ワクチン連中が根拠にしているのは、1998年にMMR(麻疹/おたふく/風疹)ワクチンと自閉症との関係を報告したウェイクフィールド論文である。この論文はウェイクフィールド医師と担当弁護士との利益相反が発覚したことにより取り下げとなり、ウェイクフィールド医師はこれにより医師免許を剥奪された」との常套句で印象操作をするのがお家芸となっている。あまりにも使い回しされている定型文なので、“ウェイクフィールド論文=反ワクチンデマ”で条件付けされているスキナーラットの如き大半はなんだかんだ読んだこともないだろうと推察する。

そしてワクチン推奨派が崇拝して止まないNEJM様が、MMR-自閉症/腸炎についてどうやら"コホート"研究をしているようだが、ワクチンの話になると何故か連中はいつも追跡研究(前向き(prospective)コホート:投与してからの観察研究)で は な く回顧研究(後向き(retrospective)コホート:既投与群の過去データを解析)ばかりなのも通例である。

そんなわけで、アントワーヌ・ベシャンの言葉をパロディにするなら、「21世紀の人類の理性がクレアントゥスの時代から静止したままだと証明するには、この論文に対する反応を窺うだけで十分」なのだ。

だが致し方ない側面もある。近代科学とは、ニュートンの万有引力の発見の時から現象の記述をするものだと確立され、その現象を生み出す根源は神の領域だと切り捨て、人間の理性の不可知論を徹底する立場であるからだ。物理学が万有引力を生み出す根源には触れず、存在を前提として自然現象を説明するだけであるように、医学とは病気をただ記述するだけで病気を生み出す根源をそもそも探らない学問だ。

※「別にウェイクフィールド論文だけで騒いでねーよバ~カ」いう話だが。
ジェンナーが症例18で殺害の隠蔽をしている話とか、パスツールがトレパネ実験で少女を殺害して巧妙に言い訳している話とかネタなんて幾らでもある。そもそもジェンナーの”物 語”(※王立協会公認)は、「現代だと倫理委員会が許可しない人体実験だ」とかいうお決まりの”時代的な限界”以前に、研究室で絶対にやってはいけない「n=1の一般化」と「傾向の永続化」のコンボを決め込んだ話だと気付かない時点で99%の現代科学者は脳ミソが死んでいるとしか言いようがないが、「ワクチンで人が死ぬことは当たり前」だと麻痺したまま黒魔術の一般社会への浸透を受容し、「病気の予防は命と引き換えで得られるもの」だと信じて疑わず自身の肉体管理と生殺与奪を一度も面識のない製薬企業の人間に任せられる他者依存的な人間には一生辿り着けないのだろう。陰謀論以前にその思考回路が狂っていると幾ら言ってもわからない。

そんなはずはない?科学が間違っているはずがない?反ワクチンはデマ吐きに決まっている?頭がオカシイ連中なんだ?「査読システムのお陰で不正はできない」などという定型文は、「運送会社に配達ミスはありえない」という理想論で物事を語っているだけであり、システム一つで社会から不正が消失するならシンギュラリティはそもそも議論からして不要である。

前置きが長くなったが、では問おう。ウェイクフィールド論文のタイトルを答えられる人間がどれだけいるのだ?

それは有料部分で答え合わせをしよう。

ちなみに、「自閉症との関係を報告した」の時点で誤りである。
何故ならウェイクフィールド本人が本文中で

“We did not prove an association between measles, mumps, and rubella vaccine and the syndrome described. Virological studies are underway that may help to resolve this issue.”
我々はMMRワクチンと上述の症候との関連性を証明しなかった。進行中のウイルス学研究がこの課題の解決の助けとなるかもしれない。

と残しているからだ。本人がこう残しているにも関わらず「ちょっと考えれば素人にでもわかるトンデモ」と読みもせずに否定するTwitterユーザーの代表ともいえるような人物達から貶されているが、私からすれば「ちょっと考えればあからさまな因果関係だとわかるヒントが書いてある」ので解説も挑戦しようと思う。

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